<吉祥寺残日録>好スタートを切った菅内閣とジャパンライフの罠 #200918

菅内閣がまずは上々のスタートを切ったようだ。

各新聞社が行った世論調査によれば、毎日新聞が64%、朝日新聞が65%、日本経済新聞はなんと74%といずれも高い内閣支持率を記録した。

まだ発足したばかりで何も仕事をしていない段階での数字なのであくまで期待値に過ぎないが、安倍総理とは明らかに違う無骨だが率直な菅新総理の言動が国民に好意的に受け止められたということだろう。

日経新聞の74%というのは、政権発足時の支持率としては安倍政権を上回り、小泉政権、鳩山政権に次ぐ歴代3位の高い数字だという。

そして支持する理由の1位が「人柄が信頼できる」だったことも、安倍政権との大きな違いである。

安倍政権の場合には、支持する理由の1位は常に「ほかの内閣より良さそうだから」であり、指示しない理由の1位が「人柄が信用できない」だった。

「国民が受ける印象というのは、私とあまり変わらないものだなあ」とこの調査結果を見ながら感じた次第だ。

美辞麗句で飾り立て、口先でごまかそうとしている印象の強かった安倍前総理と比較して、口下手な菅新総理の方が信頼できそうだと多くの人が感じたのだろう。

世襲ではない叩き上げストーリーも今どき新鮮で、庶民受けしたのかもしれない。

でも、菅政権の本当の評価はもちろんこれからである。

菅政権は、「国民のために働く内閣」と自称し、超実務型の布陣を敷いた。

その最大の特徴は、前例のないスピードである。

就任会見で菅さんが明らかにした「縦割り110番を設置する」というアイデア。

行革担当の河野大臣に指示した翌日にはもう形になって現れた。

多くのフォロアーを持つ河野さんらしく、自身のホームページ上に「行政改革目安箱(縦割り110番)」という名前で、行政の課題を書き込めるデジタル投書箱のような仕組みを立ち上げた。

すると、開設からわずか数時間で大量の意見が寄せられたらしく、意見の整理をするために一時受付を中止せざるを得ない事態となったという。

どれだけ身のある意見が寄せられたのかは不明だが、河野さんの支持者だけでも瞬時に多くの国民の意見が寄せられるデジタルの力をまざまざと見せつけた初仕事だった。

「この内閣、これまでの政府と違いそうだ」

そうした印象を多くの国民に与える格好の材料となっただろう。

そんな上々のスタートを切った菅政権に、さっそく難題が降りかかって来た。

マルチ商法の草分け的な存在として長い間、問題視されながらこれまで摘発を免れて来た「ジャパンライフ」に警視庁の捜査のメスが入ったのだ。

山口隆祥元会長ら14人が詐欺の疑いで逮捕され、被害総額は2000億円に達する見込みだという。

「ジャパンライフ」はすでに破綻しているが、どんな会社だったのかNHKの記事を引用しておく。

「ジャパンライフ」は1975年に設立された健康器具販売会社で、高い配当金をうたって多額の資金を集めるいわゆる「オーナー商法」を行い、経営破綻する直前には全国に80の店舗を展開していました。

具体的には、ベストやネックレスに磁石を埋め込んだものを「磁気治療器」と名付け、そのオーナーになれば元本が保証される上、レンタル収入によって年に6%の配当金を得られるとして、高齢者を中心に全国から出資を募っていました。

その後、違法な訪問販売や多額の負債があることを隠して顧客と契約を結んでいたことなどが次々と明らかになり、消費者庁が4回にわたって業務の一部停止命令を出しましたが、そのたびに契約の名目を変えて規制をすり抜け、営業を続けてきました。

