<吉祥寺残日録>統一教会、国葬、円高、インフレ・・・そしてエリザベス女王の大往生 #220909

岡山に来ると吉祥寺にいる時に比べてニュースをチェックすることも少なくなるが、昨日は久々にニュースがとても多い一日だった。

とはいえ日本国内については、どれも冴えないニュースばかりだ。

まずは旧統一教会と政治との問題。

野党や世論の批判に追い詰められる形で、自民党が初めて「世界平和統一家庭連合」、いわゆる旧統一教会との関係について所属国会議員に対して行ったアンケートの結果を発表した。

党派離脱中の細田博之衆院議長、尾辻秀久参院議長を除く党所属国会議員379人全員が書面を提出。

教団側と何らかの接点が確認されたのは179人と半数近くにのぼり、そのうち会合でのあいさつや選挙支援などが確認された議員121人については氏名を公表した。

自民党と旧統一教会との根深い関係が改めて浮き彫りになった形だが、もしも岸信介元総理からつながる教団との関係を引き継いでいた安倍元総理が生きていたら、絶対にこんな調査さえ行われなかっただろうと考えると、岸田さんもそれなりに「聞く力」を発揮したとも感じる。

ただ、教団から選挙協力を受けていた議員が思いのほか少ないなど、調査結果をそのまま信じることはできないだろう。

今回発表された数字はあくまでアンケートに対する自己申告を集計したもので、自民党として個別に調査したものではない。

当然、後からボロボロと漏れていた事案がスクープされ、いつまでもこの問題はずるずると尾を引くものと思われる。

しかし、統一教会との窓口だった安倍元総理が亡くなったこともあり、自民党が「統一教会と完全に縁を切る」と宣言した意味は小さくない。

個人的には、これが統一教会の問題にとどまらず、政治と関係の深い宗教団体全体の問題として一度国民的な議論が巻き起こることを望んでいる。

戦前の反省から信教の自由が尊重されることは重要だが、宗教法人に対する優遇税制についてはあまりにも拡大解釈されていて、新興宗教の立派な施設を見るたびにどうしてこんなお金があるんだろうと割り切れなさをずっと感じてきた。

公明党と創価学会の関係は言うに及ばず、自民党にも多くの宗教団体が深く入り込んでいるが、何のメリットもなく教団が政治家を支援するはずがない。

安倍さんの強力な支持母体だったとされる日本会議も、宗教団体はその重要な構成メンバーとなっている。

安倍さんの暗殺をきっかけに吹き出した政治の闇がどこまで明らかになるのか、野党も細部をネチネチ攻撃するだけでなく、もっと政治と宗教という大局を捉えた追及をぜひやってもらいたいものだ。

同じ日、岸田総理は国会の閉会中審査に出席し、安倍元総理の国葬について野党の追及を受けた。

政府は当初、国葬にかかる費用を2億4949万円と発表していたが、この額には警備費や外国要人の接遇費は含まれておらず、国民や野党から全体の金額を明らかにするよう強く求められていた。

その結果、6日なってようやく16億6000万円程度とする新たな数字が発表され、この日国会ではこの金額の妥当性、そもそも国葬とする根拠などについて岸田さんが「丁寧に説明する」こととなった。

しかしいつものことながら、岸田さんの口から目新しい説明はなく、国葬に決めた理由も従来から述べてきた4つを繰り返しただけだった。

すなわち、①憲政史上最長の総理在任期間、②国内外での多くの功績、③海外からの多くの弔意、④銃撃という亡くなった経緯を総合的に勘案して吉田元総理に続く戦後2人目の国葬がふさわしいと判断したというのだ。

私個人は、日本には国葬に関する規定がない以上、時の政府が判断することでさほど違和感はなく、それがけしからんというのであれば自民党を政権の座から引きずり下ろせばいいと考えるのだが、世の中の半数以上の人は国葬をすること自体に反対のようだ。

反対の理由は安倍さんが国葬にふさわしくないということと、巨額の国費をそんなことに使うのは勿体無いということである。

私も安倍さんの思想信条や政治スタイルは好きではないが、そんな安倍さんに長期政権を許したのも国民だ。

私の関心は、葬儀のスタイルではなく、安倍さんがいなくなった政界で今後何が起きるのかという点にすでに移っている。

日本国内が統一教会と国葬問題で大騒ぎする間に、ものすごい勢いで円安が進んでいる。

今週は一気に1ドル=140円台での取り引きとなり、一時145円に迫った。

この水準は山一證券などが破綻した1998年以来24年ぶりの円安水準であり、専門家たちはこの年の最安値である147円までは円安が進み150円台に突入する可能性もあると予想する。

1998年といえば、私がテレビ局でメインニュースの編集長を担当していた頃で、バブル崩壊により膨らみ続けた不良債権問題がもう限界を超え持ち堪えられなくなった年だった。

