<吉祥寺残日録>日本は「正直者がバカを見る」社会なのか? #210509

緊急事態宣言の延長が決まった翌日、図書館に本を返しに行くため吉祥寺の街中を通ると、コロナ以前と変わらないほどの人出だった。

おそらく今年一番多かったのではないだろうか?

どこもかしこも人、人、人。

歩道は人とぶつかって歩きにくいので、仕方なく車道の端を歩いたほどだ。

若い人が多いとはいえ、年配の人も男女問わず相当数いた。

「いいこと続く11日間!!」とセールを実施している「ユニクロ」から中道通りにかけて、お店が営業しているエリアはすごい人出だ。

「商業施設でクラスターが発生しているエビデンスがない」と休業要請に反発する人も多いようだが、人と人との接触を減らすことが最も有効な感染対策だということは世界的に認められていることだ。

「同じことの繰り返し」と政府を批判してみても、要請を聞かず自分勝手に行動する人が増えれば増えるほど、自粛期間は伸びていくわけで、その結果、我慢して休業している人たちがダメージを受けるのは不条理だと感じる。

図書館まで歩く途中、一番驚いたのは「ヨドバシ吉祥寺」の前の混雑ぶり。

幾重にも人の行列ができていた。

「何かイベントをやってるんですか?」と店の人に聞くと、入店時に検温を実施しているためだと申し訳なさそうに答えた。

国は大型施設への休業要請を緩和する意向を示したが、東京都は「緩和できる状況ではない」として引き続き大型施設への休業要請を続ける姿勢を貫き、このあたりのチグハグさも「自分に甘い企業や人」たちにつけ込まれる。

吉祥寺でも「コピス」や「アトレ」、「パルコ」、「丸井」、「東急」など休業している大型店も多い。

でも営業しても罰則もなく、抜け穴だらけなのだ。

こんな状況を眺めていると「正直者がバカを見る」という言葉を思い出す。

パンデミックと戦うためには「公平感」が大事だと思うが、結局は要請に応じた人たちが不利益を被る構図は何も変わっていない。

昨日の東京都の新規感染者数は1121人と、再び1000人の大台を突破した。

1100人を超えたのは3ヶ月ぶりだという。

連休中に減っていた検査数が増えたことも影響しているだろうが、結局ダラダラと緊急事態宣言が延長されて、居酒屋を中心とした特定の業種の人たちにダメージが集中する。

欧米のような「ロックダウン」と比べて、公平性に著しく欠けているのが苛立たしい。

2週間ぶりに図書館に行くと、新聞や雑誌がすべて撤去されていて、いつもこのエリアに居座っているおじいさんたちの姿も消えていた。

去年の緊急事態宣言時のような図書館閉鎖にはなっていないが、図書館内に長時間止まる人を排除したということだろう。

一般図書の貸し出しはできるというので、地下に降りて本のタイトルを見ながら適当に10冊ほど借りてきた。

その中の一冊に『税金格差』という本があった。

この本を選んだのは、『なぜこの国は「正直者がバカを見る」仕組みなのか?』というサブタイトルがこの日の気分にピッタリだったからだろう。

元「週刊ダイヤモンド」記者だった梶原一義さんという方が書いたもので、富裕層とサラリーマンの税制があまりに不公平だと全編にわたって苦言を呈している本だった。

内容的には特に目新しいことはなかったが、梶原さんはこの本の最後で、「よい納税者を育てる」フィンランドと日本を比較しながら、こう締めくくっていた。

フィンランドはこのようにすべての国民が質の高い教育と訓練を平等に受けられることを教育の基本原則としており、それを持続するために「よい納税者を育てる」ことを教育の目標にしている。OECD(経済協力開発機構)が12年に18ヵ国を対象に行った生涯学習率(30歳以上の成人の通学率)調査で、8.2%のフィンランドはトップだった。ちなみに最下位は1.6%の日本だった。

その日本は、主な税の空洞化が進んでいるため、税の財源調達機能がほぼ崩壊し、17年度末の公債残高見込みは、税収15年分の865兆円。国民1人当たり約688万円(4人家族で2752万円)で、将来世代の極めて大きな負担となる。債務残高の国際比較(対GDP比)で日本(17年に239%)はダントツの世界一だ。

