<吉祥寺残日録>支持率急落!それでも私が菅総理に期待する理由 #201209

予想されたこととはいえ、菅内閣の支持率が急落した。

共同通信が先週末に行った世論調査によると、菅内閣の支持率は50.3%で前の月より12.7ポイントの急落となった。

他のメディアの調査でも、読売新聞が61%、TBS系が55.3%、テレ朝系が56.1%といずれも10ポイント前後の大幅な落ち込みとなった。

一番の理由はコロナ対策。

各地でコロナ感染が急拡大し医療体制が逼迫する中で、総理肝いりの「GO TO トラベル」を中断しようとしない政治姿勢に批判が集中しているのだ。

もう一つ影響しているのは、安倍前総理の「桜を見る会問題」や吉川元農水相の現金授受問題など安倍政権時代の疑惑も足を引っ張っている。

この支持率の急落は、メディアの報道ぶりを見れば当然の帰結とも言えるが、私はいささか違った目で菅総理を見ている。

菅義偉という政治家は、これまでの自民党リーダーとはちょっと違う印象を受ける。

何が違うかといえば、自分が長く権力の座に留まろうと考えていないように見えるのだ。

何故そう感じるかといえば、菅さんがこの3ヶ月の間に打ち出した政策を見ると選挙に不利な要素を多く含んでいるからである。

引用:日本経済新聞

私が菅さんに最も期待しているのは、75歳以上の高齢者の医療負担引き上げだ。

世界でも最も厳しい超高齢化社会が進行し国家予算に占める医療費の割合が増える一方なのに、歴代のリーダーたちは高齢者の医療費にメスを入れることを躊躇ってきた。

理由は簡単、選挙に響くからである。

団塊の世代が75歳を迎える前に何とか手を打たなければ現役世代の負担がますます重くなってしまう。

これ以上、世代間格差を放置するのは良くないと菅さんは決断したのだ。

極めて真っ当で、勇気ある決断だと私は評価している。

しかし、公明党は菅さんの方針に真っ向から反対した。

負担増となる対象者を少しでも減らそうと抵抗し、520万人を対象とする政府案に対し、公明党は対象を200万人に絞り込もうとしている。

公明党の支援者は高齢者が多い。

高齢者からすれば少しでも負担が少ない方がいいのは当たり前だが、高齢者が負担しなければ現役世代の負担が増すか、国債を発行してさらに将来世代にツケを回すだけの話だ。

メディアも不思議なほど、この問題には静観を決め込んでいるが、これは責任ある報道機関の姿勢とはいえないだろう。

菅さんが総理就任時から口にしている「自助・共助・公助」というフレーズがこういう意味ならば、私は理解できる。

日本の高齢者は相対的に豊かで、資産を持つ人も多い。

そうしたゆとりのある高齢者が1割負担のまま優遇され、所得が伸びずコロナで失業の心配をしている現役世代にこれ以上の負担を背負わせてはいけない。

負担できる者はなるべく広く少しずつ負担する、超高齢化社会を生き抜く方法はそれ以外にないと私は考えるのだ。

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もう一つ、私が菅総理を評価しているのは、脱炭素社会への転換を明確に打ち出したことである。

この課題もずっと以前から指摘されてきたものの、歴代政権は小手先の対策でお茶を濁しやり過ごしてきた。

エネルギー政策を担う経産省の前にグリーン行政を推進する環境省はまったく無力だった。

しかし、菅総理が「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」を打ち出すと、経済界でも一気に脱炭素ブームが起きている。

菅さんの決断は、世界の趨勢に日本企業が乗り遅れるのを防いだとも言えるだろう。

国際会議で笑い者にされた小泉環境相が菅総理に強く働きかけたのかもしれないが、私は菅さんが持っているある種の「常識」、あるいは「専門家の話を聞いて大局的に理解する能力」がこれまでの総理より高いからだと思っている。

目先の選挙や自分の任期にとらわれず、今後数十年を見据えて必要な変革を自分の内閣で始める、そうした菅総理の並々ならぬ決意を感じるのだ。

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公明党だけでなく、自民党内にも強硬な反対論者がいる。

自民党議員も地元に帰れば、集まってくる支援者は高齢者ばかり、高齢者の医療負担を上げる話が歓迎されるはずがない。

しかし今のところ自民党内から強い反対が表面化していないのは、菅総理の強い決意が党内に伝わっているからだと見ている。

それでも支持率が下がってくると、自民党内から足を引っ張る動きが必ず出てくる。

来年には衆院の解散総選挙があるのだ。

憲法改正をやりたかった安倍さんと違い、菅さんには強烈なイデオロギーは感じない。

極めて実務型だ。

批判される「GO TO キャンペーン」に関しても、その恩恵を受ける地方や中小の飲食店ではコロナでもっと多くの倒産が出ていてもおかしくなかった。

単にお金をばら撒くのではなく、経済を回すことで倒産を防ぎ失業者をなるべく出さない努力をする、そういった菅さんの信念があるから、掻き入れ時の年末年始にどうしてもキャンペーンを止めたくなかったのだろう。

私は満員電車を放置して「GO TO トラベル」を止めても感染者の増加数はさほど変わらないと思っているが、これだけ医療関係者もメディアも、さらには世論も反対なのだからここは一旦中断し、感染が下火になってから再開する方が菅さんにとっても得策だとは思う。

しかし、「GO TO」にかける菅さんの信念はそう簡単に揺らぎそうにない

コロナと医療に関しては、私は今の風潮とはちょっと違う疑問を抱いている。

欧米諸国に比べると10分の1しか感染者が出ていないのになぜ日本では医療崩壊の危機だと騒いでいるのか、厚労省や医療界の備えにも大いに問題があると私は考える。

現場の最前線で頑張っている医師や看護師の皆さんにはただただ頭が下がるばかりだが、冬になると大規模な感染拡大が起きると分かっていてこの程度でパンクしてしまう医療界や保健所のシステム全体の問題である。

長くなるのでこの話はまた別の日に書こうと思うが、メディアには情緒的に医療現場の窮状を伝えるだけではなく、この半年間、厚労省や医師会が医療体制拡充のためのどんな準備をしてきたのかを検証し伝えてもらいたい。

私が現役なら、外国の状況も含めてその点を取材しただろう。

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菅総理は強面である。

喋り方もぶっきらぼうで愛想がない。

説明も同じことの繰り返しで、はっきり言って口下手だ。

しかし、菅さんが進めようとしている日本社会の大転換は、デジタル化を含め概ね正しい方向を向いていると私は考える。

むしろ手をつけるのが遅すぎたのだ。

今やらねば手遅れになる。

これがもう少し軌道に乗るまで、菅さんに時間をあげたい。

菅義偉の政治を、私はもっと見てみたいと思っている。

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