しかし、3年前の2017年12月、資金繰りに行き詰まって銀行取引が停止。

東京地方裁判所はおととし、ジャパンライフの破産手続きを開始する決定を行い、現在、破産管財人の弁護士が会社の資産の調査などを進めています。

出典:NHK

私個人の意見としては、この手の詐欺にひっかかる被害者にも責任はあると思っているが、ジャパンライフ問題の核心は、こんな曰く付きの会社がこれまでなぜ摘発されなかったかという点なのだ。

取り沙汰されているのは、政界や規制当局との怪しい関係である。

たとえば、こんな話が知られている。

豊田商事同様にマルチ商法被害が社会問題となって1985年12月10日、衆議院商工委員会でジャパンライフ問題の集中審議が行われた。この少し前には山口隆祥社長が法人税法違反で告発された(1983年)ことから社長を退き、後任の社長として、警察官僚で京都府警察本部長や中部管区警察局長を歴任し、ネズミ講を取り締まる警察庁生活安全局保安課長を務めたことがある相川孝を迎えている。この人事には警察対策なのではとの見方が囁かれていた。

出典:ウィキペディア

ジャパンライフは経産省の所管だが、元特許庁長官らの天下り先としても知られていた。

さらには、ジャパンライフに対して4回もの行政命令を出した監督官庁の消費者庁との関係も不明朗だ。

消費者庁取引対策課課長補佐兼消費者取引対策官が、定年退職するに当たって経営者との面会を要求するなど自身の天下りを受け入れるよう要求、2015年7月に同社に顧問として再就職した。

出典:ウィキペディア

そして、記憶に新しいところでは、安倍総理主催の「桜を見る会」をめぐる疑惑も国会で問題となったばかりだ。

被害者側の弁護団などによりますと、「ジャパンライフ」は2015年に当時の山口隆祥会長に届いた「桜を見る会」の招待状が印刷された資料をセミナーなどで示し、顧客を勧誘していたということです。

この資料には「内閣総理大臣から山口会長に『桜を見る会』のご招待状が届きました」などと書かれ、当時の安倍総理大臣の顔写真や山口会長宛ての招待状、それに受付票の写真が印刷されています。

この招待状をめぐっては、受付票の番号から当時、安倍総理大臣が招待した疑いがあるとして、野党側が国会で追及しました。

出典:NHK

ジャパンライフと政界との太いパイプは、中曽根元総理や阿部前総理の父・安倍晋太郎元幹事長らに遡り、騙し取った多額の資金が政界工作に使われたと言われている。

そうした疑惑は最近まで続いていて、菅政権の司令塔となる加藤官房長官の名前も取り沙汰された。

業務停止処分直後の2017年1月13日、会長の山口が働き方改革担当特命大臣の加藤勝信と会食、のちチラシに「ジャパンライフのビジネスモデルは、一億総活躍社会を先取りしています!」との加藤のコメントが掲載され、また主要閣僚含む安倍政権の政治家への「お中元リスト」の存在が国会で議論されたり・・・

出典:ウィキペディア

菅さんとの直接の関係は特に問題となったことはないと思うが、野党側はさっそく、「桜を見る会」に関する疑惑の再調査を求めて攻勢をかける姿勢で、当然安倍さんや加藤さんの問題だけでなく、政官界との長年の癒着にスポットライトが当たることは間違いない。

官房長官時代、一貫して安倍さんを守り抜いた菅総理がこの問題でどのような対応を取るのか?

安倍総理辞任のタイミングを見計って勝負に出たように見える警視庁の捜査がどこまで及ぶのか?

菅新政権にとっては頭の痛い問題だろうが、対応を間違えると国民の信頼を一気に失い、支持率が急落する可能性を秘めたとてもデリケートな難題である。

菅さんが本当にやりたいコロナ対策や携帯料金の引き下げを実行するためにも、7年8ヶ月続いた安倍政権の負の遺産にも誠実に向き合っていくことを期待したい。

まずは、警視庁の捜査を妨害しないこと。

「人柄が信頼できる」菅総理が、自らの良心に従って行動することができれば、国民の信頼は揺るぎないものになることは間違いない。

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