<吉祥寺残日録>年末恒例!10大ニュース2022 #221230

今年も余すところ2日。

私にとって2022年は、初めて農業とちゃんと向き合った平穏な一年であった。

しかし、世界に目を向けると大きな時代の変わり目に差し掛かっているように見える。

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去年の年末、私はこんなことをブログに記していた。

来年は、台湾をめぐる情勢がいよいよ気にかかる一年になるだろう。

中国の政策が変わらない限り、不測の事態が起きるリスクは確実に増している。

さらに、首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山の噴火。

予想されるような大災害が起きれば、コロナなんかの比ではない破壊的な影響が私たちの生活に及ぶことになる。

ウイルスよりも怖いものはいくらでもあるのだ。

中でも一番怖いのは、人間。

だから、私たちの心の中に眠る「悪」を呼び起こさないよう一人一人が気をつける。

それしか、平和な当たり前の暮らしを守る方法はないということを深く心に刻んで新たな年を迎えたいと思う。

引用:吉祥寺@ブログ

とりあえず、台湾有事も大規模な災害も発生しなかったものの、予想もしなかったプーチンの狂気が世界の風景を一変させた。

一番怖いのは、人間。

そんな現実を改めて見せつけられた一年でもあった。

このブログを始めて7年目、今年も年末恒例となっている読売新聞が発表する「読者が選ぶ10大ニュース」をチェックしておこう。

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まずは、国内の10大ニュースから。

【1位】安倍元首相撃たれ死亡

【2位】W杯日本代表16強

【3位】知床観光船 沈没事故

【4位】大谷 2桁勝利2桁本塁打

【5位】村上 56本塁打・三冠王

【6位】円安1ドル150円突破

【7位】北京五輪 冬季最多メダル

【8位】旧統一教会 政治問題化

【9位】藤井竜王 最年少五冠

【10位】コロナ感染 1日10万人

日本国内に限れば、今年は何と言っても、安倍さんだろう。

総理を辞めてもその影響力は圧倒的で、最大派閥を率いて岸田政権を陰で操る政界のゴッドファーザーがあっけなく銃弾に倒れた。

その影響は計り知れず、安倍さんがいたら闇に葬られたであろう統一教会問題や東京五輪汚職に社会の関心が集まり、岸田総理の安倍離れも一気に進んだ。

北京五輪とカタールW杯、大谷翔平に興奮したスポーツの1年でもあった。

さらに、11位から30位も見ておこう。

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11位 物価高騰、商品値上げ相次ぐ

12位 改正民法施行、成人年齢18歳に

13位 五輪汚職、組織委元理事ら逮捕

14位 3歳女児、通園バスに取り残され死亡

15位 ロッテ・佐々木朗希が完全試合

16位 北ミサイル発射相次ぐ

17位 山口・阿武町が4630万円誤給付

18位 夏の甲子園で仙台育英優勝、東北勢初

19位 アントニオ猪木さん死去

20位 宮城・福島で震度6強、新幹線脱線

21位 オリックス26年ぶり日本一

22位 作家・元都知事の石原慎太郎さん死去

23位 沖縄本土復帰50年

24位 大学入学共通テスト、問題流出

25位 辞任ドミノ、閣僚更迭相次ぐ

26位 羽生結弦、プロ転向を表明

27位 iPS細胞で慶大が世界初の脊髄治療

28位 KDDI、全国で通信障害

29位 「ドライブ・マイ・カー」が米アカデミー賞

30位 北京パラ、日本勢メダル7個

連日テレビを賑わせている物価高が11位というのは案外低いと感じた。

私としては、ずっとデフレデフレと騒いでいたのに、いざ物価が上がり始めると今度はあれが上がったこれが上がったと大騒ぎしているマスコミの不見識に呆れるばかりだが、一般の人々の方が冷静に状況を受け止めているということなのだろう。

