日本がラグビーに沸いている間に、世界ではとんでもない記録が生まれていた。
人類が初めて、マラソン2時間の壁を破ったというのだ。
フルマラソン、1時間59分40秒。
この大記録を打ち立てたのは、リオ五輪の金メダリストで現在の世界記録保持者、ケニヤのエリウド・キプチョゲだ。
ただし、このタイムは非公認記録である。
なぜなら、この記録が生まれたのは通常のレースではなく、ウィーンで行われた「イネオス1:59チャレンジ」という人類初の2時間切りを目指したスペシャルレースだった。
選手は、キプチョゲ選手ただ一人。彼を40人余りの一流選手が交代でペースメーカーとなってサポートした。
さらに、前を走る自動車が2時間切りのペースを正確に測りながら走り、その車から路上にレーザー光線で目標となるラインが投影された。選手はそのラインを目印にして走れば自動的に2時間切りが達成できる仕組みだ。
コースやコンディションも最も記録が出やすい条件が整えられ、通常のレースのような上げ下げもない。すべては人類がフルマラソン2時間切りを達成することだけのために万全に準備されたのだ。
そしてキプチョゲは、見事に目標を達成した。
マラソン王国ケニヤのポテンシャルと、最新のスポーツ科学の融合が実現した夢の瞬間だった。
ちなみに、キプチョゲ選手は2017年にナイキがスポンサーとなって同じく2時間ギリに挑戦したことがある。その時のタイムは2時間0分25秒。そして今回はイギリスの化学企業イネオスがスポンサーとなり、スペシャルレースが行われた。
日本では先日、MGCが行われて東京オリンピックの代表が決まったが、世界との開きは大きい。
マラソン日本の復活は、ますます遠くなった気がする。
でも、やはりマラソンは記録ではない。
マラソンは、人間ドラマであり、駆け引きこそが感動を呼ぶ。