日本は、フィンランドとは真逆のようであり、このような国になるのは難しいだろう。しかし、そういう国もあるということを、せめて覚えておきたい。

引用:梶原一義『税金格差〜なぜこの国は「正直者がバカを見る」仕組みなのか?』

私も以前から日本の税制の歪み、特に富裕層のために用意された税の抜け穴については問題が多いと考えているのでこの機会にちょっと税負担について調べてみることにした。

まず調べたのは、日本の債務残高がどのくらい「ダントツ」かということだ。

「世界経済のネタ帳」というサイトに2020年時点でのランキングがまとめてあった。

それによれば、日本は世界第3位でGDP比で256%の借金を抱えている。

日本の上位にいるのは、ベネズエラとスーダンという「破綻国家」だけだ。

しかも、日本が3位に陥落したのは去年のことで、それ以前を見てみると2011年から2019年までは堂々の世界1位、見事に9連覇を達成していた。

主要国の債務状況も調べてみた。

アメリカは17位、GDP比127%で日本の半分程度だ。

フランスが25位で113%、イギリスが28位で103%、財務が健全なことで知られるドイツは72位で68%、梶原さんが称賛するフィンランドが80位で67%と日本の4分の1程度となっている。

さすがフィンランドと思ってしまうが、実はもっと健全な国々がある。

81位は中国で66%。

中国の財政はどうも理解不能で、あれだけ全土で大規模な公共工事を行っていてなぜ借金が少ないのかは謎でしかない。

お隣の韓国は115位で48%と、日本と比べて驚くほど借金が少ない。

さらには・・・137位にデンマーク、140位スイス、144位ノルウェー、146位ニュージーランド、150位スウェーデン、162位台湾、170位ルクセンブルクといかにも財政が健全そうな国々が債務率20%〜40%あたりに並んでいる。

ちょっと意外だったのは177位のロシアで19%。

アフガニスタンなども債務率は低いので、むしろ信用力がないために借金ができないということかもしれない。

日本の場合、どれだけ借金が膨らんでも「大丈夫」と言われるが、そこには信用力にあぐらをかいて負債を将来世帯に回す無責任な甘え体質が存在するのも間違いないだろう。

次に、各国の税収について調べてみた。

「GLOBAL NOTE」というサイトに「世界の政府税収 国別ランキング」という表を見つけた。

2018年のデータだが、これによると1位はアメリカでダントツの5兆ドル。

2位は日本で1兆5900億ドルとなっている。

日本円でおよそ173兆円ほどの税収だ。

これだけ豊富な税収がありながら、借金大国になっている最大の理由は高齢化だろうが、他にもきっと原因があるのだろう。

3位以下はドイツ、フランス、イギリス、イタリア、カナダとG7諸国が続くが、気になる中国がランキングに入っていない。

そこで中国の税収を調べてみると、2020年の税収が15兆4310億元(約246兆円)という記事を見つけた。

ドルベースだと、2兆2500億ドル程度となり、日本を上回り世界第2位ということになる。

次に税収の構成、すなわち各国がどこから税金を取っているかということを調べてみた。

「世界経済のネタ帳」で、国ごとの税収の構成を見ることができる。

日本の場合、所得税が18.8%、法人税11.8%、社会保険料39.9%、資産課税8.2%、消費課税21.0%という内訳になっているようだ。

これだけだとよく分からないので、他の国と比較してみる。

アメリカの場合は、所得税の比率が高く38.7%、トランプさんが減税した法人税は6.5%と低く、社会保険料23.0%、資産課税16.0%、消費課税15.7%となっている。

日本と比べると、所得税と資産課税(固定資産税や相続税など)の比率が高く、法人税、社会保険料、消費課税の割合が低い。

同様に他の国も見ていこう。

財政の優等生と言われるドイツはどうか?