今月に入って俄に浮上した防衛政策の大転換がランキングに入っていないのは、読売新聞の意思が何か働いているのだろうかと邪推してしまう。

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続いては海外の10大ニュース。

【1位】露、ウクライナ侵略

【2位】エリザベス女王死去

【3位】韓国雑踏事故158人死亡

【4位】カタール W杯開催

【5位】世界コロナ 感染6億人

【6位】原油急騰100ドル突破

【7位】習氏3期目

【8位】マスク氏、ツイッター買収

【9位】世界人口80億人

【10位】上海都市封鎖

こちらも、ダントツの1位がロシアによるウクライナへの軍事侵攻である。

曲がりなりにも冷戦終結後、平和が続き、自由と民主主義が拡大していくように見えたヨーロッパが一気に戦争の恐怖に包まれた。

NATOの存在意義がこれまでになく見直され、各国が一斉に軍事費の増強に舵を切った。

エネルギーや食糧の経済安全保障という課題が大きくクローズアップされて、グローバル化へと邁進していた世界が一気に逆回転を始めている。

2022年は、グローバリズムの終焉として歴史に刻まれることになるだろう。

11位から30位は次のようになった。

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11位 北欧2か国、NATOに加盟申請

12位 WHO、サル痘感染で緊急事態宣言

13位 元ソ連大統領のゴルバチョフ氏死去

14位 ウクライナ人権団体などにノーベル平和賞

15位 尹錫悦・韓国大統領就任

16位 ジャッジがア・リーグ新の62号本塁打

17位 ペロシ米下院議長が台湾訪問

18位 米FRB、ゼロ金利政策を解除

19位 米中間選挙、野党・共和党が下院勝利

20位 トランプ氏、次期米大統領選出馬へ

21位 トンガで大規模噴火

22位 米国で銃乱射事件相次ぐ

23位 スナク英首相就任、首相交代相次ぐ

24位 核兵器禁止条約、初の締約国会議

25位 米最高裁「中絶権利」認めず

26位 中国で旅客機墜落、132人死亡

27位 中国の江沢民元共産党総書記死去

28位 イランで大規模な反政府抗議デモ

29位 露大統領、サハリン2の資産移譲を命じる

30位 米英仏中露「核戦争せず」

今年世界各地で起きた出来事は、多かれ少なかれウクライナでの戦争の影響を受けている。

そうした中で、注目せざるを得ないのはやはり中国とアメリカの政治状況だ。

中国では習近平氏が異例の三選を果たし、毛沢東に並ぶ独裁者への道を歩み始めた。

アメリカでは厳しい分断の中で、与党民主党が辛うじて惨敗を免れ、トランプ旋風が勢いを失いつつある。

お隣の韓国では保守の尹錫悦政権が誕生し、日韓関係にもようやく改善の動きが見られ始めた。

世界はますます、欧米を中心とした民主主義陣営と中国・ロシアを中心とした専制国家とのパワーゲームの様相を呈し、東南アジア、中東、アフリカ、中南米、南太平洋をそれぞれが奪い合う構図が鮮明になっている。

こうした中で日本も、NATOとの本格的な連携に一段と近づき、中国、ロシア、北朝鮮という専制国家と対峙する前線基地のような位置付けを自らに課そうとしているように見える。

しかし、国民の意識は全く追いついておらず、いざ何か不測の事態が起きた時、日本中が大混乱に陥ることは間違いないだろう。

国民の関心は低いものの、FRBのゼロ金利解除とそれに伴う世界的な利上げの動きは来年の世界経済に大きな影響を与えるに違いない。

コロナ禍での異常なまでの金融緩和によって世界のあちこちに歪みが生まれている。

新興国の隅々まで行き渡ったマネーは今後急速に萎んでいくのだ。

その時何が起きるのだろう。

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それでは恒例により、私が独断と偏見で選ぶ2022年の10大ニュースを発表するとしよう。

