<吉祥寺残日録>原発処理水、慶応高校、そして大谷翔平!中央アジア旅行中に日本を騒がせた出来事 #230830

昨日、10日間の中央アジア旅行から無事に帰ってきた。

中央アジアの乾燥した暑さに体が慣れていたせいで、山手線日暮里駅のホームに立った時、もわっとする熱気に襲われて、内陸の国と海に囲まれた日本との違いを改めて感じた。

今年の夏、東京での猛暑日の記録を現在更新中だという。

10日間とはいえ、それから逃れられたことを感謝しなければならないだろう。

私が日本を離れている間に起きた大きなニュースといえば、まず福島第一原発に溜まった処理水の海洋放出が始まったことだろう。

私が旅立った翌21日、岸田総理は海洋放出を決断した理由を次のように発言した。

福島の生活となりわいを取り戻し、復興を遂げるために絶対に先送りできない課題が福島第1原発の事故炉の着実な廃炉だ。世界にも例のない事故炉の廃炉を数十年かけて着実に実施する。

リスクを最小にするため安全性を極限まで追求した廃棄物処理を行う。溶融燃料(デブリ)の取り出しと保管のため、様々な技術開発、教育訓練、そうした廃炉プロセスの前提となるステップが今回の処理水の海洋放出だ。

なぜ処理水の放出が廃炉のために不可欠か。事故炉のプールには今なお1000の使用済み核燃料がある。これらを事故炉の建屋から安全なところに移さなければならない。そのためのスペースをどこにつくるのか。

燃料棒の残骸を取り出し、保管するためのスペースをどこにつくるのか。さらにはデブリ取り出しのために様々な技術開発と機器操作のための教育訓練スペースが必要になる。

現在でも毎日、事故炉に流れ込む100トンの地下水や雨水を処理しタンクにためている。今や1000基以上のタンクが林立している。廃炉プロセスを着実に進めるために必要なスペースをつくる余地がなくなっている。

こうした状況を打開するため、廃炉の前提となる処理水の処分を避けて通ることはできない。6年以上にわたる専門家による検討を踏まえ、2021年4月に安全性の確保と風評対策の徹底を前提に、2年後をめどに海洋放出するとの基本方針を決定した。

23年1月は放出時期について春から夏ごろを見込むとの方針を示した。7月には国際原子力機関(IAEA)の包括報告書が公表された。IAEAは放出中、放出後についても、継続的にレビューを実施する予定だ。日本政府としてしっかり対応していく。

引用:日本経済新聞

要するに、本格的な廃炉作業を行うスペースを確保するため、というのが処理水の海洋放出を行う理由ということだ。

そして、政府は22日正式に放出を決定し、それを受けて東京電力は24日午後1時から放出を開始した。

初回は17日間かけて7800トンを流す。

改めて海洋放出の方法を見ておくと、1トンの処理水を1200トンの海水で希釈し、海中トンネルを通して原発の約1キロメートル沖合から放出するという。

私はもともと、とめどない水は海に捨てるしかないと考えていたのので、今回の決定は遅すぎるぐらいだと思っている。

IAEAの調査をしっかりと受け入れてそのお墨付きを得たのだから、今の世界でこれ以上の保証はないと言えるだろう。

漁業者や反原発の考えを持つ人からの反対は当然だが、史上最悪クラスの原発事故を起こした以上、政治の責任で正面から逃げずに必要な対策を積み上げていくしか方法はないのだ。

その意味では、菅総理時代の決断を岸田総理がうやむやにすることなく批判を浴びながらも実行に移したことを私は評価したいと思う。

ところが、岸田さんにとっても想定外だったのは中国の対抗策だった。

一貫して処理水の海洋放出に反対し、国内世論を形成してきた中国は、今回の決定を受けて日本産の水産物の全面輸入禁止に踏み切ったのだ。

理由は、中国の消費者保護や輸入食品の安全確保。

もちろん過剰反応なのだが、それは中国の主権の問題なので、日本側がとやかくは言えない。

むしろ日本ができることは静観することで、輸出ができなくて被害を受ける漁業者や輸出業者の損害を政府が保証することだろう。

さらに、日本の公共施設などに中国からの嫌がらせ電話が殺到しているという。

これが中国政府が絡んだ動きなのか、中国国内の報道を受けて義憤に駆られた市民による行動なのかはわからない。

でもちょっと嫌なニュースだ。

当然日本側にもその反発が出て、在日中国大使館に抗議電話が殺到したり、自民党の部会でBPOへの提訴という強硬策が語られたり、両国関係の新たな火種となってきた。

中国との貿易で経済的な利益を得ている日本企業はどんな業種であれ、こうした突発的な禁輸のリスクは考えておかなければならない。

そういう意味では、中国への依存を徐々に下げていくしか対処方法はないのだと私は思う。

中国は、香港、マカオや南太平洋のソロモン諸島なども巻き込んで日本包囲網を作ろうとしているが、欧米に加え韓国も放出に理解を示す立場に転じたのが非常に大きく、国際的な批判はそれほど大きくはならないだろう。

