<吉祥寺残日録>82歳ペロシ下院議長が訪台!老害が目立つアメリカに民主主義を守る戦略はあるのか? #220803

中国の度重なる警告を無視するようにアメリカのペロシ下院議員が2日夜台湾に降り立った。

ペロシ氏は大統領継承順位2位のアメリカ政界の大物。

手すりにつかまりながらタラップを降りる姿があまりにおばあさんだったので調べてみると、すでに年齢は82歳だという。

79歳のバイデンさんよりも3つも年上だ。

70代とは言ってもエネルギッシュだったトランプさんと比べ、バイデン、ペロシの民主党コンビは弱々しく見え、トランプさんとは別の意味で「大丈夫か?」と言いたくなるような言動が目立つ。

アメリカの下院議長の訪台は1997年のギングリッチ氏以来25年ぶり。

だが、ギングリッチ氏はクリントン政権と対立していた野党共和党の議員でありタカ派として知られた人物で、与党議員であるペロシ氏とは立場が違う。

台湾到着後ペロシ議長は次のような声明を発表した。

訪台は台湾の民主主義を支援する米国の揺るぎない関与を示すものだ。

我々の訪問はシンガポール、マレーシア、韓国、日本を含むインド太平洋地域への幅広い訪問の一環であり、相互の安全保障、経済連携、民主的統治に焦点が当てられた。 台湾の指導者との協議では米国による支持を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の推進を含む共通の利益を促進することに重点を置く。

世界が独裁か民主主義かの選択に直面するなか、米国が台湾の人々との連帯を示すことはかつてなく重要だ。我々の訪台は長年にわたる米国の台湾政策に反するものではない。米国は一方的な現状変更の試みに反対し続ける。

一夜明けて、ペロシ議長は蔡英文総統との会談に臨んだ。

会談で両氏は米国と台湾の友好関係を確認した。蔡氏は「台湾は軍事的脅威に立ち向かい、民主主義を守る」と述べた。ペロシ氏は「米国は(台湾の自衛力強化を支援する)台湾関係法を通じ、台湾とともにある。米国は台湾と団結する」と伝えた。

ペロシ氏は2日夜に台北の松山空港に到着し、3日朝に台湾の立法院(国会)を訪問した。その後日本時間午前11時半すぎから、総統が執務する公邸である総統府で蔡氏と会談した。会談は動画共有サイト「ユーチューブ」などで公開された。

引用:日本経済新聞

こうした首脳級の会談がYouTubeで公開されるというのもさすが台湾だなと思うが、表面的なお題目とは別に身のある防衛策が議論されたとは思えない。

中国の影響力が年々強まる東アジアで、アメリカが本気で中国と向き合ってくれるのは日本人としてもありがたいことだが、もし本気で中国が台湾に侵攻した時アメリカがどう行動するのかは全く見えてこないのはやはり不安だ。

中国はペロシ議長の台湾訪問を激しく非難するとともに、2日夜から台湾周辺での大規模な軍事演習を開始した。

さらに4日からは、台湾を包囲するように6カ所で空海合同の演習が行われ、中国海軍の空母「遼寧」と「山東」を中心とする艦隊もすでに出港したと伝えられる。

これに対し、アメリカも空母「ロナルド・レーガン」など4隻の艦艇を台湾近海に派遣していて、台湾有事さながらの緊迫した睨み合いがしばらく続くことになる。

中国では、7月31日に中国人民解放軍建軍95周年を盛大に祝い、習近平さんの三選に向けた最後のハードルとされる共産党の長老を交えた「北戴河会議」がまさに開かれているタイミングである。

だから、先に行われたバイデンさんとの電話会談でも「火遊びをすると黙ってはいない」と台湾訪問をやめさせるよう圧力をかけたのだが、バイデンさんは動かなかった。

アメリカでは今や中国に妥協することは命取りであり、一旦情報が漏れた以上、台湾訪問を取りやめることなどできるはずがない。

バイデンさんにしてみれば、「ペロシ婆さん面倒なことをしてくれたな」というところかもしれない。

この秋には中間選挙が待っていて、82歳のペロシさんも流石に引退だろうから最後の花道としてみんなが許容したのかなとも思ったが、調べてみるとペロシさんはこの秋も再び選挙に出るらしい。

本当に世界中で「辞めない年寄り」が増えているのだ。

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ペロシ議長の台湾訪問を受けて、中国の王毅外相が発表した声明が「人民網 日本語版」に掲載されていたので引用しておく。

ペロシ米下院議長が中国側の厳正な申し入れを顧みず、公然と中国の台湾地区を訪問した。この行為は「一つの中国」原則への重大な違反であり、悪意をもって中国の主権を侵害し、公然と政治的挑発を行うものであり、中国国民の強い憤りと国際社会の一致した反対を招いている。これは、米国の一部の政治屋がすでに中米関係の「トラブルメーカー」へと成り下がり、米国がすでに台湾海峡の平和と地域の安定に対する「最大の破壊者」となっていることを改めて証明したと言える。