【1位】ロシアによるウクライナへの軍事侵攻

戦争というものが、一人のリーダーの決断によっていかに簡単に始まってしまうかということを、ウクライナからの報道が私たちに教えてくれた一年だった。そして一度誤った決断を下してしまうと、誰もそれを止めることができず、悲劇がどんどん拡大していくことも世界中が学んだ。こうして一つの国家が破壊されていく過程は、アフガニスタンでもシリアでも目撃してきたつもりだが、ウクライナがヨーロッパであり、民主的な国家であり、白人の国であったことにより、この戦争のニュースはメディアから消えることなく今も伝えられ続けている。それによって、これまで世界が目を背けてきたいろんな問題が、否応なく私たちに考えることを要求する。どうすれば戦争を止めることができるのか。私たちに何ができるのか。もし私たちの国がウクライナのような侵略にあった時、私たちはウクライナの人々のように勇敢に立ち向かえるだろうか。同時に、冷戦終結後忘れ去られていた核戦争についても考えさせられた。「悪者」であるロシアが強大な核保有国であることが事態を一層複雑にしている。アメリカは当初から核戦争に発展しないことを最優先に考え、ベトナムやイラクのように自らが前面に立っての作戦行動には及び腰だった。NATOも直接戦争に関与しないよう加盟国と非加盟国との間に厳密に線引きを行った。もしもウクライナがNATOに加盟していたら、ロシアは手を出しただろうか。もしこれがウクライナではなくバルト三国だったらNATOはどうしただろうか。さまざまな「if」が頭の中を駆け巡る。そしてウクライナの教訓として、多くの日本人が自国の安全保障という問題に初めて向き合った。いざとなったら自分たちで国を守るしかない。そうした厳しい現実を、ウクライナは私たちに今も教えてくれている。ロシアは深刻な兵器不足に陥っているといった私たちが耳にするニュースには、多くの場合、西側の希望的観測が含まれていると考えておかなければならない。よほどのサプライズがない限り、戦争は数年は続くだろう。

【2位】安倍元総理銃撃事件とその余波

日本に限って言えば、選挙運動中の安倍元総理が白昼堂々暗殺された事件は衝撃的だった。戦前の日本で民主主義をぶち壊した一連のテロを想起させたが、その後事実が明らかになるに従って、犯人である山上容疑者に対して同情する気持ちが強くなった。「いかなる理由があろうともテロは許されない」という常套句はもちろん正しいのだが、必ずしも絶対ではない。たとえばレジスタンス。圧倒的な力を持つ敵に対し、一人の市民にできる抵抗といえばテロしかないことだってある。ナチスに対するレジスタンスは正義で、アメリカに対するテロは本当に悪なのか。そして安倍元総理を狙った山上容疑者は本当に的外れだったのだろうか。安倍さんがいなくなった途端、旧統一教会に対する包囲網が出来上がり、政治と宗教の関係にもスポットライトが当たった。安倍さんが推進した東京オリンピックやアベノミクスに対してもようやく第三者のメスが入ろうとしている。権力が強ければ強いほど、闇も深くなる。安倍さんの呪縛から解き放たれた岸田総理が、ロッキード事件の三木総理のように前政権の犯罪を暴いてくれるいいのだが・・・そうはいかないだろう。

【3位】習近平三選とゼロコロナ政策の歪み

21世紀の世界は、良くも悪くも中国の動向に左右される要素が最も大きいと私は考えている。改革開放を標榜した鄧小平氏に代わり、中国の全権を握った習近平氏はついに異例の三期目入りを果たした。もう二度と権力を手放そうとはしないだろう。習近平さんが目指すのは偉大なる中華帝国の復活。アメリカを抜いて世界一の超大国になることだ。この人のすごいところは、そのためにあらゆる手を同時並行的に打っていることである。鄧小平さんが残した「世界の工場」としての圧倒的な生産能力に加え、14億人の巨大市場を最大限に利用して世界中の企業や生産者が中国から離れられないように「麻薬漬け」状態にしている。その一方で、なりふり構わず軍事力の強化を計り、宇宙開発の分野でも米露と肩を並べるレベルに引き上げた。国内では、地方政府の尻を叩いて都市開発を進め、中国各地に目を見張るような未来都市を短期間で築き上げる一方、徹底した言論統制と監視システムにより政府批判を絶対に許さない近代的な個人崇拝国家を確立した。そんな習近平の中国にかすかな綻びが現れたのがゼロコロナ政策に対する不満だった。若者たちの間で白紙運動が拡大すると、今度は規制を全面的に撤回し一気にポストコロナに舵を切った。来年になれば、中国はコロナのことなど一切口にせず、経済の再生に向け全力を挙げるだろう。しかしこれまでに溜まったさまざまな歪みや国際的な中国包囲網とも戦わなければならない。希望的観測も交えて中国経済の破綻を予言する人も多いが、私は中国はもっとしたたかで都合の悪い情報は全て隠してなんとか危機を切り抜けるのではないかと予想している。

