東京都による休業要請が出されて初めての週末。
井の頭公園の桜もほとんど散って、もうすっかり新緑の季節だ。
暖かな日差しを浴びながら、長い間本棚に眠っていた農業関係の本を読んだりしながら自宅でのんびり過ごす。
コロナのせいで旅行にも行けないが、この危機を乗り切った後、私はどんな生活を送りたいのか?
そんなことを、ぼんやりと考えていた。
もし日本経済が本格的な不況に陥り、私の会社で若い派遣社員が雇用を失うような事態になった時には、会社を辞めて少しでも次世代の雇用を守りたいと思っている。
そのためにも、私も次の人生を踏み出せるよう準備を始めなければならない。
いつものようにニュースをチェックして、私がずっと抱いていた疑問に答えてくれる記事を見つけた。
誰が日本のPCR検査を阻んでいるのか?
日本経済新聞の「安倍1強にも医系の「聖域」 検査・薬で厚労省と溝」という記事は、一つのヒントを与えてくれる。
その一部を、引用させていただく。
4月上旬の首相官邸。「PCR検査はなぜ増えないんだ」。安倍晋三首相は加藤勝信厚生労働相や西村康稔経済財政・再生相らとの協議で不満を示した。同席した厚労省の医系技官から明確な返答はなかった。
「厚労省の医系技官」、これがキーワードのようだ。
厚労省は37.5度以上の熱が4日以上続くなどに絞って検査をしてきた。各国の検査数が増える中で異質の対応だった。
理論的支柱となってきたのは医師免許を持つ医系技官らだった。科学的な根拠や専門知識で政策を立案する。国民の生命や健康に関わる技官らは政治から一定の独立性を保つ。人事への政治の介入も限定的だ。2017年に次官級ポストで新設された医務技監には3年近く鈴木康裕氏がいる。
今回の危機対応ではその独立性が動きを鈍くした。重度に応じ区別するしくみを早急に作り検査の数を増やす方向にいかず、軽症者の入院が増え続ければ重症患者に手が回らなくなる「医療崩壊」への懸念という以前からの姿勢が先に立った。
技官たちは、アビガンの承認やオンライン診療についても消極的だったとこの記事は指摘している。
ひょっとすると、安倍政権が対応の遅れを厚労省技官のせいにするために書かせた記事のようにも感じるが、政治家に忖度しない専門職が今でも霞ヶ関に存在するというのも事実かもしれない。
過去には様々な薬害が起きていて、そうしたことを二度と起こさないことを使命としている技官グループが存在するのなら、それはそれで重要なことでもある。
ただ、医療崩壊を防ぐためにPCR検査を少なくするという判断は納得できない。
「陽性患者は全て入院」というルールを変更すれば医療崩壊を防ぎながら検査数を増やすことは可能なはずだ。実際海外ではそのスタイルが標準となっているのだ。
それに関連して共同通信では、PCR検査に関連してこんな記事が配信されていた。
「保健所長「病院あふれるのが嫌」 さいたま市の検査数少ない理由」
すごいタイトルだが、その中身を見てみると・・・
新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査が、さいたま市では2カ月で171件にとどまったことについて、市の西田道弘保健所長は10日、記者団の取材に「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにした。
さいたま市は2月に検査を開始し、今月9日までに171件。同市より人口、感染者ともに少ない千葉市は同日時点で4倍以上の700件を超えた。
西田氏は、軽症や無症状の患者で病床が埋まるのを懸念したと説明。「検査を広げるだけでは、必要がないのに入院せざるを得ない人を増やすことになる」と述べ、滞在先施設の確保が必要だと強調した。
やはり検査で陽性が出ると全員入院しなければいけないルールが検査を阻んでいたようだ。問題は現場の保健所ではなく、このルールを変えようとしなかった厚労省や政府にあるのだ。
最近では保健所職員やPCR検査を行う技師の負担が荷重になっているという報道が目立つようになった。
現場が大変だから我慢しろとメディアを誘導しているように見えるが、これまた悪意のある情報操作だ。
保健所職員の負担が荷重になっているのは、「帰国者・接触者相談センター」という弊害しかない仕事を保健所の職員にやらせているからである。検査技師の負担が荷重になっているのは、医師が直接知り合いの民間検査機関を使うルートを使えないように封じているからだ。さらに言えば、大量の検査能力があるロシュの検査システムを使うことを良しとせず、いまだに感染研が決めた検査方法にこだわっていることにも問題がある。
要するに、検査数を増やしたくないという明確な意思が、日本で検査数が増えない理由となっている。
それを阻んでいるのは、厚労省の医系技官なのか、それとも安倍政権の中枢なのか、私にはまだ判断できない。
緊急事態宣言を出すにあたり、安倍総理は一日2万件まで検査能力を増やすと発言した。ドライブスルー検査についても検討したいとこれまでの姿勢を変えようとしている。
このところ、大都市圏だけでなく、全国まんべんなく感染者が見つかるようになった。地方でも検査数が少し増えてきたのだろう。
いまだに感染者ゼロなのは、岩手県だけ。
疑わしい人が全員検査を受けるようになった時、初めて日本の感染実態が明らかになる。
卓見と思いました。ありがとうございます。