米国は、中国統一の大業を妨害する幻想を抱いてはならない。台湾地区は中国の一部だ。国家の完全統一の実現は大勢の赴くところであり、歴史的必然だ。我々は「台湾独立」分裂勢力と外部勢力からの干渉にいかなる余地も断じて残さない。米側がいかなる手段で「台湾独立」を支持し、黙認しようとも、結局は徒労に帰するのであり、米国が他国に対し粗暴な内政干渉を行ったというお粗末な記録をさらに多く歴史に残すだけである。台湾問題は当時の国家の弱体化と混乱により生じたものであり、今後の民族の復興に従い必ずや終結する。

米国は、中国の発展と振興を破壊する幻想を抱いてはならない。中国はすでに自らの国情に即した正しい発展の道を見出している。中国共産党の指導の下、中国国民14億人は中国式現代化に向けて大きな歩みを進めている。我々は、国家と民族の発展を自らの力の出発点に据え、各国との平和的共存と共同発展を望んでいるが、中国の安定と発展を破壊することは、それがいかなる国であろうとも断じて許さない。台湾問題において挑発し、もめ事を引き起こし、中国の発展と強大化を滞らせ、中国の平和的台頭を破壊しようと企てることは、完全に徒労であり、必ずや失敗する運命にある。

米国は、地政学的なゲームを操作する幻想を抱いてはならない。地域諸国は平和・安定・発展・ウィンウィンを一致して求めている。米国が台湾問題を地域戦略に組み込み、緊張を誇張し、対立を煽ることは、地域の発展の潮流に逆行し、アジア太平洋の人々の期待に反する行動であり、非常に危険で愚かな事と言える。「一つの中国」原則はすでに国際関係の基本的準則であり、第二次世界大戦後の国際秩序の一部を成している。米国がなすべきことは、国連憲章の趣旨と原則への違反を直ちに止め、「台湾カード」を切ってアジア太平洋地域をかき乱すのを直ちに止めることだ。

米国は、恣意的に白黒を逆さまにすることができるという幻想を抱いてはならない。米国は中国が事態をエスカレートさせていると主張するが、米国のほうが先に台湾問題で中国側を挑発し、中国の主権と領土的一体性を公然と侵害したというのが、基本的な事実である。米側は議長の台湾地区訪問には前例があると主張するが、過去の過ちを今日も繰り返す口実にしてはならないというのが、基本的な道理である。米側は、三権分立のために議会を規制することはできないと主張するが、米国はその国際的義務を履行しなければならず、ましてや重要な政治的人物が勝手な行動をしてはならないというのが、基本的な国際法の原則である。さらに米国は、中国が統一を図ることは台湾地区にとって「脅威」だと主張するが、台湾地区は中国の領土の不可分の一部であり、台湾問題は完全に中国の内政であるというのが、基本的な論理である。中国が領土的一体性を守り、国家の分裂に反対するのは合理的かつ合法的であり、筋の通ったものだ。

私は次の事を強調したい。台湾海峡の平和と安定の鍵は「一つの中国」原則であり、中米の平和的共存の真の「ガードレール」は中米間の3つの共同コミュニケである。「米国に頼り独立を謀る」のは破滅への道であり、「台湾を利用して中国を牽制する」のは失敗する運命にある。国家の統一という民族の大義を前に、中国人には何をも恐れぬ気概があり、脅しや圧力に屈せぬ気骨があり、一丸となって志によって城を成す決意があるのであり、それ以上に国家の主権と民族の尊厳を断固として守る能力があるのだ。

引用:人民網日本語版

本当に恐ろしい声明であり、世界最強の軍隊を持つアメリカだから聞き流せるが、経済的にも依存している日本なら間違いなく震え上がってしまいそうなメッセージである。

こんな凶暴な大国に睨まれた台湾の人たちは平常心を保つのも容易ではないだろう。

そもそも台湾という島が中華人民共和国の一部だったことなど一度もない。

国共内戦に敗れた蒋介石率いる国民党がこの島に逃れて「本土反攻」を掲げてずっと睨み合いを続けてきたのだ。

だから「一つの中国」という大前提はニクソン訪中の際の手土産であり、台湾の人たちの意思は1ミリも入っていない勝手な決め事である。

さらに遡れば、台湾に漢民族が移り住んだのは17世紀以降の話であり、それ以前は「高砂族」と呼ばれた先住民が住み着いた『無主の島』として、倭寇の拠点となったりオランダの植民地になったこともある。

台湾の歴史を調べれば、本当はここは「誰のものでもない島」、すなわち現地の住民たちの島であっても良いのではないかと私は思う。

私は台湾の独立を支持する。

そのためにも、アメリカのリーダーたちにはこの島の民主主義を守るためのしっかりとした戦略を立ててほしい。

そして台湾有事ともなれば沖縄の基地は最前線となるのだから、日本のリーダーたちにも自国の安全保障をどのように守るのか明確な青写真をしっかりと用意していてもらいたいと切に願う。

<吉祥寺残日録>空飛ぶ司令塔「AWACS」が中国の標的に!台湾をめぐる熾烈な駆け引き #220520

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