<吉祥寺残日録>立春に始まる北京五輪!二十四節気と漢民族のルーツを調べる #220204

今日は立春。

今日から北京オリンピックが開幕する。

開会式を前にすでに競技が始まっていて、日本期待のモーグルでは女子のエース川村あんりらが順当に予選を通過した。

ただメダルが期待される男子のエース堀島行真は第2エアのミスが響き、予選2回戦に回った。

今シーズン10試合全てで表彰台に立っている堀島は、4年前の平昌五輪でもメダルの期待がかけられながらまさかの転倒、これもその人が持つ運命なのか。

女子アイスホッケーでは、日本代表の「スマイルジャパン」は3-1でスウェーデンに勝利、白星発進となった。

日本がスウェーデンに勝つとはすごいことだと思ったのだが、実は世界ランキングでは日本の方が上。

しかも、10チームがA組とB組に分かれて戦うアイスホッケーだが、この予選の組み合わせが特別だということを初めて知った。

アメリカやカナダなど世界ランキングの上位5チームがA組、それ以外のチームがB組という変則的なグループ分けになっているらしい。

日本は現在、世界ランキング6位で、すなわちB組の中では最も強いチームということになっている。

そして決勝トーナメントは8チームで行われ、A組は全チーム、B組からは上位3チームが進出することになる。

アメリカとカナダの力が飛び抜けているので、日本としてはなんとしてもB組を1位通過してA組の3位と対戦するのが目標ということのようだ。

とはいえ、日本の女子が北欧のスウェーデンに勝利するというのは一昔前には想像できなかったことだ。

日本の若い世代が多様化していることを感じ、個人的にはとても嬉しい気持ちになった。

アメリカなどが外交的ボイコットを行なって、政治的な意味で注目される北京オリンピックだが、日本で昨年開かれた東京オリンピックに比べて、運営の方は至って粛々と進められている。

新型コロナの影響で、一般の観客へのチケット販売は行われないため中国でも盛り上がりは今一つのようだが、日本のように中止を求める運動が広がるわけでもなく、当局が決めた通りに整然と行われそうだ。

日本では聖火リレーにこだわって各地で混乱が起きたが、中国では聖火リレーはわずか3日に短縮し、さらっと実施した。

どう考えても中国の方が賢明だろう。

立春の今日、東京は朝から雲に覆われている。

「立春」というのは二十四節気の一つで、暦の上では年の初めでもある。

八十八夜や二百十日なども立春を起点として計算される。

そもそも「二十四節気」とは、中国の戦国時代に作られたものだが、当時使われていた太陰暦を補正する必要性があったためだという。

月の運行のみに基づく太陰暦では、月と日付が太陽の位置とは無関係に定まり、暦と四季の周期との間にずれが生じるので、農林水産等々の季節に左右される事象を扱うのに不便である。

閏月の挿入による調整を行う太陰太陽暦でも、閏月の前後で1か月の半分の15日程度のずれがある。そこで古代中国では、太陰暦とは無関係に季節を知る目安として、太陽の運行を元にした二十四節気が暦に徐々に導入された。

出典:ウィキペディア

2000年以上前に作られた季節の呼び名が今も使われているというのも考えてみれば不思議なものだ。

しかも、二十四節気は中国の中心である「中原」の気候を基にしているため、日本の気候とは微妙に合わないのに、である。

これを是正しようという動きもあったようだ。

このような事情から2011年、日本気象協会は現代日本の気候に合わせた新しい二十四節気を創造する事を目標とした準備委員会を設けた。一般からも意見を募り、2012年の秋頃には「21世紀の二十四節気」を発表し、周知させていきたいという意向を示していたが、「これまで培われた微妙な季節感を混乱させる」として反対の声が多く寄せられ2012年9月に計画は中止となり、現在でも二十四節気はそのまま使われている。

