<吉祥寺残日録>頑張れテレビ! Nキャスの特集「欲張らない経営術」で眼から鱗 #201220

コロナ禍の年末年始、果たしてどれだけの店が潰れるのだろうと心配していた時、テレビでとても面白い特集を見た。

昨夜放送されたTBSテレビ「情報7Days ニュースキャスター」の特集。

タイトルは「コロナ時代を生き抜く“欲張らない”経営術とは?」、それほど興味をそそられないまま見始めた。

最初に紹介されたのはベビー用品の「西松屋」、道路沿いでよく見かけるお店だが私自身は入ったこともなかった。

そのキーワードが「欲張らない経営」、一体どういうことか?

インタビューに答える大村浩一社長はこんなことを言った。

『繁盛しない店作りというのをやっております。とにかくガラガラのお店作りをしておりまして、“ガラガラ戦略”という風に呼んでおります』

ショッピングモールなどには出店せず、交通量の少ない住宅街などに店を出しているという。

その理由は・・・

『繁盛していない方がお客様にとっては商品が見やすく、レジに並ぶ時間も短くなりますので、買い物が苦痛でなく逆に楽しい買い物ができると考えております』

ガラガラでも利益ができように、少人数で店が運営できるようマネキンや平積みにした商品は一切置いていない。

店員さんは本部から送られてくるハンガーにかかった状態の商品をただポールにかけるだけでいいという。

要するに家賃や人件費といった固定費を減らせばガラガラでも利益が出るということらしく、実際に西松屋は今年、コロナ禍でも利益を伸ばしているそうだ。

続いて紹介されたのは、京都市のレストラン「佰食屋」。

こちらの店はその名の通り、1日100食限定でそれが完売した時点で店を閉めるユニークなシステムを導入している。

それでも、コロナ禍で黒字経営を続けているというのだ。

提供するメニューも、「ステーキ丼」(1000円)、「ステーキ定食」(1100円)、「ハンバーグ定食」(1000円)の3種類のみ。

取材した日も3時間半で100食が完売したが、これで店は終了だ。

佰食屋を経営する中村朱美さんはその理由をこう話す。

『儲かったら儲かるだけいっぱいお金が欲しいという考えではなく、自分たちが豊かに暮らせる年収っていくらなんだろうというのを先に決めてしまってそれを稼げるためにできるだけ短い時間で働こう、これが実はコンセプトなんです』

つまり、一番効率よく利益を出せるラインを計算したところそれが100食だったのだ。

従業員は夜家族と食事もでき、仕入れた肉をその日に使い切るので一切食品ロスがでず、冷凍庫も必要ないという。

最後に紹介されたのは大阪にある「パプアニューギニア海産」という会社。

輸入天然エビの加工会社なのだが、従業員は自分の好きな日の好きな時間にくればいいという「フリースケジュール」を採用している。

19人いるパート社員は出社自由で、その日何人が会社に来るかもわからないという。

仕事はエビの皮をむいたり、フライ用にパン粉をつけたりという単純作業だが、その日来た人数分だけエビを解凍して作業量を調整するらしい。

どうしてこんなやり方をしているのか、工場長の武藤北斗さんは・・・

『利益ばっかり見てると、一番大事な人を見なくなってくるので・・・』と言う。

実は9年前まで、宮城県に工場があった頃は今とは真逆で、工場内に監視カメラを設置して従業員を徹底的に管理していた。

ところが、東日本大震災によって考えが変わったという。

『東日本大震災で工場も全部流されてしまったので、働き方、会社はどうあるべきか考え始めて、一人一人が自分の生活を大事にしてその上で会社で苦しまずに働ける、それができる職場を目指していくことが経営にとってはすごく大切だと思っています』

その結果、従業員の定着率が高まり作業効率も上がって、人件費や求人費用が削減できた。

そしてコロナ禍でも大幅に売り上げを伸ばしているというのだ。

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実に面白い。

我々が持っていた常識が根底からひっくり返されたような心地よい衝撃を受けた。

世の中には面白い話がいっぱい転がっている。

それを見つけ出して磨き上げるのがテレビマンの腕の見せ所だ。

他局と同じネタを同じように編集し、同じようなゲストのインタビューとともに流していたのでは、あんなにたくさんのテレビ局はいらない。

なるべくユニークで、見た人たちにいろんな示唆を与えるようなネタを多方面で拾って見せてもらいたいと思う。

見て得をしたと思える本当に面白い特集だった。

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