<吉祥寺残日録>【東京五輪開幕】コロナ禍で行われた開会式は異例づくめ #210724

オリンピックというのはまともに見出すと時間がいくらあってもキリがない。

今日はテレビを見たり、マンションの理事会に出席したりしているうちに、こんな時間になってしまった。

昨夜行われた東京オリンピック開会式について思いつくままに書いておかねばならない。

オリンピック開幕の日、東京上空にはたくさんの積乱雲が浮かんでいた。

昼ニュースを見ていると、0時40分ごろ航空自衛隊のブルーインパルスが東京上空を飛び、オリンピックの象徴である五輪を空に描くと伝えている。

私は前日に行われたサッカー男子のブラジルvsドイツ戦の録画を見ながら、外の様子を気にし始めた。

ちょうど午後0時40分、北東方向から一本の筋が都心方面に伸びていくのを見た。

「ブルーインパルスが飛んでる」

私は妻を呼んだ。

スモークの筋は都心上空を南から北へと進み、突然消えた。

飛行機からは5色のスモークが出たり止まったり・・・。

スモークが止まると、もうどこにいるのかわからない。

0時44分、今度は東から西に向かうブルーインパルスの編隊がはっきりと見えた。

この角度なら5色のスモークがはっきりと確認できる。

レンズをズームさせて再び撮ると、今度はブルーインパルスの機影も映った。

編隊は5機ではなく6機である。

そのままブルーインパルスは西に進み、吉祥寺の上空を飛んだのだ。

事前に飛行ルートが発表されていたこともあり、マンションの屋上で待ち受ける人たちもいた。

マンションの屋上にこんな多くの人影を見かけるのは、初日の出の時ぐらいである。

吉祥寺の上空を通過する時にはスモークを出しておらず、6機が矢尻のような隊形を組んで飛んでいた。

発表された飛行ルートは杉並あたりでUターンして都心に戻るようになっていたが、編隊はそのまま西進し私の視界から消えた。

再び戻ってきたブルーインパルスは、都庁の上空あたりで五輪マークを描いたのだが、その様子は吉祥寺からではよく見えない。

生中継しているかもと思ってテレビをつけると、TBSの「ひるおび」が上空のヘリからの映像を流していた。

しかし、雲が邪魔になって残念ながら美しい五輪とはいかず、映像を見ていたスタジオからも戸惑ったような声が漏れる。

57年前、雲ひとつない青空に描かれた白い五輪マークはまさに伝説となったが、2021年のオリンピックは、やはり何をやってもうまくいかない。

それでも、国立競技場や都庁周辺、さらには新宿御苑などにはブルーインパルスを目当てに多くの人が集まったという。

オリンピック気分を少しでも味わいたいという私のような人もたくさんいるということだ。

しかし、積乱雲の空にぼんやりと浮かび上がった五輪マークは、ネット上にアップされたたくさんの写真を見てもあまり美しくはない。

これもまた、「TOKYO2020」を象徴していると言えなくもないだろうが、記念として、一番力を入れて撮影したTBSのYouTube動画をリンクしておきたい。

100年に一度の世界的なパンデミックの下で行われる今回の東京オリンピック。

何もかも異例づくめの大会ではあるが、前回のリオデジャネイロ大会が開かれた2016年、私のブログにはこんなことが書いてあった。

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リオ五輪は問題ばかり指摘される。開幕前からいろいろな騒ぎが起きた。

現地ブラジルでは、経済の悪化とともに政権批判が強まり、あろうことかルセフ大統領が政府会計の粉飾に関わったとして弾劾裁判にかけられる事が決まり、職務停止に追い込まれた。晴れ舞台となる開会式にも出席できない。

さらに治安問題やジカ熱の流行が伝えられ、ゴルフのトップ選手たちが参加を辞退した。松山も出場せず、片山と池田が日本代表になった。

ロシアが国家ぐるみでドーピングを行っていたとして陸上連盟はロシア人選手の出場を認めない決定を下した。IOCがすべてのロシア選手の参加を禁止するか注目されたが、結果は各競技団体に丸投げし、陸上以外のかなりのロシア選手たちが参加できる事になった。