出典:ウィキペディア

当時は忙しかったせいか、こんな動きがあったことすら私は知らなかった。

でも、長い歴史で定着し、多くの文化人たちが使ってきた名称を変えるのは容易ではないし、むしろその「ズレ」も含めて味わう方が粋な感じがするではないか。

中国がGDPで日本を追い越し、アメリカと並ぶ超大国になっていくにつれて、私たち日本人の心の中には何かザワザワした感情が湧き上がってきている。

古代からこれだけ多くの中国文化を受け入れてきて日本という国を作ってきたにも関わらず、中国の風下に立つのは嫌だという思いが日本人の中にある。

ただ、世界史を概観すれば、19世紀から20世紀にかけての一時期を除き、中国は常に世界の超大国であった。

中国は周辺部に多くの少数民族を抱える多民族国家だ。

しかし、14億人の人口の大半を占めるのは「漢民族」であり、なんとその比率は94%だという。

漢民族の総人口は世界中で14億5千万人を超え、地球上に生きる全人口の20%は漢民族なのだ。

黄河と長江によってもたらされた中国の肥沃な大地が世界最大の民族を育んだという面は確かにあるだろうが、様々な民族が入り乱れて戦い、征服し、大帝国を築いていくという歴史の繰り返しの中で、細かな違いには目をつぶってみんな「漢民族」として受け入れていった中国人のある意味「おおらかさ」が漢民族の特徴なんではないかと私は考えている。

単一民族という神話にこだわる日本人は、どちらかといえば他者との違いに着目し、異民族を排除しようとする傾向がある。

それに対して中国人は、周辺の異民族を征服しては同化させ、どんどん自分たちの仲間を増やしていったのではないか。

現在、新疆ウイグルやチベットで行われているような同化政策が何千年も続けられる中で、漢民族という世界最大の民族が形作られていった、そんな気がするのだ。

先日、テレビで見た番組で、中国人と日本人の違いを痛感した。

「マイケル・サンデル白熱教室〜中国の友よ君はそれで幸せなの?」

アメリカと日本、中国のトップクラスの大学生をオンラインで繋ぎ、中国で進められている特殊な政策についてそれぞれの意見を聞いていき、若者たちの価値観の違いを浮き彫りにするという番組だった。

問われるのは、国家は社会や個人の生活にどこまで関与すべきかという哲学的な問題だ。

とても興味深い討論だったので、その内容はまた機会があれば書き残したいと思うが、この番組を見ながら私が一番感じたのは中国人学生の優秀さと国家に対する異様な忠誠心だった。

日本から参加した東京大学と慶應大学の学生が日本語で話しているのに対し、中国上海の復旦大学の学生たちは全員流暢な英語で議論を行っていた。

話す内容もとても具体的で論理的な印象を受けたのに対し、日本人の学生はどこか便りなく情緒的な意見が多かったように感じた。

アメリカのハーバードの学生たちは「自由」という価値に強い信念を持っているのとも違って、日本の学生はどっちつかず、深く物事を考えたことがないという印象だった。

「私たちは政府を信頼している。それがアメリカや日本との大きな違いだ」と中国の学生は言った。

彼らは中国のエリートであり、対外的に政府を支持する発言することが求められている側面はもちろんあるが、幼い頃から共産党の政策に即した教育を受けてきた若者たちにとって、中国政府を信じることは当たり前なんだろうなと思えた。

日本人から見ると、全員が同じ意見を持つ中国人学生の姿は気持ち悪く映るが、彼らは実に優秀である。

彼らのような中国社会の中で勝ち組として暮らす人たちにとって、強い中国を実現してくれている習近平政権は本当に信頼できる政府に見えるのではないか、そんなことを感じる。

中国という巨大な隣国とどのように付き合っていけばいいのか?

国内に多くの問題を抱えつつ14億の民をまとめていくためには、強大な力が必要なのだろう。

もしも共産党の時代が終わっても、また別の強大な権力が取って代わるだけだ。

中国から強い権力が失われれば、あの国は間違いなく混乱し、日本にも大きな被害をもたらすだろう。

そうした中国の宿命を理解しながら、うまく付き合っていくしか方法はない。

まあ、そんなことも考えつつ、北京オリンピックを楽しみたいと思っている。

立春

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