何ともあっけない幕引きになりそうだ。
私の中東に対する認識も改めなければならないと痛感した。
年明け早々アメリカのドローンによって殺害されたイランのソレイマニ司令官の葬儀には数万人が道路を埋め尽くし、将棋倒しで56人が死亡した。
最高指導者のハメネイ師も棺を前に涙を流した。
そして3日間の喪が明けた8日早朝、予告通りイランによる報復攻撃が行われた。
イラン領内から発射された弾道ミサイル10発以上がイラクの2箇所の米軍基地に着弾したという。
作戦名は、「殉教者ソレイマニ」。
世界中に衝撃が走り、株式市場でも株価が急落した。
ところが、イランはアメリカとの戦争を避けた。
国内世論を意識して、表向きは反米姿勢を鮮明にしつつも、裏では事前に情報を流し本格的な戦争にならないよう手を打っていたという。
ミサイルの発射についてもあえて死傷者が出ないように目標を選んだのではないかという見方も強い。
こうして、トランプさんの暴挙は、またもや大きな反撃を受けないまま終わりそうな気配だ。
そのトランプ大統領は、日本時間の今朝1時半に記者会見を行い、イランに新たな経済制裁を行うものの、これ以上の武力行使には言及しなかった。
私もネットでその模様を見ていた。
トランプさんは戦争が好きではないが、もしアメリカ人の死傷者が出ていれば、大規模な報復を行わざるを得ないと見られていたからだ。
でも、トランプさんはアメリカ人の人的被害はなく、「戦争は望まない」と言った。
これでアメリカとイランの全面戦争は遠のいたとの見方が世界中に広まり、株価も一気に値を上げた。
これにて、一件落着。
アメリカは戦争をせずに、「イランのモンスター」を駆逐したことになる。
またもや、トランプさんの成果だ。
勧善懲悪が好きなアメリカ国民にはこれを歓迎する人も多いのだろう。
ディールを得意とするトランプさんは、ある意味、今回もイランとのディールに勝ったのだ。
トランプさんの非常識が中東に大混乱をもたらすだろうという私の予想は見事に外れたようだ。
エルサレムにアメリカ大使館の移転を決めた際にも、パレスチナ紛争が再燃すると危惧した私の予想は外れ、トランプさんの思惑通り、大使館の移転は粛々と進められた。
どうも、中東=「世界の火薬庫」という私の思い込みを修正する必要があるのかもしれない。
どんなにトランプさんにいじめられてもイランは必死で耐えている。
イラクの二の舞になるのはごめんだと思っているのだろうか?
私が現役記者だった1980〜90年代には、こんな事件があれば、間違いなく中東は大変な混乱に陥った。
時代は変わったのだ。
中東の人々も平和に慣れ、大義よりも生活の安寧を求める傾向が強まったのだろう。
古い常識は時代とともに変わることを、トランプさんによって教えられることになるとは・・・。
悔しいような、情けないような、でもそれが現実なのかもしれない。
いずれにせよ、大規模な戦争にならないで済めば、それは歓迎しなければならないだろう。