いやはや、この男にはいつも驚かされる。
およそ6年ぶりに日本での試合に臨んだ大谷翔平は、侍ジャパンの錚々たるメンバーを前に格の違いを見せつけた。

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕を前に行われた阪神との強化試合。
この日からメジャーリーガーたちも侍ジャパンとして試合出場が可能となり、大谷は3番指名打者でバッターボックスに立った。
第1打席は好投する阪神才木の前に空振り三振、第2打席も追い込まれた4球目だった。
鋭く落ちるフォークボールに体勢を崩され、片膝を地面につけるようなフォームでボールを掬い上げる。
誰もがセンターフライかと思った打球はぐんぐん伸びて、なんとセンターの上段まで飛んだのだ。
逆転の3ランホームラン。
日本人離れしたそのパワーをまざまざと見せつけた。

続く第3打席。
バットの根元に当たる詰まった打球は途中で失速するも、ぎりぎりでセンター右の外野スタンドまで運んでみせた。
恐るべきパワー。
東京ドームは小さいとはいえ、大谷翔平は体が一段と大きくなり、去年よりもさらに進化したのかもしれない。

初の日系人メジャーリーガーとして日本代表に加わったヌートバー選手もこの日2安打の活躍で、こと打撃に関してはメジャーと日本の差をつくづくと感じさせた。
大谷は終始ヌートバーのことを気にかけて話しかけ、ホームランを打った後もヌートバーお得意の胡椒をひく「ペッパーグラインダー」のポーズで盛り上がるなど、侍ジャパンにメジャーの風を持ち込んでいる。
いよいよ明日から1次リーグが始まる。
史上最強と呼ばれる侍ジャパンが、最大のライバル韓国とどんな試合を見せてくれるか、いつもドラマが待っている日韓戦が今から楽しみである。

日韓といえば、昨日韓国政府から重大な発表が行われた。
文在寅政権時代から両国間の大きな問題となっていた元徴用工問題について、日本企業に代わって韓国側の財団が被害者に補償すると言うのだ。
韓国の聯合通信が、解決案を発表した際の朴振外相の発言全文を掲載していたので参考までに転載させていただく。
政府は1965年の韓日国交正常化以来構築されてきた両国間の緊密な友好協力関係に基づき、今後韓日関係を未来志向的により高い次元に発展させていこうという意志を持っている。
また、政府は強制徴用被害者が長年経験した苦痛と痛みに深く共感し、高齢の被害者や遺族の痛みや傷が早急に癒されるよう最大限努力していく。
2018年10月と11月の日帝強制占領期の強制徴用事件に対する大法院(最高裁)判決以降、2019年7月に日本の輸出規制が発表された。また、2019年8月、われわれは韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を通知した。新型コロナウイルス発生後、人的交流の断絶などで冷え込んだ韓日関係は事実上放置されてきた。
このような状況で2022年5月、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足した。政府は強制徴用被害者側の意見を尊重しながら、韓日両国の共同利益に合致する合理的な解決策を策定するため努力してきた。 昨年の4回の官民協議会や今年1月の公開討論会、外交部長官の被害者・遺族との直接面談などを通じ被害者側をはじめとする各界各層の意見を集めてきた。
これに基づき5回の韓日外相会談など高官級を含む両国外交当局間の緊密な協議を通じてわれわれの立場を忠実に伝えながら、日本の誠意ある呼応を促してきた。
政府はこうした国内の意見集約や対日協議の結果などに基づき、強制徴用の大法院判決に関する以下の案を発表する。
「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援に関する特別法」制定以降に設立された行政安全部傘下の「日帝強制動員被害者支援財団(以下財団)」が強制徴用被害者・遺族支援および被害救済の一環として2018年の大法院による3件の確定判決の原告に判決金と遅延利子を支払う。
また、同財団は現在係争中の強制徴用関連の別の訴訟が原告勝訴と確定した場合、同判決金と遅延利子も原告に支払う。
同財団は強制動員被害者の苦痛と痛みを記憶し、未来世代に発展的に継承していくため、被害者追悼や教育・調査・研究事業などをさらに内実のあるものにし、拡大していくための案を積極的に推進する。
財源に関しては民間の自発的な寄与などを通じて賄い、今後財団の目的事業に関連する可用な財源をさらに拡充していく。
政府は韓日両国が1998年10月に発表した「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ共同宣言(金大中・大渕共同宣言)」を発展的に継承し、過去の不幸な歴史を克服し、和解と善隣友好協力に立脚した未来志向的な関係を発展させていくため共に努力することを望む。
また、政府は最近の厳しい朝鮮半島や地域・国際情勢の中で自由民主主義、市場経済、法治、人権という普遍的価値を共有する最も近い隣人である日本と共に韓日両国の共同利益と地域、世界の平和繁栄のため努力していけることを望む。
引用:聯合ニュース

尹錫悦政権にとっては大きな政治決断だったと思う。
最高裁判決を政治判断でひっくり返そうというのだから、三権分立の観点からも批判は免れないだろう。
韓国国内には、日本の戦争責任追及が不十分だという世論が根強くあり、日本との間で慰安婦合意を結んだ朴槿恵政権も元慰安婦の団体や野党から激しい反発を受け、躓きのきっかけとなった。
それでも尹錫悦大統領は、日本との関係改善を急いだ。
おそらく背後ではアメリカからのプレッシャーもあったのだろうが、膠着していた日韓関係がこの英断によって正常化に向かっていくだろう。
まずはその勇気ある政治決断を高く評価したい。