【4位】「防衛費はGDP2%」戦後防衛政策の大転換

後世の歴史家から見ると、安倍前総理よりも岸田総理の方がひょっとすると歴史に名を刻んでいるかもしれない。自民党の中でもハト派と見られていた岸田さんが防衛費のGDP1%のルールを捨て去り、NATOと同じGDPの2%に増額することを発表したのは12月に入ってのことだ。ウクライナでの戦争と台湾をめぐる中国の強硬姿勢が後押しする形で、世論の大きな反発を招くこともないままあっさりと5年間の防衛費拡大方針が決定した。タカ派として警戒され続けた安倍さんの在任中ではなく、岸田さんの時にウクライナ戦争が起こったのは歴史の皮肉と言えるかもしれない。岸田さんは麻生さんから「あなたは有事の総理大臣だ」と言われたことを取材で明かしている。岸田さん本人も巡り合わせとして自らを「有事の総理」とみなしているのかもしれない。確かに防衛力を整備するためには時間と費用がかかる。事態が緊迫してから動いたのでは間に合わないのも事実だ。岸田さんもいろいろ悩んだ末に腹を括ったのだろう。もうその表情に迷いは感じられない。ハト派としてのこだわりは、国民に増税を求める姿勢に現れていると私は感じた。中国・ロシア・北朝鮮と対峙する日本の地政学的な条件を変えられない以上、ウクライナのような危機が迫った時にどのように国土や国民を守るのか、取りうる選択肢は多くはない。最大限、自国の防衛力で抵抗を試みたうえで、同盟国からの支援を求める以外の道は見当たらなかったのだろう。念頭にあるのは、抑止力を高めるという発想に違いない。戦争が起きないためには相手に思いとどまらせるだけの「怖さ」が必要だ。それを「反撃能力」と呼び、敵の領土を攻撃できるミサイルの保有に舵を切った。安倍さんが総理だったら、国債を発行してもっと大規模に防衛力を強化したかもしれない。ナチスの台頭を許したヨーロッパの首脳たちのように、宥和的な姿勢が間違ったメッセージを相手に伝えてしまうこともある。時には軍事的な備えが宥和的な外交よりも戦争の抑止につながるケースもあるのだ。しかし逆に、軍備を増強することが双方の疑心暗鬼を高めて、戦争のリスクを高める可能性もあるだろう。先のことは誰にも分からない。こうしたことは、大勢で議論してもまとまらないので、時のリーダーが自らの決断で進む方向を決めなければならない。大切なことは、国民の多くがその方針に反対した場合にリーダーを変えられる民主的な基盤を維持することだと、戦前の教訓から私は考えている。

【5位】北京五輪、大谷翔平、そしてカタールW杯

読売新聞の10大ニュースでもベスト10にランクインしていた通り、今年はスポーツから多くの感動をもらった1年であった。直近のサッカー・ワールドカップの感動が鮮烈だが、私個人としては北京オリンピックの方が正直盛り上がった気がしている。一番印象に残っているのはスノーボード・ハーフパイプの平野歩夢。「人類史上最高難度のルーティン」というフレーズは今も耳に残って離れない。スキージャンプ団体の高梨沙羅の失格、羽生結弦が挑戦した4回転半、感動のシーンがいくつもあった。そして大谷翔平。この人の存在は、同時代人として傑出している。王さんを超えたヤクルト村上も凄いが、地上波での放送があるかないかで、感動の深さは自ずと違ってくる。やっぱりスポーツはリアルタイムで楽しまないと深い感動は得られないものだ。来年はワールドベースボールクラシックが待っている。日本だけでなく、アメリアも過去最強メンバーが予想されていて、今からその行方が楽しみで仕方がない。