あの時代に比べると日本企業の財務内容は健全で、むしろ巨額の内部留保をため込んで従業員に富が配分されないことが問題となっている状況だ。

今の円安はまさに黒田日銀が頑なに維持するマイナス金利政策によるもの。

アメリカをはじめ世界各国が競って急ピッチの利上げを進める中で、日本だけがマイナス金利を継続し、金利差がどんどん膨らみ続けていることが原因なのだ。

当初は静観を決め込んでいた日本政府もさすがにここまで円安が進むと「何かやってる感」を演出せざるを得ない。

昨日も、財務省・金融庁・日銀の三者会談が開かれたものの、いつもの口先介入だけで具体策は何も打ち出されなかった。

そもそも大規模な金融緩和によって円安に誘導するというのがアベノミクスである。

その意味ではようやく安倍元総理が思い描いた状況が生まれ、物価上昇もついてに目標の2%を超えるようになったのだ。

統一教会、国葬だけでなく歴史的な円安も、まさに安倍さんの亡霊による仕業なのである。

ようやく物価が上がり始めた時、皮肉なことに仕掛け人だった安倍さんはもういない。

テレビでは連日のように値上げのニュースが流れ、国民からは不満の声が上がる。

物価高の原因はウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の高騰と急速な円安だ。

世界経済はグローバル化の方向から一転してブロック化が進んでいる。

岸田総理は、統一教会や国葬問題から注意を逸らそうとするかのように、昨日10月に総合経済対策を策定すると発表した。

目玉となるのは、低所得の住民税非課税世帯には5万円を給付するという案。

一見するとお金に困っている人たちに現金支給する優しい政策にも思えるが、この「住民税非課税世帯」というのが曲者だ。

実は住民税非課税世帯は全世帯の23.3%にあたり、そのうち65歳以上の高齢世帯が72.5%を占めているという。

つまり5万円もらえる人の大半は年金をもらっている年寄りということだ。

所得はなくても資産は持っている年寄りはたくさんいる。

私ももうじきその仲間入りをするのだが、低賃金で働く現役世代よりも年金暮らしの高齢者を支援する政策は果たして正しいのだろうか?

そもそも日本の物価上昇は欧米のインフレに比べれば非常に小さいのに、借金まみれの日本政府がまたバラマキをすることが将来世代の首をますます締め付けることになるのではないのか?

それよりは、最低賃金を引き上げるなど働く世代を支えることに限られた国家予算を使った方がいい。

統一教会、国葬、円安、インフレ。

どれも安倍さんが残していった置き土産である。

どんな政策にも光と影の部分が共存するが、大切なのはアベノミクスが日本にもたらした結果を冷静に見極め、改めるべきは改めることであろう。

バブル崩壊以降、日本人はデフレに慣れ親しんでしまい世界的に見ても「安い国」になってしまった。

一度その環境に慣れてしまうと、物の値段が上がらない生活というのは意外に暮らしやすいものだ。

国全体としては元気がなくなり国際競争力を失うが、庶民の暮らしはまんざらでもない。

30代以下の若い世代はずっとそんな社会で暮らしてきたので、急に物価が上がり始めると戸惑ってしまうのだろう。

でもインフレこそが、アメリカを筆頭として経済成長する国々のスタンダードであり、日本もようやくその軌道に乗ったと考えれば、政府が打ち出すべき政策も従来型のバラマキではないはずなのだ。

そうした日本国内の冴えないニュースが続く中で、夜に入ってびっくりするニュースが飛び込んできた。

イギリスのエリザベス女王が亡くなったというのだ。

96歳だった。

その在位期間は実に70年7ヶ月、イギリス王室としては歴代最長である。

ある記事に載っていた情報によれば、歴史的に見ても70年を超える長期にわたって国のトップに君臨した王様はフランスのルイ14世だけだそうだ。

太陽王ルイ14世はブルボン家の絶頂期に君臨した絶対君主であり、ヴェルサイユ宮殿を建設したことで知られる。

4歳で即位して72年間王座を守ったヨーロッパ最強の王様に並び称されること自体、女王エリザベス2世が歴史的な存在だったことを示している。

第二次世界大戦の時期に国王を務めた父ジョージ6世の死去に伴い、1952年に25歳の若さで王位を継承したエリザベス女王。

その愛らしい物腰と精力的な仕事ぶりでイギリス国民の尊敬を集めた。

女王にとって最大の危機は、チャールズ皇太子とダイアナ妃が離婚し、1996年にダイアナ妃が事故死した時だったろう。

すでに王室を離れていたとはいえ世界的に絶大な人気を誇ったダイアナさんの死に当たってイギリス王室の対応があまりに冷たいとして女王は厳しい批判にさらされた。

しかしその王室存亡の危機も乗り越えて、90歳を過ぎても精力的に働き、死の直前まで公務を怠ることがなかった。

真面目でユーモアがあり、とてもチャーミングな女王さまであった。

長年連れ添った夫エディンバラ公フィリップに去年先立たれた後も、元気に公務を続けた女王は、今年2月イギリス国王として初めて即位70年を迎えた。

6月には5日間にわたる盛大な祝賀行事が行われたが、最大の見せ場であるパレードを欠席するなどこの頃から体調の衰えが伝えられていた。

ジョンソン首相の後任としてイギリスで3人目となる女性首相に就任するトラス女史と面会したエリザベス女王。

これは死の2日前に撮影された写真である。

その表情にはまだ清気がみなぎり、とても亡くなる直前とは思えない。

イギリスにとどまらず、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどイギリス連邦においても国家元首を務め敬愛を集めた女王は、最後までその威厳を失うことなくこの世を去った。

実に格好いい女性であり王様であった。

エリザベス女王と安倍元総理。

同じ国葬で送られることになる2人の似て非なるところが気になった一日であった。

THE CROWN

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