大谷翔平は来年もエンゼルスでプレイすることが決まった。
1年契約で年俸は3000万ドル、日本円でおよそ43億5000万円となり、日本人メジャーリーク選手の最高額を更新した。
今年の年俸は550万ドルだったので、一気に5倍以上にジャンプアップした。
昨年はMVP、今年もヤンキーズのジャッジと熾烈なMVP争いを繰り広げ、メジャー屈指のスーパースターになったのだから、当然と言えば当然の評価ではあるが、エンゼルスが早々に優勝争いから脱落したことに失望感を露わにしていた大谷だけに残留の決断は少し意外にも感じる。

この大谷の年俸アップに比べれば、大したことはないもののアメリカをはじめ世界中で物価が高騰している。
コロナ禍が終わったタイミングでロシアのウクライナ侵攻や歴史的な円安も重なり、エネルギーや食糧などあらゆるもの値上がりしているのだが、長年デフレに苦しんできた日本も例外ではない。
今年に入って毎月のように商品の値上げのニュースがメディアを賑わせたが、10月は今年最高の食品だけで6600品目が値上げとなった。

値上げは食料品にとどまらず、あらゆる分野に及んでいる。
家電、おもちゃ、交通費、さらにはTOEICなどのテストも値上げになるという。
原油価格の値上がりにより、輸送コストや包装資材が高騰しているため、幅広いインフレにつながっているようだ。
さらに、これまで続いたデフレの時代には値上げしたくてもできなかった企業が横に倣えで一斉に値上げに踏み切っているという側面もあるに違いない。

こうした値上げのニュースに煽られるように、量販店でお酒などを大量に買いだめする人の姿もまたニュースで取り上げられ、9月末には結構な駆け込み需要があったようだ。
でも、私が年をとったせいか、こうして生活防衛と称してせっせと買いだめする消費者の姿を見ながら、「ちょっと違うんじゃない」と思ってしまう自分がいる。
安いうちに大量に買おうとすればするほど、流通段階での値下げが減る。
逆に値上げ後に需要が落ち込んだら、売れなくなるので流通の人たちは自助努力で値下げの工夫をするわけで、実際のところ消費者が購入する金額はメーカーの出荷額ほどには変わらないのだと思っている。
むしろ、大量に買い込んだ食材が食べきれずに廃棄されるんじゃないかと、そちらの方が心配になってしまう。
従来の消費パターンを頑なに維持するのではなく、値上げのタイミングで自らの生活を見直すのが賢い消費者だと私は思う。
大量に酒を買い込むのではなく、晩酌の回数を減らして少しヘルシーな食生活を導入してみるとか、電気の使い方を工夫してみるとか、マンネリ化した生活の中で生まれている無駄をこの際洗い出して削ぎ落とすことが重要なのだろう。

我が家の場合、最も家計に占める負担が大きいのは旅行代金かもしれない。
今年は毎月東京と岡山を往復しているので、岸田政権がようやく始めると発表した「全国旅行支援」なるものを使ってみようと思っていたのだが、10月に入っても具体的な手順が一向に明らかにならない。
菅政権が力を入れた「GO TO キャンペーン」はとても使いやすかったが、コロナを助長したとして批判を浴びたため、岸田さんは名称を「全国旅行支援」というダサい名前に変え、実施の母体も都道府県に丸投げした。
そのため、自治体ごとに対応がバラバラで、私がよく利用する楽天トラベルのサイトを見ても、どうすれば割引が受けられるのか具体的な仕組みがさっぱりわからないのだ。
本当に岸田政権というのは絶望的に実務能力が低い。
仕方なく、政府の支援を待つのではなく、別の方法を模索することにした。
普通に全日空のサイトで予約すると、羽田〜岡山間の運賃は半月前の予約だと片道1万5000円から1万7000円ぐらいかかる。
新幹線とほぼ同じ水準で、コロナ禍の時期に比べてだいぶ高くなった。
ところが、往復の航空券に宿泊をセットにして予約するとツアー扱いとなって、航空券だけを購入するよりも安く行けるのだ。
私は10月半ばに1週間ほど岡山に行く予約を入れたが、その際、岡山市内のビジネスホテルに1泊だけ泊まることにした。
すると往復の航空券と宿泊代を合わせて2万300円で購入することができた。
全日空で普通に往復の航空券を予約するよりも1万5000円も安いのだ。

すっかりデフレが染み付いている日本社会では、少し工夫するだけで同じサービスを安く利用する方法が見つかる。
仕事や子育てに忙しい現役世代には申し訳ないが、時間にゆとりのあるシニア世代はなるべく料金の安い日を選べば比較的安く旅行することは可能なのだ。
歴史的な円安と原油高にも負けず、来年から海外旅行も再開しようと考えているが、調べてみると確かに直行便の値段は世界的に高騰していた。
それでも、時間を味方につけて経由便を利用することを検討すると、そこそこの値段で買える航空券を見つけることも可能だ。
地域ごとに料金もまちまちなので、自分の予算内に収まるエリアの中から行き先を決めればいい。
私の場合、来年初めに中東に行きたいと思っているが、フランクフルト経由のルフトハンザを利用するとクウェートまで12万円ぐらいで行ける航空券があるようだ。
ドバイならシンガポール経由、サウジアラビアのリヤドならばマニラ経由がリーズナブルである。
せっかくなので、経由地でも街に出て1泊ホテルで泊まっていくつもりだ。
そうすれば体も楽だし、同じ料金で目的地以外の国も味うことができるだろう。

日本人は値上げが悪のような強迫観念を持っているが、物の値段が上がらないと働く人の賃金も上がらない。
物の値段が安定しているデフレ社会は年寄りにとっては案外居心地がいいものだが、それでは若者たちに安定した未来をあげられないのだ。
無能な岸田政権は値上げ対策としてまたばら撒き的な一時凌ぎの政策に予算を使おうとしているが、そんなことは必要ない。
もっと将来につながるような分野に予算を使って欲しいものだ。
インフレは、私たちに工夫を求める。
頭を使い、マンネリを排して、生活を無理なくダウンサイジングする。
要するに、必要ないものを買わないに限る。
だから不必要にお店をうろうろしない。
何かを買う時には、中国で安価に製造した商品ではなく、少し高くても日本国内でお金が回るような商品を選びたいと思っている。
そうすることで、地産地消で地球環境にも配慮した21世紀型のライフスタイルが定着していけばいいなと密かに願っているのだ。