そして日本では、2020年の開催都市である東京都の舛添知事が、金の使い方を批判され辞任に追い込まれた。「せこい」という日本語が世界のニュースで発信された。

そして自民公明公認の増田寛也氏、野党4党公認の鳥越俊太郎氏を抑え、新しい都知事に選ばれたのは小池百合子氏だった。

吉祥寺@ブログ「リオ五輪開幕」より

これだけの大きなイベントだ。

必ず問題は起きる。

その困難を乗り越えて、4年に一度のオリンピックは続けられてきた。

「オリンピックなんか」と言って軽視するのは簡単だが、オリンピックに代わるような世界共通の「共同幻想」は他に存在しないし、簡単に作り出せるものではない。

だから、大切にしたいのだ。

昨日の夕方、国立競技場周辺の道路は封鎖され、選手村から国立競技場へと向かうバスが交通が途絶えた都心を走る。

沿道には少しでもオリンピック気分を味わおうという人たちが集まり、予想外の混雑となったようだ。

午後8時から国立競技場で始まった開会式。

それはこれまで見てきた高揚感あふれるものとはずいぶん違っていたが、オリンピックの開会式とは何かを考える意味で一石を投じたとも言える。

オープニングのVTRが明け、一人の人物が立っていた。

看護師であり、ボクサーとしてオリンピック出場を目指していた津端ありささん、世界最終予選を目指してトレーニングを続けていたが、コロナの拡大で予選が中止となりオリンピックの夢が絶たれた。

彼女は、コロナに翻弄された世界中のアスリートの象徴なのだ。

7万人収容の国立競技場にこの日入場したのは、五輪関係者数百人だけ。

それだけでも異様なのに、国旗掲揚のセレモニーは「厳粛」を通り越して、まるで「葬儀」のようだ。

富士山をモチーフとしたオブジェと小さなステージだけのシンプルなセット。

これまで見たことのない「寂しい」開会式は粛々と進んでいく。

世界的なコロナ禍を意識し、肥大化したオリンピックの見直しを提起する意味で開会式を簡素にすることは一つの見識だ。

ただ、今回用意された出し物の中には、日本的な「削ぎ落とした美」ではなく、予算をケチっただけの貧相な演出に見えたものもあった。

特に「木」を意識したこのパフォーマンスは、なんの驚きもなく、スペースに比して出演者がスカスカした印象を受けた。

公的資金が投入されたビッグプロジェクトの場合、建物などのハードに大半のお金を使ってしまい、ソフトにお金が回ってこない傾向が強い。

今回も様々な無駄遣いや方針転換で予算をオーバーしてしまい、開会式の予算が大幅にカットされたこともあった。

当初予定されていた中心メンバーが途中でガラリと入れ替えられたのも影響しているのだろう。

一貫してオリンピックを仕切っていたのは、電通だけだ。

そんな地味な開会式で、少し目を引いたのが1824台のドローンを使った壮大なパフォーマンスだった。

国立競技場の上空に突然現れた球体の物質。

これが動いて東京オリンピックのエンブレムを立体的に描いた。

ドローンはまた移動して、地球へと変形する。

解説を聞かなければ、どうやって宙に映像を映し出しているのかと驚きをもって受け止められた。

ネット上では「さすが日本の技術力」と、その演出を誇るようなコメントが噴出した。

しかし、これが日本の技術力かというと大いに疑問があるように感じる。

世界のドローン市場を牛耳っているのは中国であり、たくさんのドローンを使ったこのような演出はもう何年も前からアメリカのインテルが世界中で展開し、日本のハウステンボスなどでも実施されたことを私は知っていたからだ。

とはいえ、昨夜の開会式の中では、とても印象に残った演出だった。

もう一つ、国際的にも評判が良かったのはピクトグラムをテーマにしたライブパフォーマンス。

短時間の間に全種目のピクトグラムを演じた着ぐるみのパフォーマーは誰かが話題となった。

その正体は、日本人パントマイムアーティストの「が〜まるちょば・HIRO-PON」とその弟分にあたる「GABEZ(MASA/hitoshi)」という2人組だそうだ。

壮大だった北京オリンピックなどの開会式と比べるといかにもチープなパフォーマンスだが、これはある意味、お金のかからないオリンピックを考える上で一つのヒントとなるかもしれない。

しかし、そんな日本が用意した開会式の演出の寂しさを癒してくれたのは、世界205の国と地域から東京に集まったアスリートたちの入場行進だった。

使われた音楽は、日本が誇るゲーム音楽の数々。

「ドラゴンクエスト」「ライナルファンタジー」「モンスターハンター」・・・。

ゲームをやらない私にはあまりピンとこないが、確かに世界で最も多くのファンを獲得した日本の音楽かもしれない。

コロナ禍のオリンピックということで、各国選手団はトラックを回るのではなく、直線に行進してそのまま会場から離れるというこれまた前代未聞の入場行進となった。

リスクを避けて開会式に参加しない選手も多かったが、それでも各国選手団の衣装やその振る舞いにお国柄が出る。

イタリア代表の衣装はまるでタヌキのような動物を想像させ、コロナ対策としてのマスクが何やらコスプレのようにも見える。

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カザフスタンの旗手を務めた三段跳びのオルガ・リパコワ選手も話題となった。

