録画していた映画「鉄道員」を観た。
昔一度観た映画だが、すっかり内容を忘れていた。

自分の仕事を愛し、自らの職責をまっとうした男。
その夫を明るく支えながら、心ならずも病によって先立つ妻。
北海道の厳しい自然の中で、愚直にいきた人生の最後に奇跡が訪れる。
素敵なファンタジーだ。
高倉健演じる無骨な主人公のように、自分のやるべきことを真面目に取り組んでいる人たちが報われる社会であってほしいと心から願わずにはいられない。

予想されたこととはいえ、政府は今月末までの緊急事態宣言延長の方針を決めた。
そのためテレビでも新型コロナ関連のニュースが大きく扱われる中、昨日は見過ごしてはならない重要なニュースが2つあった。
一つは、憲法改正をめぐる国民投票法改正案について与野党が合意し今国会での成立が確実になったこと。
そして、もう一つは久々の森友問題。
公文書改竄に関わって自殺した近畿財務局の赤木俊郎さんが書き残した通称「赤木ファイル」の存在を国が初めて認め、開示を約束したことである。

まずは、国民投票法の改正について。
この法案は、自民・公明・維新が3年前に提出したもので、その内容に特段大きな問題があるわけではない。
しかし、憲法改正に反対する野党が広告規制を理由にずっと審議を拒否してきた。
改憲を阻止するため憲法論議には一切応じないというのが戦後一貫した野党側の姿勢だった。
ところが、ここにきて与党側が立憲民主党が求める修正を丸呑みする形で一気に動き出すこととなった。
自民党としては、内容はともかく1日も早く憲法改正の実質論議に入りたいということだろう。
野党側からすると、憲法改正に賛成する世論が増える中で、手続論でゴネている印象を与えるのは得策ではないとの判断が働き、大きな一歩を踏み出すこととなった。
しかし重要なのは、ここからである。
立憲民主党は法案成立後も、広告規制の問題について優先的に審議することを求め、直ちに憲法論議に入りたくない姿勢だ。
ただ私としては、ここまで来たら正面から正々堂々と憲法を議論してほしいと期待する。
私は、平和憲法の根幹をなす憲法前文や9条1項はそのまま残すべきとの立場だ。
そのうえで自衛隊を明記することには反対しない。
むしろ、現在の憲法が十分に対応できていない新たな問題について、この機会にきちんと国民的な議論を行い憲法にしっかりと反映させてもらいたいと思っている。

たとえば天皇制の問題。
論議となっている女性・女系天皇の問題について、この機会にしっかりと答えを出して憲法に明記することが望ましい。
コロナ禍で必要性が顕著となった緊急事態への対応についても、しっかりとした国民的議論が必要だろう。
「緊急事態」の定義を可能な限り限定し明確化したうえで憲法上に書き込むことにより、時の政権の恣意的な運用を絶対に防がねばならない。
インターネットに関する様々な課題も、現行の憲法ではまったく想定されていない重要な問題だ。
そして何より、憲法とは本来、権力を縛るための法律である。
その意味で、公文書が平気で改竄され、政府にとって都合の悪い資料はないものにしてしまうような「安倍的なる政治」を許さないためにも、政策決定のプロセスを記録し情報公開を義務化するような項目もきちんと明記してもらわなければならない。
メディアにはぜひ、北欧など世界各国の優れた憲法について取材し、国民にたくさんの選択肢を示してほしい。

公文書の改竄といえば、奇しくも昨日、森友問題での文書改竄に関与し自殺した赤木さんの奥さんのもとに、国からFAXが届き、裁判で開示を求めていた通称「赤木ファイル」の存在を国が初めて認めた。
さらに裁判所の求めに応じて、6月23日に予定される第4回公判の場に「赤木ファイル」を提出すると伝えてきたのだ。
果たして、提出される「赤木ファイル」にどの程度マスキングがされるかが次の焦点となる。
一連の問題では、真っ黒く塗られた公文書を何度目にしたことか・・・。
亡くなった赤木さんがまとめたこのファイルには、改竄に至る経緯が克明に記録されていると言われている。
問題の構図は明確で、当時の安倍総理夫妻を守るために、財務省の佐川理財局長が中心となって近畿財務局に文書の改竄を指示したことはほぼ間違いない。
だが、安倍夫妻はもちろん、佐川元局長も罪に問われないまま検察は関係者全員の不起訴を決めた。
この事件は「安倍一強政治」の歪みの象徴であり、こんな政治がまかり通っている状態で憲法を改正することなどありえない。
憲法改正も公文書改竄も、その黒幕は安部前総理である。
近ごろ体調が良くなってきたのか、安部さんは再び活動を活発化させてきた。
そうするとすぐに、「安部待望論」なるものが永田町から聞かれるようになり、それをメディアも無分別に取り上げる。
やっと気持ちの悪い「安部応援団」たちの姿を見なくなりせいせいしていたのに、安部再登板など悪い冗談でしかない。
しかし以前このブログでも書いたように、安部さんの復活は十分にあり得るだけに厄介だ。
安部さんが再登板を望むのであれば、きっちりと森友・加計問題で真相を明らかにし、自らも責任をとってもらいたい。
すべてはまず、そこからである。