この韓国側の決定を受けて、林外務大臣が日本側の談話を発表し、「非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」と述べた。
韓国側が求める日本側の「誠意ある呼応」を巡っては、林外相は「日韓共同宣言を含めて歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と述べ、日本政府は資金を出さないものの、過去の政権が表明した「反省とおわび」を継承する方針を示した。
しかし「反省とおわび」という言葉にはあえて触れておらず、このあたりが韓国世論にどう映るのかは予断を許さない。

岸田総理も国会での質疑で「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく」と述べたが、いっそこの機会に岸田さんには韓国を訪問してもらい、元慰安婦や元徴用工に会って「反省とおわび」の意思を直接伝えてほしいと思う。
自民党内には安倍派を中心に韓国に対してお詫びすることをよしとしない大きな勢力がある。
ことあるごとに韓国国民の感情を逆撫でするような発言をして日韓関係を拗らせてきた。
岸田さんが自ら韓国に乗り込んで、70年以上前の忌まわしい過去を清算することに成功すれば、これは極めて大きな政治的偉業となるだろう。
そして未だに実現していない天皇訪韓に向けて両国が協力して環境づくりが進められれば、不安定な東アジア情勢にインパクトを与えられると私は考えている。

しかし、日本の思惑通りにいかないのが韓国である。
何事によらず世論が二分されていて、政権交代が起きるたびに国の政策が右に左に大きくブレる。
とはいえ、それは日本人がとやかくいう筋合いではない。
ある意味では、韓国の方が日本よりもずっと民主主義が根づいて機能しているいるという見方もできよう。
尹錫悦大統領は今後、厳しい野党からの攻撃に耐えなければならない。

聯合ニュースに韓国の世論調査の結果が出ていたのだが、それによると尹錫悦政権の支持率は3ヶ月連続で伸びているという。
未だに不支持の方が多い状況に変わりはないが、日韓関係改善のムードを評価する韓国人も確実に存在する。
これは日本政府にとっては嬉しいニュースだ。
今回の大統領の決断によって日本との関係改善が進み、それによって良い変化がはっきりと起きれば、尹政権の支持率ももっと高まり、日韓関係もさらに安定することになるだろう。
そのために日本側に求められるのは謙虚な姿勢だ。
愛国的な言動をする人たちほど韓国を見下す傾向がある。
しかし先進国よりも新興国の経済成長が大きくなり世界が多極化しつつある現在、日本はもはやそれほど突出した存在ではない。

その国の技術水準を示す新型ロケットの開発において、日本は再び大きな試練に見舞われた。
先月、発射直前に打ち上げを中断していた新型ロケット「H3」初号機は今日午前打ち上げられたが、2段目エンジンに点火せず破壊指令が出され失敗に終わった。
アメリカでは民間企業が宇宙開発の中心に躍り出て、中国でも月面探査や宇宙ステーションの建設が進められる中で、かつては米ロ欧と並ぶ宇宙先進国だった日本は大きな遅れをとることとなった。
日本はもはや「ものづくり大国」ではない。
そのことをしっかりと認識したうえで、他国との協調、場合によっては他国の良いものを積極的に導入する謙虚な精神が求められるのだ。

今回のロケット失敗には、大型旅客機の開発失敗と共通する敗因があったのではないかと推測する。
「根拠なき自前主義」とでも呼ぶべきもので、かつて世界を席巻した日本の技術力を過信し、他国で進む新たな技術を学ぶ精神が欠けていたのではないかと私は考える。
日本企業が工場を海外に移転し日本人がものを作らなくなって久しい。
30年も経てばサラリーマンは一巡するのであって、30年前にはできたことが今の日本人にはできなくても不思議ではないのだ。
中国は世界中から工場を呼び込み、あらゆる技術を貪欲に吸収し、熟練労働者を大量に生み出した。
それが日中の技術力の逆転をもたらしている。
韓国も半導体や家電製品、さらにはアイドルまで、日本がかつて得意だった分野で世界的な成功を収め、日本よりグローバル化した企業も多い。

中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた東アジアにおいて、韓国のほかに日本が価値観を共有し連携すべき国は他にない。
韓国の経済力は、GDPランキングで世界第12位。
G7諸国を除けば、中国、インド、ブラジル、ロシアに次ぐ経済規模である。
欧米中心のG7をアジアに広げるため、日本が韓国のG7入りを積極的に提案してもおかしくはないだろう。
GDP世界第13位のオーストラリアも一緒にG7に誘ってもいい。
そうすれば韓国は待望の先進国の仲間入りをすることになり、日本との関係改善もますます進むと私は考えるのだがどうだろう。
豊臣秀吉以来、日本は何度も朝鮮半島に一方的に迷惑をかけた。
歴史をちょっと勉強すれば、韓国人が日本に反感を持つのは当たり前である。
日本人はそれをしっかり理解して、常に謙虚に接していけば、いずれ両国はアジアのかけがいのないパートナーとなれる。
私は、そう信じている。