ファンナルファンタジーの楽曲に合わせて登場した彼女の衣装はまるでお姫様。

その美貌も合わせて、ゲームファンの間からは「本物のお姫様が登場した」と熱狂的に迎えられた。

引き締まったアスリートたちの中には、美男美女も目立つ。

「多様性」をテーマとした今回の大会では、五輪史上初めて男女2人が旗手を務めるスタイルを導入した。

サウジアラビアではつい最近まで女性アスリートの参加さえ認めていなかったので大きな変化だという説明がテレビで聞かれた。

そして毎回注目されるのがオリンピックの象徴である聖火だ。

まず登場したのは、五輪3連覇を成し遂げた柔道男子の野村とレスリング女子の吉田。

彼らが聖火を引き継いだのは、なんと野球界のレジェンド長嶋さんと王さんだった。

体の不自由な長嶋さんの介助者として松井秀喜さんが一緒に走る。

その野球界のレジェンドたちから医療従事者へ、そして夏と冬のパラリンピックで多くのメダルを獲得した土田和歌子さん、さらに東北の被災地から来た子どもたちへと聖火が渡り、最終走者に選ばれたのはこの人だった。

今大会にも出場するテニスの大坂なおみ選手。

富士山型のオブジェが変形して登場した階段を上り、富士山のてっぺんに現れた聖火台に聖火を点灯する。

その演出自体は近来稀に見るシンプルで何の驚きもないものだったが、日本がハーフの大坂なおみを最終ランナーに選んだことは「なるほど」と思わせるものがあった。

私個人はフィギュア2連覇の羽生結弦ではないかと思っていたのだが、東北の被災地を代表する羽生よりも、世界的なオピニオンリーダーである大坂なおみの方がずっとセンスがいいと思い感心した。

日本選手団の旗手には、バスケットの八村塁も選ばれた。

大坂の父親はハイチ、八村の父親はアフリカ・ベナンの出身である。

57年前の東京オリンピックでは戦後復興を歌い上げ国威発揚の愛国的な雰囲気が充満していたが、この半世紀で日本もそれなりに変わり、単一民族幻想が薄らぎ、多様なルーツを持つ日本人が少しずつ増えてきた。

大坂や八村はまさにそうした新しい日本の息吹の象徴と言えるだろう。

私にそうしたことを気づかせてくれたのは韓国の朝鮮日報だった。

その記事は、大坂や八村のことを詳しく紹介し、次のような分析を加えた。

 この57年間に新たな変化も起こった。それは開会式を見ればすぐにわかる。NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)で活躍する八村塁選手(23)が日本選手団の男子の旗手を務め、女子テニスの大坂なおみ選手(24)が聖火の最終ランナーとして登場した。世界のトップスターでもある彼らは肌の色が黒いハーフ(日本国籍の混血)だ。

 彼らの根にはかつて日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」として世界に君臨し、浮かれていたバブル期の栄華が隠れている。バブルの絶頂だった1980-90年代の日本は世界経済の中心だった。全世界から、とりわけ開発途上国の若者たちが心から「ジャパニーズ・ドリーム」を夢見て日本に向かった。八村選手の父親はアフリカの小国ベナン出身、大坂選手の父親はハイチ出身だ。日本人女性との間に生まれた子供たちがバブル崩壊後の不況の中で成長し、今を迎えたのだ。彼らは多様で調和のある生き生きとした日本人だ。

 1964年の東京オリンピックで日本は合計29個のメダル(金16、銀5、銅8)を獲得し総合3位となった。当時の看板スターは柔道で最初の金メダリストとなった中谷雄英、男子体操で2冠王となった遠藤幸雄、「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーの選手たちだった。そこには純血主義を前面に出す雰囲気が強く、混血はもちろん沖縄出身者、アイヌ系、在日韓国人などはそこに入る余地はなかった。1964年の東京オリンピックをきっかけに日本は経済の高速成長を成し遂げ、経済大国へと発展したが、その後日本がその世界観を広げた結果、八村選手や大坂選手が登場したのだ。

引用:朝鮮日報

コロナ禍の異常な世界の中で開かれた異常なオリンピック。

どうせなら、既存のオリンピックの常識を打ち壊し、持続可能なオリンピックの姿を指し示すようなものを提示してもらいたい。

昨夜の開会式も、入場行進以外はグッと時間を短縮し、コンパクトで内容の濃いシンプルなものにして欲しかった。

その意味で、不必要な演出が多くダラダラと4時間近くも続いたのは残念である。

どうせなら、閉会式やパラリンピックの開閉会式はもっとシンプルに短時間で行って欲しいと感じた。

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