コロナ第5波が落ち着いてくるに従って、日本社会も少し浮かれてきたような気がする。
テレビのワイドショーは連日、自民党総裁選の話題で盛り上がり、自民党の勝利を確信し新政権の経済政策を期待するマネーが株式市場に流れ込む。

菅総理が不出馬を表明して以来、日経平均は値上がりを続け、バブル崩壊後の最高値を更新したという。
ちょっと安倍政権のスタート時を思い出させるような動きである。
確かに野党の体たらくで11月にも行われる総選挙では、新総裁を担ぐ自民党が勝利するのは間違いないだろう。
石破さんが出馬せず河野さんを支援する意向を固めたらしく、安倍・麻生体制が揺らぐかどうかに焦点が移りつつある。

世の中の空気が明るくなると、不思議に明るいニュースが続くもので、将棋の藤井聡太さんが叡王戦を制し、19歳1ヶ月で三冠を達成した。
羽生善治さんが持っていた三冠の最年少記録を、一気に3年以上縮める歴史的な快挙なのだそうだ。

将棋での三冠達成者というのは、上の表のように10人しかいない。
しかも、そのうちの6人が現役棋士だというのが個人的には気になった。
昔の人で言うと、升田幸三、大山康晴、中原誠、米長邦雄といった私でも名前を知っているビッグネームばかり。
しかし、21世紀に入るとすでに4人が三冠を達成している。
1961年まではタイトルが5つしかなかったが、62年に棋聖、74年に棋王、そして2015年に今回藤井さんが手にした叡王のタイトルが生まれタイトルの数が8つに増えたのだ。
藤井三冠は来月から竜王戦7番勝負に臨むことになっていて、今回苦手にしていた豊島二冠を撃破したことにより、当分「藤井時代」が続くことは間違いないだろう。

そんなコロナの重苦しさが幾分和らいだ今日、私はかかりつけの「吉祥寺メディカルクリニック」を訪れた。
ここの先生は消化器が専門で、胃カメラと大腸カメラの検査を同時に行ってくれるというのだ。
4年前に、胃と大腸を別々に調べてもらったことがあるのだが、麻酔して眠っている間にやってもらえるので全く痛くなく、個人的にはとても気に入っている。
そして前回、胃と大腸の検査を一緒にできるという話を聞き、今回それを試してみたというわけだ。

検査を受けるためには、胃と腸を空っぽにする必要がある。
ということで、検査前日は朝昼晩と事前に渡された検査食を食べないといけない。
「エニマクリンPO」という大腸検査食で、グリコの商品のようだ。

朝食はこちらの「鶏と卵の雑炊」。

昼食は「ゼリーミール」というゼリー飲料2本と「ビスコ」。

そして夕食は、「煮込みハンバーグ」と「白がゆ」である。
不味くはないが、美味しいわけでもない。
そして量が少ないので、腹が減る。
それでもおやつを食べるのを我慢したので、久しぶりにかなりの空腹を感じ、仕方がなくいつもより早く寝ることにした。

そして今朝は、6時前に起き出した。
病院から渡された紙に、午前6時からこの液体を飲むように指示されていたからだ。
経口腸管洗浄剤「ニフレック配合内用剤」と滴剤型緩下剤「ピコスルファートNa内用剤0.75%」。
要するに、大腸を空っぽにするための下剤である。

ビニール容器に中に入っている粉末に2リットルの水を加えて溶かし、そこに「ピコスルファートナトリウム」を加えてよく溶かす。
この溶液を2時間かけて少しずつ飲んでいくのだ。
私もすでに何度も大腸カメラの検査を受けているが、これを飲むのが一番の苦痛である。
うまくないし、量が多い。
そして途中から便意をもよおして頻繁にトイレに通わなければならないのだ。
通常ならば病院でこれを飲み、病院の廊下をうろうろして病院のトイレを出たり入ったりするのだが、私のクリニックの素晴らしいのは自宅で排便を全て済ましてから検査直前に行けばいいという点である。
暇つぶしにテレビを見たり音楽を聴いたり、ベッドに寝転んで便意が訪れるのをリラックスして待つことができる。

検査を受けるに際しては「同意書」にサインをして提出することが求められる。
「私は、大腸内視鏡検査・内視鏡的ポリープ切除術を受けるにあたり、検査・治療の内容・必要性についての説明を受け、了承しました」
ちょっと大袈裟ではあるが、内視鏡検査にはリスクも伴うのだ。

大腸検査の場合、稀に大腸の出血や穿孔(腸に穴があくこと)、ショック(血圧低下)などの重篤な偶発症を起こすことがあるそうで、発生頻度は0.078%(約1300人に1人)だという。
1300人に1人というのはコロナワクチンよりもかなりリスクが高いということだ。
また、胃カメラでも同様のリスクがあり、こちらは発生頻度が0.012%(約8300人に1人)だそうだ。
どんな治療でも100%安全ということはあり得ない。
メディアのコロナ報道を見ていると、どうもこうした視点が見落とされている気がして、無用に不安を煽るのではなく正確な情報を伝えて一人一人が判断することが重要だろう。

さて、こうして自宅で出すものを全部出してから午後1時半にクリニックを訪れた。
お昼の休憩時間のようで患者さんは誰もおらず、すぐに診療室に呼ばれる。
控室で、紙のパンツとガウンに着替える。
パンツはお尻の方に穴が開いているのだが、以前一度経験していたので特に驚くこともない。
優しい看護婦さんに促されるままにベッドに横たわり、腕に点滴を繋がれる。
先に大腸カメラをやって、続いて胃カメラを行うという。
先生が入ってきて、「麻酔しますね」との声とともに私の意識はなくなった。
そして気がつくと、もう大腸カメラも胃カメラも終わっていた。
痛くも気持ち悪くもない。
これまで他の病院でも胃カメラを受けてきたが、このクリニックが圧倒的に楽だ。

麻酔が覚めるまでしばらく個室でゆっくり休む。
30分ほど休んだ後で、先生の説明があったのだが、内視鏡の写真を見せられ「胃にはたくさんポリープがありますが悪いものではなさそうなので大丈夫でしょう」と言われた。
写真には数え切れないほどのポリープが写っていた。
私は昔からポリープができやすいタチらしい。
いくつかポリープを切除して念のため検査に回すという。
いずれ悪性のポリープが見つかることがあるかもしれない、内視鏡写真を見ながらそんなことを思った。
認知症になる前に死ぬというのが私の目標なので、もはや私に怖いものはないが、生きている間は旅行できる体力は維持したいとも願う。
だから、これからも数年に一度は、このクリニックで胃カメラと大腸カメラの同時検査を受けようと考えている。