<吉祥寺残日録>24年ぶりの1ドル=135円台!歴史的な円安は世界一の超高齢国・日本の実力なのか #220614

円安が止まらない。

13日のマーケットではついに1ドル=135円台前半まで円安が進み、金融不安で「日本売り」に見舞われていた1998年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準だという。

コロナ後の景気回復に加え、ウクライナでの戦争、中国のゼロコロナ政策なども絡み、アメリカでインフレが続き、FRBが金利の引き上げを急ピッチで進める一方で、日本だけがゼロ金利政策を継続し、日米の金利差拡大を投機筋に狙われているのが最大の原因だ。

日銀の黒田総裁の任期が続く来年の春までは日本が金融引き締めに動くことはないと見透かされていて、専門家は1ドル=150円程度まで円安が進む可能性があると指摘する。

変動相場制に移行して以来、日本円は国際的にその価値を上げ続け、「有事の円」という言葉が定着した時代もあった。

それが大きく変わったのは、日本がバブルの後処理に苦しみ金融不安を招いた1990年代後半だ。

97年には山一證券や北海道拓殖銀行、98年には日本長期信用銀行が破綻、政府は大手銀行21行への公的資金注入に踏み切った時代だ。

95年には1ドル=80円だったものが98年には147円台にまで円安が進んだ。

昨日の1ドル=135円というのは、それ以来の円安水準だというのである。

「円安は日本経済にプラス」と言い続けてきた黒田総裁も昨日の国会で、急激な円安は「先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスで望ましくない」と述べた。

しかし、世界中の国々が金利引き上げに動く中で、日本だけがゼロ金利政策を継続していては円安に歯止めがかからないのもやむを得ないことだろう。

日本経済新聞にこんな表が出ていた。

昨年末の段階では、ヨーロッパの主要国のほとんどがゼロ金利政策を採用していたが、今年に入りコロナの沈静化と共に行動制限が大幅に緩和され、アメリカに追随して金利の引き上げに動いていることがわかる。

「現在」と書かれた表を見ると、日本だけがいまだにゼロ金利に固執していることは明らかだ。

そのため、円は対ドルだけでなく世界の主要通貨に対して独歩安という状況である。

そのため輸入物価が高騰し、いわゆる「悪い円安」が進み、昨日は日経平均も800円以上大きく値を下げた。

昔よく耳にした「トリプル安」という言葉が、再びニュースを騒がせるかもしれない。

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日本人の多くは今も「日本は経済大国だ」「ものづくり大国だ」と思っているかもしれないが、もうとっくにそういう時代は終わっている。

日本の製造業が海外に工場を移した頃から、材料を輸入して製品を輸出するという日本の成功体験はもはや跡形もなく消え去っているのだ。

だから円安が進んでも、日本で生産したものが海外で多く売れるわけではなく、海外で製造販売して得た外貨が円に換算すると多くなるため、一部の大企業を潤しているに過ぎない。

円安に加えて、長引くデフレで物価が上がらなかったため、外国人にとって日本は「安く物が買える国」になってしまったわけだ。

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そして最大の問題は、世界一の超高齢化社会。

高齢者の医療と介護に関係する費用が国家予算を圧迫し、年々膨らみ続ける借金が金利の引き上げを妨げる。

財務省の試算によれば、仮に金利が1%上昇すると国債の利払いに充てる国債費は年間3.7兆円も上振れするというのだ。

今でさえ歳入が歳出を大きく下回っているのに、経済成長できないまま金利だけ上がると日本の財政はますます大変なことになる。

つまり国民1人あたり1000万円近い借金を抱える日本では到底アメリカ並みに金利を引き上げることなど出来ない相談なのだ。

しかし高齢者の比率が高い日本ではどうしても政治家は年寄りが喜ぶ政策を取りたがる。

それこそ国家が衰退する最大の原因なのではないのか、と私は感じるのだ。

そうした中、いろいろ考えるヒントを与えてくれるドラマに出会った。

NHKで放送されていた「17才の帝国」。

その内容をホームページから引用すると・・・

舞台は202X年。日本は深い閉塞感に包まれ、世界からは斜陽国の烙印を押されている。出口のない状況を打破するため、総理・鷲田はあるプロジェクトを立ち上げた。「Utopi-AI」、通称UA(ウーア)構想。全国からリーダーをAIで選抜し、衰退した都市の統治を担わせる実験プロジェクトである。若者が政治を担えない理由は、「経験」の少なさだと言われてきた。AIは、一人の人間が到底「経験」し得ない、膨大な量のデータを持っている。つまり、AIによっていくらでも「経験」は補えるのだ。それを証明するかの如く、AIが首相に選んだのは、若く未熟ながらも理想の社会を求める、17才の少年・真木亜蘭(まきあらん)。他のメンバーも全員20才前後の若者だった。真木は、仲間とともにAIを駆使し改革を進め、衰退しかけていた地方都市を、実験都市ウーアとして生まれ変わらせていく―。

