<吉祥寺残日録>巨樹を見にいく🌳小豆島宝生院で樹齢1600年のシンパクと出会う #211014

岸田総理が今日、衆議院を解散した。

総理就任からわずか10日後の解散は、戦後もっとも速いという。

19日公示、31日投開票という短期決戦で次の政権を争う。

野党の選挙協力により、自民党の議席が減ることは確実と見られるがそれでも自公政権は安定過半数を確保する見通しだ。

岸田さんのキーワードが「分配」なので、与野党の違いがぼやけてしまい、どうも争点がはっきりとしない。

コロナ禍の中での選挙なので、各党共にバラマキ公約が大手を振ってまかり通っているが、コロナ禍が終われば次の大地震がきっとやってくるのだ。

危機がない時代なんかはない。

国民の耳障りの良い政策ばかり主張するポピュリストたちが跋扈する政治はきっと将来に禍根を残すだろう。

そんな日本の将来を左右するような衆議院解散の日に、私は草刈りを中断して妻と小豆島への旅行に出かけた。

2週間に及ぶ今回の岡山帰省ではレンタカー代だけで10万円を超えそうだったので、航空券とホテル、レンタカーをセットにしたツアーの方が費用を抑えることができると判断し、1泊だけホテルを予約することにしたからだ。

岡山市内のビジネスホテルでもよかったのだが、どうせなら瀬戸内海を旅行しようと思い、小豆島のホテルを選んだ。

朝5時前に起き出して、片付けで出た大量の燃えるゴミを出した後、車で岡山県東部の日生港に向かった。

朝8時に出港する一番早いフェリーに乗って、小豆島北部の大部港までおよそ1時間の船旅である。

天気予報では晴天の予報だったが、期待したほどの青空は広がらず、デッキで立つと少し肌寒いほどだった。

それでもお昼前からは次第に晴れてきて、妻が行きたかったお醤油の工場にも行けた。

1907年創業の「マルキン醤油」は、小豆島の有力醤油醸造家8人を中心に設立されたという歴史ある工場で、想像していたよりも遥かに広大で古びた建物がなんともいえない味わいを醸し出していた。

宿泊したのは、恋人たちに人気のスポット「エンジェルロード」に面した「小豆島国際ホテル」。

部屋から「エンゼルロード」が波に飲み込まれていく様子や、そこを訪れる若者たちを観察できる素晴らしいロケーションだった。

こうした旅のお話は後日「きちたび」として詳しく記録する予定だが、今日は個人的に一番印象深かった「宝生院のシンパク」についてだけ書き残しておきたい。

これが国の特別天然記念物にも指定されている日本最大のシンパク(真柏)の巨木である。

小豆島の中心地・土庄郊外の「宝生院」というお寺の境内に立っている。

樹齢1600年。

1600年前といえば日本はまだ古墳時代ということになる。

「シンパク」という樹木は「イブキ」とか「ビャクシン」とも呼ばれ、日本では中部以南の主に海岸に自生する裸子植物である。

幹の周囲は16.6メートル、地上1メートルのところで三方に開き、その幹は複雑によじれていかにも老木といった趣がある。

現地に建てられていた説明板によれば、この巨樹をめぐってはこんな伝説も残っているという。

本樹は、応神天皇が小豆島遊幸のとき、皇踏山に登られ、南麓の小高いところに御手植になられたとの伝説がある。由緒ある神木として郷人たちは崇敬し今日まで大切にしてきたものである。大正期の中頃、植物学の大家本多静六氏の調査研究によると樹齢1500年以上と推定されている。

土庄町教育委員会

小豆島には応神天皇の足跡が各地に残るという。

朝鮮征伐を行なったとされる伝説の神功皇后が遠征の帰路遭難し小豆島に漂着したという話も伝わっていて、その子供である応神天皇が後年小豆島にやってきて、このシンパクを植えたというのだ。

それにしても、実に荒々しい巨樹である。

高さ20メートルを超える巨体を支える幹はどんな力学が働いているのだろうと不思議に思えるような複雑な紋様を描いている。

見ているだけで、パワーを感じる素晴らしい神木だ。

長い歴史を生き抜いた巨樹を見ていると、人間の営みが実にちっぽけに思えてくる。

与党が勝とうが野党が勝とうが、今の日本ではさほど大きな差はないだろう。

もっと大きな歴史的な視野から日本の進路を語る政治家が出てこぬものか・・・。

旅先で巨樹を見つけたら、できるだけ見に行ってみようと思った樹齢1600年、小豆島「宝生院のシンパク」との出会いであった。

<吉祥寺残日録>巨樹百景/川棚のクスの森 #200627

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