【6位】「ポストコロナ」時代の始まり

世界が新型コロナのパンデミックに襲われて3年目。欧米ではいち早く「ポストコロナ」の日常が定着した。ほとんどの行動規制は撤廃され、マスクをつける人はもはやほとんどいない。その一方で、オンライン会議の定着など、ポストコロナの世界は単にコロナ前に戻るだけではないさまざまな変化が起きている。そんな中、日本ではなかなかコロナからの脱却が進まない。世界一高齢者が多い国だからなのか、もともと慎重な国民性なのか。現在の2類からインフルエンザ並みの5類への引き下げも議論されるが、ちっとも進まないまま一年が終わってしまった。おそらく医師会の中に根強い反対意見があるせいではないかと私は睨んでいる。それでも第8波になっても政府が行動制限を求めないだけ多少はマシになったとも言える。最後まで「ゼロコロナ」にこだわった中国は、今月に入って一気に規制全面解除へと舵を切った。そんな中国の極端な政策に西側では批判が高まっているが、私はある意味スゴい変わり身の速さだと感心して見ている。こんなことは民主主義の国では絶対に不可能だ。たとえ数百万人の死者が出たとしてもその大半は高齢者だろうから、中国がこれから直面する超高齢化問題を考えると決してマイナスばかりではないと考えたのだろう。私の根拠のない予想では、中国は日本よりも上手くコロナ禍から脱すると見ているのだが、果たしてどうなるだろう。

【7位】世界的な利上げと歴史的な円安

FRBが2年間続けてきたゼロ金利政策の見直しを発表したのは、今年の3月のことだった。世界の中央銀行がそれに追随し、ポストコロナに向けた世界的な利上げが急ピッチで進められた。そんな中で唯一頑なにゼロ金利にこだわったのが日銀だった。日米の金利差は一気に拡大し、長らく経験したことがなかった「円安」という事態が日本を襲う。1ドル=110円前後で安定して推移していた円相場はみるみるうちに150円を突破するところまで歴史的な円安が進む。最初のうちは円安は輸出産業にプラスだと悠長に構えていた政府・日銀も徐々に焦り出し、「悪い円安」という言葉がメディアを賑わせた。世界でも突出した借金大国である日本の通貨がこれまでどうして強かったのか正直私には理解できなかったので、今年進んだ円安の動きは日本の国力が反映されたように見え、世間の大騒ぎをよそにとても冷静に見守ることができた。コロナ禍の3年間で政府は国民に現金をばら撒くなど大盤振る舞いを続け、国債の発行総額も目に見えて膨らんでしまった。私には、この円安は借金漬けの状態に慣れ切った政府と国民に対する警鐘だと感じられたのだが、どうもそうした論調はほとんど広がらず、国民もメディアも政府に対して物価を安定させるためにさらなる財政出動を求める声の方が大きかった気がする。来年、世界経済が減速し始めた時、私たちの暮らしにどのような影響が出るのか。コロナバブルの崩壊に備える心構えをしておいた方がよさそうである。

【8位】エネルギーと食糧の危機と経済安全保障

ウクライナでの戦争をきっかけにエネルギーと食糧に注目が注がれた一年だった。アメリカが主導したロシアによる経済制裁として、西側諸国はロシア産原油の輸入禁止に踏み切った。ドイツなどロシアにエネルギーを依存していたヨーロッパの国々は大変な試練に直面したが、経済的なダメージを被ることを承知でロシア依存を断ち切ろうとしている。脱原発に舵を切っていたドイツはやむをえず石炭火力の利用を再開し天然ガスの調達にも乗り出した。多くの国がエネルギー政策を転換する中で、日本政府も大きな決断を下す。東日本大震災後の基本方針だった脱原発を完全に見直し、次世代型原発の開発も打ち出した。資源のない日本にとって、安全な原子力利用を模索することは避けて通れない道だと私は思っているが、問題となるのは核のゴミをどうするのかであろう。北海道で2つの自治体が名乗りを挙げたが、日本人に染み付いた核アレルギーを払拭するのは容易ではない。エネルギー問題で難しいのは、鍵を握る重要な資源が非民主主義国に偏在していることだ。中国は地球を俯瞰しながら、資源が眠るアフリカ諸国などに確実に利権を確保している。これに比べて日本の動きは鈍く、今後世界のブロック化がますます強まると厳しい状況に追い込まれることになるだろう。食糧についても同様で、地産地消、デフレ対策として世界中から安い食材を買い漁ることをやめ、日本で採れた食材を適正な価格で輸送コストをかけずに消費するライフスタイルへの転換が求められている。