日本の国民やメディアにも長い目で見守る冷静さが求められる。

とにかく日中関係がこれ以上悪化することなく、処理水の処理が順調に進むことを願うばかりだ。

ウクライナへの軍事侵攻で名を挙げたロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者プリゴジン氏が死亡したのは23日のことだった。

モスクワ北西のトベリ州内で小型機が墜落し、乗っていたプリゴジン氏を含む10人全員が死亡した。

当然、瞬間的に「やっぱりやられたか」と思った。

プーチンを裏切った者たちに共通する最後である。

29日にはサンクトペテルブルク郊外でひっそりと葬儀も行われたというが、ロシア国内では今もプリゴジン氏の死をいたみ花などを供える動きが続いているという。

プリゴジンの反乱を乗り切ったプーチン大統領だが、果たしてどのくらいのボディーブローを受けているのか、それはこれからの注目ポイントである。

私の留守中、大きなニュースとなったといえば、夏の高校野球で神奈川代表の慶応高校が107年ぶりの優勝を飾ったことも挙げられるだろう。

決勝の相手は昨年の覇者、宮城の仙台育英高校。

2連覇がかかった注目の試合となった。

私もキルギスでのミニバス移動中、この試合経過をリアルタイムでウォッチしていた。

試合は慶応が先制し仙台育英が追いかける展開で4回まで3−2の接戦だったが、5回表慶応が一挙5点をあげそのまま逃げ切った。

私は実際に見ていないが、甲子園スタンドでの慶応高校の応援が凄かったらしい。

慶応OBが盛り上がって六大学で鍛えた応援魂が炸裂したのだろう。

しかし私のとって一番のビッグニュースだったのは、大谷翔平である。

23日に行われたレッズとのダブルヘッダー第1試合、投打二刀流で先発した大谷は1回に44号2ランを放った直後、「腕の疲労」を理由に2回途中無失点で降板したのだ。

この日会見したミナシアン・ゼネラルマネジャーは「残り試合はもう投げない」と明言。

投手大谷の今シーズンは10勝5敗、防御率3.14で突然終わってしまった。

大谷のケガは右肘靱帯損傷、2018年にも損傷し再建手術を受けたが、今回はまた別の箇所を傷めたという。

それでも大谷は打者として出場を続け、相変わらずヒットを量産している。

右手の痙攣が出始めてからチームからは検査の提案があったものの、大谷本人がそれを拒んでいたということも明らかになった。

どうして大谷はここまで出場に固執するのだろう。

「投げて打って走る」漫画のようなスーパースターも疲労には勝てないということを今回の残念な結果は示しているのだろう。

大谷が超一流としてプレーできるのはせいぜいあと数年。

本人の中に私たちには想像できないような焦りがあるのかもしれない。

終盤に来てエンゼルスは連敗が続きもはやポストシーズン進出は絶望的となった。

しかし今シーズンのホームラン王はほぼ確定だろう。

いずれにせよ、エンゼルスで最後となる可能性が高い大谷翔平を最後まで見届けたいと思う。

ついでにもう一つ、私が気になったニュース。

日本でどれほどのニュースになったかは知らないが、インドが23日、世界で4カ国目となる月面着陸に成功したという。

ソ連、アメリカ、中国、そしてインド。

知らなかったが、日本はインドとの共同プロジェクト「LUPEX(ルペックス)」を進めていて、月の水資源を本格的に調べる計画なんだそうだ。

日本でも、4月に着陸失敗した民間企業「ispace」が来年再チャレンジする予定で、宇宙を舞台にインドとのタッグがどのような結果をもたらすのか、個人的にはとても興味がある。

そういえば、吉祥寺のマンションに戻って東の空を眺めた時、大きな月が浮かんでいるのに気づいた。

明日の満月は、今年一番地球に近づく「スーパーブルームーン」になるそうだ。

<吉祥寺残日録>民間初の月面着陸ならず!それでもベンチャー企業「ispace」の挑戦は日本企業の鏡 #230426

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