<吉祥寺残日録>骨太の方針に「国民皆歯科健診」が唐突に書き込まれる中、私は虫歯の治療を始めた #220615

今月6日に梅雨入りした東京。

昨日から霧雨のような雨が降ったり止んだりしている。

そして寒い。

今日も最高気温が20度に達しない予報で、これで今月に入って20度未満の日は4日目となる。

これは20年ぶりのことだという。

小雨が降る中、井の頭公園を散歩した。

さすがに人影もまばらだ。

半夏生の葉が白くなり、花がほころび始めていた。

もうすぐ夏至だ。

ただ梅雨寒は今日までで、明日からは30度越えの真夏日が続きそうだという。

ここにきて、コロナもすっかり沈静化してきた。

東京都ではついに昨日、重症者がゼロになったという。

東京都医師会の会長は会見で、「屋外ではもうマスクをする必要はない、熱中症のリスクを考えるとマスクをしない方がいい」と発言した。

2年半に及んだコロナによるマスク生活も、そろそろ終わりが近づいてきたのだろうか。

そうだと本当に嬉しいニュースだ。

そんな中、昨日かかりつけの「黒田クリスタル歯科」に行ってきた。

虫歯の治療のためだ。

会社を辞めてからここで3ヶ月に1回のわりで口の中のチェックと掃除をしてもらっているのだが、その際に右奥歯に小さな虫歯が見つかった。

最低3回、つまり15日程度治療にかかるというし、別に痛くもないのでしばらく放置していたのだが、突然痛くなったら面倒なので2週間あまり東京にいるこのタイミングで済ましてしまうことにしたのだ。

治療の予約をすると、これまでの診察券の代わりに「プレシャス診察券」というものを渡された。

キャンセルや遅刻がない常連の患者が対象で、複数回の予約や院長の指名が可能となるらしい。

特段大きな歯科ではないが、複数の歯科医とたくさんのスタッフが働いているので、せっかくならばいつも同じ先生に診てもらった方がいいと思い、院長先生を指名することにした。

ただ院長は大忙しなので、別の先生が麻酔をしてくれた後、院長が素早く治療をするという流れ作業だった。

過去に治療した際の被せ物を外して虫歯の箇所を削り終わると、院長は次の患者のところに行き、歯科技工士の女性が治療跡に仮の詰め物をしてくれた。

このクリニックが気に入っているのは、治療の過程を細かく写真撮影してくれてモニターで自分の歯の状態を確認できることだ。

治療後、院長がモニターを見ながら状況を説明してくれて終了。

ここまで30分もかからないスピーディーさで、次回は被せ物の型取り、その1週間後にそれを被せて虫歯治療は完了となる。

治療途中は詰め物が舌に引っかかったりして不快なことが多いが、昨日の処置は完璧で、麻酔が醒めるとまったく何の違和感もなく普通になんでも噛むことができた。

家からも近く、いい歯科医が見つかったのはシニアライフを考えるうえで幸いであった。

歯ということでいえば、先日決定された岸田政権初の「骨太の方針」に歯科健診の文言が唐突に挿入されていたのが目を引いた。

『生涯を通じた歯科健診の具体的な検討など歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む』として「国民皆歯科健診」の方針を打ち出したのだ。

なぜこれが骨太の方針に盛り込まれたのか?

日本経済新聞にはこんな思惑が記されていた。

政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)案で、国民に毎年の歯科健診を義務付ける「国民皆歯科健診」制度の検討を明記した。定期健診で歯周病などの病気を悪化前に見つけ、1人あたりの生涯医療費を抑える狙いがある。日本歯科医師連盟などが創設を要望しており、7月の参院選に向け組織票を取り込む狙いもありそうだ。

引用:日本経済新聞

なるほど参院選対策か。

義務化されている健康診断とは違って、毎年歯科健診を受けている人は日本人の53%程度らしい。

定期的に歯科健診を受ければそれだけ歯の治療が必要な人が見つかって歯科医には喜ばれるということなのだろう。

歯医者さんのお世話になるのは若い人よりも年寄りに多い。

ここにもっと予算をつけて欲しいという声が、与党支持者から多く寄せられているのかもしれない。

歯のメインテナンスは確かに重要だ。

しかし政府が取り組むべき重要課題は、他にいくらでもあるだろうと感じるのは私だけだろうか。

今日で通常国会が閉幕する。

異例ともいうほどの無風の国会だった。

岸田さんの誠実そうな答弁姿勢と野党に似た政策のためか、まったく紛糾することもなく粛々と審議が進み、政府が提出した61の法案は全て可決されそうだという。

法案成立率100%は戦後3回目、実に26年ぶりのことだという。

立憲民主党の新執行部が「野党は批判ばかり」との批判を意識して提案型に切り替えたことも影響したのだろう。

岸田内閣は具体的な政策を何一つ実現していないにも関わらず高い支持率を維持し、参院選でも与党の大勝が確実な情勢である。

参院選で勝利すれば衆参ともに選挙のない自民党にとっての「黄金の3年間」が待っている。

党内での権力争いさえなければ、岸田さんは意外なほど長期政権となり、自民党の悲願である憲法改正にも成功するかもしれない。

コロナと東京五輪に翻弄された菅さんが岸田さんに変わった途端、嘘のようにコロナが大人しくなってしまった。

これも人徳か、それとも運命か、岸田さんはなぜか運がいい。

去年の総裁選の時には想像もできなかった岸田長期政権とハト派政権下での憲法改正が、マジで現実のものとなりそうな気配である。

人間の世とは、何とも不思議な動き方をするものである。

<吉祥寺ライフ>コロナ時代の歯医者さん #200529

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