<吉祥寺残日録>中国包囲網「Quad」構築で試される日本人の覚悟 #210314

アメリカのバイデン大統領の呼びかけで、アメリカ、日本、オーストラリア、インドという4カ国首脳が初の首脳会談をオンラインで行った。

「Quad(クワッド)」と呼ばれる新たな中国包囲網の誕生である。

トランプ政権が米中2国間の「バイ」で中国に対抗しようとしたのに対し、バイデン政権は同盟国を巻き込んで中国を包囲する戦略を描いている。

太平洋戦争前に日本に対して実施された「ABCD包囲網」を私は思い出した。

アメリカ、イギリス、中国、オランダが共同で実施した日本に対する経済制裁であり、最終的にアメリカが石油の全面禁輸を決めたことが日本を無謀な戦争に走らせたとされる。

「Quad」の先に待ち受けているのは中国に対する経済封鎖、それでうまくいなかければ武力衝突という事態も想定しておかなければならない。

「CNN」のサイトに気になる記事を見つけた。

タイトルは、『世界最大の海軍を建設した中国、今後の出方は』。

上のグラフは、アメリカと中国の「戦闘艦艇」の数を示しており、記事にはこう書かれている。

米海軍情報局(ONI)によると、人民解放軍海軍(PLAN)は15年の時点で255隻の戦闘艦艇を保有していた。

20年末にはこれが360隻になり、米海軍を60隻あまり上回った。今から4年後の戦闘艦艇数は400隻に上る見通しだという。

00年の状況を振り返ると、この数はいっそう際立つ。

米海軍と海兵隊、沿岸警備隊の幹部が昨年12月にまとめた報告書は、「中国海軍の規模はわずか20年で3倍以上になった」と指摘。「中国はすでに世界最大の海軍を有するうえに、現代的な水上戦闘艦や潜水艦、空母、戦闘機、強襲揚陸艦、弾道ミサイル潜水艦、大型沿岸警備艇、極地破氷船の建造を警戒すべきスピードで進めている」と述べた。

こうした艦艇の一部は、米国を始めとする海軍大国のものと同等か、それをしのぐ性能を持つ見通しだ。

引用:CNN『世界最大の海軍を建設した中国、今後の出方は』

中国海軍はすでにアメリカ海軍をしのぐ戦力を作り上げているというのだ。

第一次世界大戦後、日本の急速な軍拡を抑えるために、米英が中心となってワシントン会議とロンドン海軍軍縮会議で軍艦の保有数をコントロールしようとした。

しかし、今はそのような歯止めは何もなく、中国だけがものすごい勢いで軍艦を作り続けている。

日本が財政上の懸念から1隻建造するのも躊躇するような高性能な最新鋭艦がどんどん就役しているのだ。

忘れてはならないのは、中国が世界最大の造船大国という事実である。

戦略国際問題研究所の中国パワープロジェクトが引用した国連の統計によると、中国は18年、総トン数で世界の造船市場の40%を押さえ、2位韓国の25%を大きく引き離していた。

歴史的にみると、中国の造船業界の数字は驚くべきもので、第2次世界大戦中の米国をも上回る。中国は平時の1年間(2019年)に、米国の有事の4年間(1941~45年)よりも多くの船を建造した計算となる。

商船を量産する中国国営企業は海軍増強の原動力でもある。

米海軍大学のエリクソン氏は昨年、「紛争時には追加の商業造船所を含む余剰工業力がいち早く軍の生産や修理に転用され、中国の戦力増強能力をさらに引き上げる可能性がある」と論じた。

既存のインフラや、商業造船所で用いられる労働力および技術はいずれも、軍艦の大量建造に活用できる。

引用:CNN『世界最大の海軍を建設した中国、今後の出方は』

先日の全人代で、香港の民主化の芽を完全に摘み取った中国政府の次のターゲットは台湾である。

今年は、中国共産党創立100周年。

「台湾は中国の一部」だと主張している中国だが、1949年の中華人民共和国建国以来、台湾がその支配圏に入ったことは一度もない。

中国共産党が大陸を押さえた後も、台湾は敵対する国民党の支配地域であり、一触即発の緊張関係が長く続いてきたのが実態だ。

そして膠着状態が70年以上続く間に、台湾では国民党に代わり民進党政権が誕生している。

ニクソン訪中後は、台湾を国際的に孤立させ、武力ではなく経済力で飲み込む方法を模索していたが、習近平体制は、台湾統一のためには武力侵攻も辞さないという強い姿勢に転換した。

2015年から続く海軍力の強化や東シナ海、南シナ海での海洋進出の動きも、台湾統一に向けて外堀を埋める長期戦略のように思える。

バイデン政権がその外交デビューに当たり、ヨーロッパの同盟国よりもまず、インド太平洋地域での同盟強化から始めようとしている背景には、軍事力の分野でもアメリカの優位性が失われつつある危機感がある。

もはや欧州諸国と組んでロシアに対抗するよりも、アジア諸国とともに中国に対抗する方がはるかに重要なのだ。

オーストラリアは、コロナ絡みで中国を批判したモリソン首相の発言が影響して中国に虐められている。

インドは、国境地帯で中国と小競り合いが起きたばかりであり、中国が推し進める一帯一路がインドの支配地域に及んでいることに強い警戒感を示している。

そして、日本にも尖閣諸島の問題がある。

中国脅威論は今や世界中の主要国にとって無視できないものとなっている一方、中国の巨大市場から締め出されることは自国経済に計り知れない打撃を与えるだけに、経済と安全保障の板挟みとなって悩んでいるのが各国の事情だ。

