早朝に目が覚めてしまったので、昨日の出来事を書いておくことにする。
ちょっとバタバタした一日だった。

大学時代の仲間6人がわが家に遊びに来ることになり、私は朝から一人で受け入れの準備を始めた。
まずは昼食の用意。
納屋にある大きな作業台を玄関の土間に運ぶ。
腰が悪い奴もいるので、畳に座るよりも椅子の方が楽だと考えたからだ。
台所から椅子を運び、キャンプ用の椅子も並べて、臨時の会食場所を整えた。
家中の窓を全開にして土間に気持ちのいい風が流れるようにしたのだが、お昼が近づくにつれて気温が上がり暑くなってきた。
仕方なく窓を閉めエアコンと扇風機でなんとか迎える環境は整った。

正午前、神戸に住む友人がまず車で到着する。
ピカピカのBMW。
岡山の田舎ではなかなかお目にかからないような高級車だ。
続いて愛媛に住む友人がやってきたが、これまたBMWのSUVである。
2台を入れると駐車スペースが一杯になり、仕方なく私のハスラーは近くの公民館に停めさせてもらう。
新幹線で東京や鹿児島から岡山入りした仲間たちを最寄りの駅まで迎えに行って6人全員が顔を揃えたのは午後1時ごろだった。
彼らは口を揃えて「なかなか本格的な古民家だ」と築100年の家を誉め、珍しそうに家の中を眺める。
持ち帰り専門の「大漁寿司」で買ってきた「岡山ばら寿司」と「ママカリ寿司」、さらに朝採ったブドウをテーブルに並べると、異口同音に旨いと言いながら談笑に花が咲く。
中には40年ぶりに再会した奴もいたが、昔の仲間というのは不思議なもので、一瞬で会わなかった時間を飛び越えてまだ何も持っていなかった学生時代にタイムスリップしてしまう。
どんなに会社で偉くなろうが、金持ちになろうが関係ない。
仕事上の上下関係が一切ない純粋な友人関係である。

そもそもは私の農園を見たいという話から岡山に集まることになり、農作業を体験してもらうはずだった。
しかし気がつけばもう3時を回っていて、相変わらず暑い。
こんな暑さの中で慣れない畑仕事をさせては倒れる奴が出ても不思議ないと思い、私の畑をひと回り案内した後、残っているブドウをいくつか摘んで農業体験はおしまいとなった。
採ったブドウは一部宅急便で送り、残りはフードバンクに持って行くことになった。

せっかく岡山に来たのだから日本三名園「後楽園」にも行ってみたいと言う奴もいて、2台のBMWに分乗して、後楽園組とフードバンク組に分かれてバタバタと我が家を後にする。
私は宅急便でブドウを送る友人たちと一緒にヤマト運輸の営業所と公共冷蔵庫「コミュニティフリッジ」を回ってから、宿泊する予定の「ホテルグランヴィア岡山」にチェックインした。
夜、岡山市内で宴会をするために私もみんなと一緒にホテルに宿泊することにしたのだ。
「ホテルグランヴィア」は岡山を代表する駅前のホテルだが、全体にちょっと古い一世代前のシティーホテルといった印象である。

まだ宴会までは時間があったので、ゆっくりお風呂に入ってからテレビをつけると、ちょうどアジア大会の中継をやっていた。
卓球女子ダブルス準々決勝。
若い張本美和・木原美悠組が中国の最強ペア孫穎莎/王曼昱組に挑む。
相手は世界ランキング1位と3位、とてもかなう相手ではないと思いながら見ていると、若い日本選手は堂々と互角の試合を展開している。
そしてなんと第一ゲームを取ってしまったのだ。
続く第二ゲームは中国に圧倒され、ここまでかと思ったら第三第四ゲームを連取、世界最強のペアに勝利する大番狂せを演じたのだ。
アジア大会とはいえ、卓球の場合はまさに世界一を決める大会である。
しかも完全アウェイの杭州での歴史的勝利には興奮せざるをえない。

やはり部屋で卓球を見ていた友人と興奮を分かち合いながら私が予約したお店に向かう。
「酒囲屋本店」
予約ができない店として有名な岡山を代表する居酒屋である。
午後7時からの予約だったので、もうすっかり日も暮れて夜風が心地よい。

それほど大きな店ではなく、カウンター席の他に小上がりのテーブル席がいくつかある程度だ。
当然ながら満席。
カウンター席はカップルばかりである。

この店のメニューには値段が一切書かれていない。
オススメは「本日のおまかせ料理 五品」。
最初からこれを頼むつもりでこの店を予約したものの、値段の書かれていないメニューでは怖くて他の料理は頼みにくい。
ドリンクメニューにも値段の表示がないので、こちらも2000円の飲み放題を付けてもらうことにした。

料理の方はさすが人気店、普通あまりお目にかからないような品々が並ぶ。
お造りの後に運ばれて来たのは「タビエビ」。
見たことのない珍しいエビで、一般には「ウチワエビ」の名前で西日本中心に流通しているらしい。
味は小型の伊勢エビと思えば間違いない。

このほかに、ふっくらと焼き上げられた鰻や宮崎牛のステーキが出て、高級食材のオンパレードである。
鰻も牛肉の脂でコッテリとしたところで、最後5品目として運ばれてきたのは松茸だった。

あっさりとしたスープの中に立派な松茸がゴロゴロ入っているではないか。
もちろん今年の初松茸である。
そしてこのスープ、実に淡白なのだが味が深い。
この松茸スープをいただいただけでも、この店に来たことを後悔しないだろう。
食べログ評価3.78、私の評価は3.50。

ドリンクの飲み放題も、岡山の地酒がたくさん揃っていて、値段は1人1万2000円とそれなりだったものの、みんな上機嫌で店を後にした。
突然仲間の一人が「パフェ食べたい」と言い出して、ネットで見つけた喫茶店に行ってみたが女の子たちで満席だった。
土曜の夜だからか、街には人が溢れていた。
若者の姿が多く、昨今地方都市の衰退が囁かれる中、岡山の夜がこんなに賑やかだったことが何よりみんなの興味をそそったようである。
このままホテルに戻るのがもったいなくて、夜風にあたれる屋外にテーブルを出していた店でもう少し飲んでホテルに戻った。
「酒囲屋本店」 電話:086-226-0737 営業時間:17:00~24:00 定休日:日曜 https://www.sakaiyahonten.com/