【9位】アルテミス計画と中国の宇宙ステーション

かつて新大陸を求めてヨーロッパの船乗りたちが世界中に船出したように、今まさに宇宙に向けた「大航海時代」が始まろうとしている。その象徴となるのが、アメリカが主導に日本も参加する「アルテミス計画」だ。アポロ以来となる大型ロケットの開発に苦労して打ち上げがたびたび延期されてきたが、今年11月16日、その手始めとなる無人ロケット「アルテミス1」が打ち上げられ、月の周回軌道を回って12月11日に地球に無事帰還した。2024年には有人でのミッションが予定され、早ければ2025年に月面着陸、その後月面基地の建設が計画されている。一方、中国は猛烈なスピードで宇宙開発を加速していて、今年中国独自の宇宙ステーション「天宮」を完成させた。米ロの友好のシンボルだった国際宇宙ステーションは老朽化しているのに加えロシアが離脱、宇宙空間での実験などで中国が優位な地位を確保した。中国は月面での資源確保にも強い意欲を見せていて、これに対抗してアメリカも宇宙ステーションの運用期間を延長したり月面基地の建設を急ぐだろう。大航海時代を経て植民地獲得競争が加速したように、月を舞台に米中の縄張り争いがいよいよ始まろうとしている。日本人がどんどん内向きになる中で、人類はますます地球外に目を向けようとしているのだ。

【10位】世界を襲う異常気象と進まぬ温暖化対策

地球環境の変化は誰の目にも明らかになってきて、世界各地で今年も大規模な災害が起こった。中でもパキスタンを襲った大洪水は国土の3分の1を水没させたとと伝えられている。氷が溶けた北極海やグリーンランドでは資源をめぐる争いが起きていて、アマゾン河流域で進む乱開発により原住民の間で水俣病のような奇病が流行しているという。こうした地球環境の変化は、農業や漁業を生業とする世界中の人たちの暮らしに影響を与えている。旱魃によって住み慣れた土地を離れ流動化する人が増え、それが新たな移民問題を引き起こしてもいる。しかし国連を中心とした国際会議では実効性のある対策を打ち出せていない。むしろウクライナ戦争に端を発したエネルギー危機によって石炭の需要が高まるなど、地球温暖化対策は今年後退したようにも見える。国内でもレジ袋やプラスチックのストローは姿を消したが、新たな対策が政府から打ち出されることはない。東京都の小池都知事が全ての新築住宅の屋根に太陽光パネルの設置を義務付けたことが今年最大のエポックと言えるだろう。それですら経済に悪影響を与えると批判が多く、まともに温暖化対策に取り組もうという政治家はなかなか現れてこない。要するに、国民の意識が高まらない限り、それに応えようとする政治家も出てこないということなのだ。世界がもっと分断されて、エネルギーでも食糧でも自給自足を迫られるような危機が訪れない限り、日本人の意識は変わらないのかもしれない。人間の愚かさを計算に入れて、変化する環境にどう適応して生きていくかを考える方が現実的なのかもしれないと最近は思うようになった。

