大相撲でご贔屓の高安がまたもや優勝を逸した1時間後、中東カタールでは日本のワールドカップ第2戦コスタリカとの試合が始まった。
初戦で強豪ドイツに逆転勝ちして勢いに乗る日本に対し、コスタリカはスペインに対し0−7の大敗を喫し、日本中に楽観的なムードが漂っていた。

森保監督は、先発5人を入れ替えて臨んだ。
初戦で足を痛めたディフェンスの酒井や冨安の姿はやはりなかった。
攻撃陣では初戦で先制点を挙げた堂安が先発に入り、フォワードには上田綺世、左サイドに相馬勇紀を起用した。
中3日の強行軍となる今大会は固定メンバーで戦うには厳しく、上手な選手起用は監督の腕の見せ所だ。

しかし、どうも攻撃が噛み合わない。
ゴール前にパスが出ても飛び込む選手がおらず、そもそもパスミスが多くてリズムが出ない。
相手のコスタリカも攻撃に迫力がなく、お互い決定的なチャンスがほどんどないまま、ダラダラとした前半が終わった。

ドイツ戦で冴え渡った森保監督の采配に期待がかかる。
後半から投入されたのは初戦で見事な決勝点を叩き込んだ浅野拓磨とディフェンスの伊藤洋輝。
ドイツ戦で成功した3バックにシステムを変え、両サードを高い位置に上げた。
後半立ち上がりは全体にスピードアップし、動きが良くなったように見えたが、ドイツ戦と違ってそのいい流れは長くは続かなかった。

後半17分、ドリブラーの三笘薫を左サイドに入れ、何度か決定的なチャンスを演出したが、ラストパスに合わせるゴールは生まれず、コスタリカの守備にことごとく阻まれた。
三笘以外の選手は動きが単調で、最後の最後まで日本チームにリズムは生まれない。

試合を通して日本がボールを支配しながらもたつく日本。
正直言って、今大会で最も見どころのない凡戦だったと思う。
森保ジャパンの司令塔、鎌田大地が期待されたほどの活躍を見せていないのも、今大会の不安要因である。

このままドローで終わってしまうかと思った後半36分、コスタリカのフレールが放ったループシュートがキーパー権田の指先をかすめてゴール隅に決まってしまう。
コスタリカが放った後半唯一のシュートが不運にも日本ゴールを揺らしたのだ。
勝負事というものは往々にしてこういう結果が待っている。
チャンスを逃し続いていると、ツキは相手に味方する。
サッカーに限らず野球などでもよく使われる「流れ」という奴だ。

こうなってしまうと、コスタリカは全員でゴールを守り、日本の攻撃力ではその守備陣形を崩すことはできなかった。
試合前、ほとんどの日本人が予想しなかった0−1での敗戦。
試合終了のホイッスルを聞いた選手たちはがっくりと崩れ落ちた。
この試合で1次リーグ突破を決められるかどうかが焦点となっていたが、一気に予選通過に黄色信号が灯った瞬間だった。

日本の敗戦後に行われた同組のスペインードイツは1−1の引き分けとなった。
試合開始直後からスペインがたびたびドイツのゴールに迫り、それをドイツの堅守が阻む展開が続いた。
後半、スペインが先制点を奪ったが、試合終了直前ドイツは執念で同点に追いつき、予選突破に望みを繋いだ。

これにより、2試合を終わって、日本はグループEの2位を保ったものの、最終戦のスペインに負けることが許されなくなってしまった。
スペインに勝てば予選を1位通過となるが、負ければ予選敗退が決まる。
もしも引き分けになれば、ドイツーコスタリカの結果次第となる。
スペイン戦は日本時間の深夜4時に試合開始となるが、放送権を持つフジテレビはきっとほくそ笑んでいるに違いない。
頑張ってライブで観るか、それとも録画して朝起きてすぐに観るか?
ちょっと悩みどころだが、きっと眠い目を擦りながら見るんだろうと思う。

しかし、今大会は強豪チームが苦戦している。
初戦でサウジアラビアに敗れ、世紀の番狂わせと言われたアルゼンチンは、第2戦のメキシコとの試合に競り勝ち、なんとか予選突破に望みを繋いだ。

昨日は、世界ランキング2位のベルギーがモロッコに敗れる波乱が起きた。
6つのグループ24チームが2試合目を終えた段階で、1次リーグ突破を決めたのは前回優勝のフランスだけである。
逆にこの段階で予選敗退が決まったのも、開催国のカタールとカナダの2カ国だけというかつてない大混戦だ。
これはヨーロッパと南米が突出して強いというサッカーの常識が変わりつつことを示しているのかもしれない。
日本選手の多くがヨーロッパリーグで活躍しているように、サッカーの世界では急速に国際化が進んでいる。
世界のトップリーグで揉まれる選手が増えていけば自ずとアジアやアフリカのチームのレベルも上がっていくのだ。

不本意な試合で、大きなチャンスを逃した日本だが、まだ終わったわけではない。
勝利の可能性は低いとはいえ、再び挑戦者としてスペインに挑むだけだ。
世界の実力差が縮まっていることを信じて、日本代表の奮起を期待したい。