所得税27.1%、法人税5.4%、社会保険料37.9%、資産課税2.7%、消費課税26.3%。

比較的、日本と似た構成だが、所得税・消費課税の比率が高く、法人税・資産課税の割合が低い。

西欧諸国ではドイツ同様、比較的社会保険料の比率が大きい傾向があり、日本も西欧型と言えるかもしれない。

ただドイツと日本との決定的な違いは、コロナ前まではドイツは財政収支が黒字で推移していたことである。

お隣の韓国も見てみよう。

所得税が17.9%、法人税が14.2%、社会保険料が25.7%、資産課税11.7%、消費課税27.7%である。

社会保険料の比率が低い代わりに、法人税や資産課税、消費課税の割合は日本に比べて高い。

続いては政治的に日本が手本としたい北欧諸国を見ていこう。

梶原さん一押しのフィンランドは・・・

所得税29.2%、法人税6.3%、社会保険料27.8%、資産課税3.6%、消費課税32.9%となっていた。

日本と比べて、所得税と消費課税がそれぞれ10ポイント以上高く、法人税、社会保険料、資産課税が低い。

北欧はフィンランド型が多いが、デンマークは個性的だ。

所得税の割合が52.9%と突出して高く、所得税と消費課税で大半の税収を賄っている。

ニュージーランドも社会保険料がなく、所得税と消費税で税収の大半を賄う国。

人口が少ないから成り立つのかもしれないが、デンマークやニュージーランドの税制というのも一度ちゃんと調べてみる価値がありそうだ。

私が一番興味のあった中国のほか、ロシアや途上国については、残念ながら税収の内訳は見つけることができなかった。

最後に比較しやすいように主要国の一覧表を作ってみた。

こうして並べてみると、税制というものは実に多様性に富んだものだということがわかる。

日本は国際的に見て、社会保険料の比率が高く、所得税と消費課税の割合が少ない。

社会保険料が相対的に高いのも世界一の超高齢社会だからであり、「介護保険料」などが重くのしかかっているのだろう。

しかしこれはあくまで税収の構成比であって、税率の高低ではない。

重要なのは、「国民負担率」という数字である。

「国民負担率」は、個人や企業の所得に占める、税金や、年金・健康保険・介護保険など社会保険料の負担の割合を示すもので、『(租税負担+社会保障負担)÷国民所得(個人や企業の所得)』という数式で弾き出される。

国民負担率が高いほど税負担が重いということである。

日本の国民負担率は確実に増え続け、現在は所得のうち44.6%ほどが税金や社会保険料として徴収されていることになる。

しかしこのグラフを見ると、社会保険料が着実に上昇しているのに比べて税負担の方は横ばいだということがわかる。

日本政府が慢性的に金欠なのはこうした構造が理由なのだ。

一方、日本の国民負担率が国際的に見て高いかと言うとそうでもない。

これはOECD加盟35か国の国民負担率を比較したグラフである。

2017年度時点のものだが、日本の負担率はアメリカや韓国に比べて低いものの、ヨーロッパ諸国と比べるとかなり低いことがわかる。

1位のルクセンブルクなどは国民負担率が93.7%という信じがたい数字だが、1人あたりのGDPが世界一の国だとこんなに税金を払っても生きていけるのだろうか?

日本の国民負担率は相対的に低い。

毎年のこの積み重ねが、世界有数の個人資産と企業の内部留保を産んでいるとも言える。

その一方で、税収の大半は社会保障と国債の利払いに消え、国や自治体には慢性的に金がない。

コロナ対応でも他国に比べて思い切った手が打てないのもこうした事情が関係している。

巷では、再び国民全員に現金支給をしろとか、消費税を下げろとか、損失に応じた休業補償をしろとか、耳障りのいい主張が飛び交っているが、もし政府が人気取りのために大盤振る舞いをしたら、そちらの方がよっぽど危険だ。

世界一の借金大国がますます借金を膨らませ、誰も経験したことのない前の見えないチキンレースをするのが本当にいいことなのか?

もし大盤振る舞いを求めるのであれば、コロナが終息した後の大増税も受け入れる覚悟が必要だ。

ただ政府の無能ぶりを批判していていも始まらない。

みんなで痛みを分かち合うしか方法はないのだ。

本来、人間は自由に生きるべきだと信じているが、パンデミックへの対応においては「自由」は問題を長引かせる。

国民全員が自らを律し、せめて「不公平」な今の状況を1日でも早く終わらせるよう一人一人が協力して欲しい。

もしそれができないのであれば、不公平な自粛要請をすべて解除し、さっさと医療崩壊させて、「コロナに感染したら死ぬ」という恐怖によって人々の行動を抑えるしか方法はない。

パンデミックよりも不公正な社会の方がマジで怖い。

吉祥寺の人混みを見ながら、昨日私はそんなことを考えていた。

<吉祥寺残日録>一律10万円のバラマキ #200417

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