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遠く離れた異国の人を想う1年だった。

これまで日本人の私たちにはほとんど関係なかったウクライナの人々の命や生活が、心のどこかにずっと引っかかっている。

ある日突然、平穏な日常を奪われる理不尽さ。

怒りをぶつける相手は手の届かない場所にいて、ただただ耐えるしかない日々。

今も電気や暖房を奪われた厳しい冬を送っている。

ウクライナだけではない。

ミャンマーだって、シリアだって、アフガニスタンだって、香港だって、何も状況が改善することなく悲惨な状況が放置されている。

私たちの想像力が今まさに試されているのだ。

ロシアで戦争反対を叫んだ人たち、中国で白紙を掲げて政府に抗議した若者たち、そしてイランで自由を求めて声を上げた女性たち。

厳しい境遇に置かれた人たちが世界中にいる。

日本国内に目を向けても、コロナや円安で職を離れ犯罪に手を染める外国人技能実習生がいる。

超高齢化社会がはらむ慢性的な人手不足を安価な外国人労働者で埋め合わせようとしながらも移民は認めない日本。

招いてきてもらっている以上、彼らの人権もきっちり守られる制度設計が求められるだろう。

岸田政権は富裕層や高齢者に少しずつ負担してもらい、子育て支援に力を入れようとしている。

それはいいことだと私は考える。

しかし聞こえてくる具体策はどれも小粒で、残念ながら北欧型の福祉社会にはほど通り。

日本もそろそろ、ヨーロッパ並みに若い移民の受け入れを真剣に考えたらどうだろう。

外国人技能実習生として日本社会にうまく溶け込んだ人たちの中から選んで受け入れていけば、大きな軋轢は避けられそうだし、実習生にとっても大きな励みになる。

何より日本人の多様性が増して、内向きになりすぎている日本人の目が少し外に向けられるきっかけにもなるだろう。

私たちは所詮、大陸から流れ着いた先人たちの子孫なのだ。

根拠のない単一民族意識など捨てて、もっと寛容で懐の深い日本人が育っていけばいいと願う。

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さて、来年はどんな年になるのだろう?

コロナは徐々に忘れられていき、海外からまた多くの人がやってくるようになるだろう。

それによって日本は少し潤うかもしれない。

でも一方で、世界経済の減速が顕著になり輸出企業を中心に日本経済にもその影響が及ぶだろう。

そうなれば、岸田政権が目指す「賃上げと値上げの好循環」の実現も難しくなる。

長年にわたって染み付いたデフレマインドはそう容易には消え去らないので、また再びデフレに戻っていくのかもしれない。

来年4月には日銀の黒田総裁も交代する。

溜め込んだ国債や日本株をどのように処理していくのか、次の日銀総裁には厳しい役回りが待っている。

日銀が無制限に買い入れることによって辛うじて維持してきた国債の格付けが下がり、その価値が暴落する事態もあるかもしれない。

コロナ禍で膨らんだ世界の株価がこのまま持ち堪えられるのかも甚だ心もとない。

2年目を迎えるウクライナ戦争はそう簡単には終わらないと思われるので、エネルギーや食糧の価格は高止まりして、争奪戦に敗れた新興国では社会不安が広がる可能性が高いだろう。

それが南米なのか、アフリカなのかはわからない。

どこかの国で発火した炎がSNSを通じて拡散し、世界各地で同時多発的に政治危機に発展するかもしれない。

西側諸国にはそれを救う力は残っておらず、中国の影響力がそうしたエリアでますます拡大する可能性もある。

その中国の経済状況も目が離せないところだ。

国家が所有する土地を貸し出すことで資金を得る錬金術で地方政府主導で行われてきた都市開発も地価の下落によって曲がり角を迎えているらしい。

右肩上がりで高騰を続けていたから不動産に投資する中国人も多かったが、損するとなれば誰も手を出さなくなる。

中国バブルがいつ弾けてもおかしくはないのだ。

したたかな中国政府は、あの手この手で政府の責任を回避して危機をマネージメントするだろうが、もし万一中国経済が大混乱に陥った場合、日本経済はもちろん世界経済にも計り知れない影響を及ぼし、世界大不況を招きかねない。

そして危機になれば、愛国心を鼓舞して国民の目を外にそらそうというするのが常套手段だ。

台湾をはじめ、アメリカや日本との対立がエスカレートするだろう。

そんなことにならないように、来年は何より経済の舵取りが重要だと私は思う。

ポストコロナの世界的な経済危機。

その引き金を日本がひかないよう、黒田さんの後任となる日銀総裁の手腕に注目しようと思っている。

<吉祥寺残日録>年末恒例!10大ニュース2021 #211229

年末恒例!10大ニュース

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