引用:NHK

ドラマとしては決して面白いものではない。

ただ、若者がAIを使って政治を行うという設定にはとても興味を持った。

しかもAIは3台あり、それぞれ経済成長、生活文化、持続可能性を重視した異なる提案をし、それをもとに人間の閣僚が決定を下す。

閣僚は、15〜39才までの10万人を超える応募者の中からAIが4人を選んだ。

17歳の真木総理が公約として掲げたのは、徹底した公開性。

閣議だけでなく閣僚の執務ぶりをすべてオンラインで公開し、どうすれば住民の幸福度が高まるという基準に基づいてAIにシミュレーションさせ、幸福度が高まる政策を実行していく。

最初に取り組んだのは市議会の解散。

そして自らの支持率が30%を切ったら、AIが総理を罷免するというルールを設けて全ての住民が政治に参画できる政治を目指す。

これは政治に対する私たちの常識を大いに揺さぶる重要な要素を含んでいる。

民主主義が生まれた古代ギリシャでは住民が参加する直接民主主義が採られていたが、住民の数が増えるに従って多くの人が一堂に集まって物事を決めるのは不可能になり住民の代表を選ぶ間接民主主義に移行した。

しかし、住民の代表であるはずの議員は自らの支援者の要求に縛られ、結果として有力者や高齢者の意見が政治に反映されがちになる。

民主主義というのは平等なようで、実は人口の多い世代の意見がどうしてもまかり通ってしまう。

日本で言えば、いわゆる団塊の世代が若者だった頃には若者の声が、そして彼らが老人となった今は高齢者の意見が政治に大きな影響を与えるわけだ。

真木総理も早速、既得権を持つ議員たちの激しい抵抗にぶち当たる。

しかし考えてみれば、デジタル技術の発展により、議会という方法を取らなくてもAIが住民一人一人の意見を吸い上げて分析、リアルタイムの住民投票を実施することで、より現実に即した政治が実現する可能性がある。

リーダーが直接、政策の必要性を住民に説明し、それに対して住民が直接意思表明することで、政治はより公平で自分たちに近いものになるかもしれない。

つまり市議会など不要だということだ。

真木総理が次に取り組んだのは、公務員数の半減。

これもどこの自治体もが抱える問題であり、市の財政の大きな部分は公務員の人件費なのは間違いない。

そして「お役所仕事」という言葉があるように、無駄な規制ばかり作って自分たちの仕事を作り、一般の住民からすれば不要な公務員が実にたくさんいるように見える。

AIは冷徹に、議会がなくなり公務員が半減すれば住民の幸福度は高まると弾き出した。

ただこれは特定の人から仕事を奪うことであり、社会全体の幸福度のために特定の人に犠牲を強いるという側面を持つ。

これこそまさに政治的な決断だ。

17歳の総理はできるだけ住民の声を聞くことで対処しようとするが、多くの人の不満を聞くうちに自分自身が次第に壊れそうになっていく。

みんなが幸せに暮らせる社会とはどんな社会なのか?

そもそもそんな社会など存在するのか?

政治経験のない17才の総理の純粋さが私たちにさまざまなことを考えさせてくれる。

幸福度、透明性、住民参加、結果責任。

どれも重要なキーワードだ。

デジタル化の導入によって、少数の人間が政治を支配する構造を変えることはできるのだろうか?

ストーリー展開とは関係ないが、最終回に登場するこんなセリフが心に残った。

財務経済大臣に選ばれた22才の女性の発言だ。

『若者が支払う税金の低減を提案します。今は経済的に豊かな高齢者が若者より税制優遇されています。これを見直し、ウーア独自の税制を作りませんか』

日本人の個人資産の分布を見れば、若者よりも高齢者の方が裕福な人が多いわけだから、当然の提案だと思うが、どうして実際の政治家からこうした提案が出てこないのだろう?

与党も野党も人口の多い高齢者の方ばかり気にして、老人ウケしない政策は国会で議論さえ行われない。

これではいくら「デジタル田園構想」などと言っても、政治のデジタル化は一向に進まないわけだ。

「新しい資本主義」を標榜し、事あるごとに分配を重視すると発言してきた岸田総理だが、いまだに「新しい資本主義」がなんたるかさっぱり見えてこない。

先に発表した「骨太の方針」では、総理が当初主張していた金融課税の強化は消え、代わりに「貯蓄から投資へ」としてNISAなどの拡充が盛り込まれた。

これでは格差縮小どころがむしろ拡大してしまうと野党から批判されるのも無理もない。

岸田さんの本音とすれば、最低賃金を引き上げ、金融所得に係る税率を引き上げたいところなのだろうが、それでは中小企業が持たないとか、株価が下がるとか自民党内から異論が噴出し、思い通りにはならなかったということなのだろう。

民主主義政治では調整と妥協は避けられないとはいえ、このような痛みを伴わないその場凌ぎの政策を続けていたら、ますます「日本売り」が加速してしまうのではないかと心配になる。

それでも岸田さんの支持率が高いのは、改革を望まない日本人の体質を表している。

この年寄りだらけの国を今後どう運営していくのか?

いっそのこと、AIと若者に一度政治をやらせてみたらどうだろう。

<吉祥寺残日録>「東京ブラックホール」〜バブル時代の最中に生きる人間はバブルを感じない という教訓 #220502

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