菅総理は4月にもアメリカに飛び、バイデンさんと直接会って首脳会談を行うことを発表した。

バイデン大統領が最初に招く外国首脳に選ばれたことをとても喜んでいるように見える。

しかし、トランプ流の空中戦よりもバイデンさんのトモダチ作戦の方が日本への影響は大きい。

「Quad」の中で、台湾有事の際に直接戦争に巻き込まれるのは日本だけである。

日本人には、その覚悟がどれほどあるのか?

実際には自衛隊員でさえ、その心構えはできていないだろう。

「何かあれば、アメリカが守ってくれる」というのは、幻想でしかない。

昭和の時代に日本が起こした戦争を見ればわかる。

ナチスドイツの電撃作戦を見ればわかる。

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もし台湾で戦争が起きるとすれば、時間をかけて入念に準備してきた中国の侵攻を誰も止められないだろう。

ナチスドイツの猛攻の前になすすべもなく陥落したフランスのように、日本だってあっという間に占領されるかもしれない。

ならば、戦争を防ぐにはどうすればいいのか?

台湾を見捨てて、中国と仲良くするのか?

その場合には、かつての中華帝国と周辺国との関係を受け入れる覚悟が必要だろう。

中国の意に沿わない政策を取れば、直ちに輸入や輸出差し止めの罰を受ける。

琉球はもともと中国のものだったと言い出すかもしれない。

中国人が我が物顔で、日本の街を闊歩し、不動産を買い漁る未来を黙って受け入れるしかないのか。

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台湾の行方は、東アジアの将来を決める大きな試金石だと私は思う。

いっそのこと、G7が一致して台湾政府を承認するのも一つの方法かもしれない。

同時に、G7が強調して中国との貿易を制限するのだ。

ものすごく緊張は高まるだろうが、もし中国と対抗するつもりであれば、それしかないと私は考えている。

時が経てば経つほど、中国とアメリカの地位が逆転してしまい、対抗するチャンスは失われてしまうだろう。

そのためには、各国が中国依存を改めなければならない。

中国への輸出を我慢し、中国に置いている工場を他へ移す。

当然、その代償は大きい。

物価は確実に上昇し、輸出の落ち込んで経済に大きなダメージを受けるだろう。

もしそれが嫌ならば、屈辱的であってもASEAN諸国のように中国の影響下に入るしかない。

中国国内では、こんな動きもあったらしい。

中国アリババ集団の金融会社「アントグループ」の胡暁明(サイモン・フー)最高経営責任者(CEO)が突然辞任したと発表されたのだ。

数億人の中国人が利用している決済アプリ「アリペイ」などを運営する中国を代表する巨大フィンテック企業だが、去年アリババグループの創業者ジャック・マー氏が習近平氏を批判して以来当局から睨まれ、執拗な嫌がらせを受けている。

習近平政権に歯向かうものは誰であろうと容赦しない。

香港問題も力でねじ伏せた習近平さんは、稼ぎ頭の巨大IT企業も完全に自分の支配下に置こうとしている。

中国政府が進めている「デジタル人民元」のベースとして、すでに普及している民間の決済アプリを利用するつもりなのかもしれない。

「デジタル人民元」は近く、実験段階に入り、世界で最も早く通貨のデジタル化を実現しようとしている。

そうなれば、国民の購買履歴など個人の行動をますます国家が把握することになる。

人類史上例を見ない「超監視社会」がまた一歩、完成に近づくことになるのだろう。

そんな社会、私はまっぴら御免だ。

そんな締め付けの一方で、中国国際放送「CRI online」の日本語サイトにはこんなのどかな写真が踊っていた。

記事のタイトルは、『【CRI時評】中国政府が人々に支持されている理由』。

記事はこんな書き出しで始まっている。

 ここ数年来、国際世論調査機関の数回の民意調査で、中国人民の中国政府に対する支持率がいずれも世界トップを占めている理由は何だろうか。

この写真といい、この記事といい、虫唾が走るが、これが中国メディアでは当たり前だ。

中国政府が人民から支持されている理由は何か、この記事はこのように説明していた。

 公衆衛生の危機に直面した時に人民の生命と健康を第一義とすることから、経済の回復に取り組むにあたって雇用の確保を最重要課題とすること、さらに将来の発展計画の中で民生の改善をテーマにすることに至るまで、中国政府の活動は終始人間本位を旨としている。つまり、大衆が望んでいることを努力の方向性とし、大衆の心の奥底に響くように活動を行うということだ。これこそが中国政府が長年高い満足度を得てきた根本的原因だ。

大衆が望むことを実現しているから中国政府は人民から支持される、ということのようだ。

コロナ禍は、こうした習近平さんの個人崇拝をますます強めているという。

国内向けには「民生第一」を打ち出しながら、対外的には着実に軍備増強を進める中国。

巨大なマーケットと世界最大の生産力を武器に世界の覇権を目指す中国を、どうすれば良き隣人に変えることができるのだろうか?

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