広島サミットが無事に閉幕した。
日本では昔からG7サミットを大々的に報道する習慣があるが、アメリカメディアなどではほとんど注目されることもなく、大抵はサプライズのない政治ショーである。
日本メディアは、G7サミットが始まった当初から日本がその中に入っていることが嬉しくて、「アジア唯一の参加国」というフレーズがサミットでの決まり文句となってきた。
私も何度かサミットの取材をしたことがあるが、ほとんどの中身は事前に事務方が用意していて、テレビの報道も首脳が何を食べたとか、どこを訪れたとか一種の見せ物としての扱いが定番だった。
大した中身もないのに、政治部記者や欧米担当の特派員が大集合し、かつては番組のキャスターも乗り込んで、さも重大ニュースのように大騒ぎするのが恒例であった。

それを考えると、今回の広島サミットは近年稀に見る中身の濃いG7サミットだったと言えるだろう。
岸田総理の地元である被爆地・広島で開催したというのがまず重要だった。
最近では反グローバリズムを掲げる活動家たちの抗議活動によって、首都でサミットが開かれることがほとんどなくなり、各国とも適当なリゾート地を会場に選ぶことが多くなっていた。
それでも、世界初の原爆が投下された街として世界中に知られる広島のようなメッセージ性の強い場所がサミット会場に選ばれたことはこれまでなかったのではないだろうか。
しかも、岸田総理はあえて各国首脳たちを原爆資料館に案内し、原爆慰霊碑に献花するというプログラムを仕掛けた。
世界の関心がウクライナでの戦争に向けられている今、この選択は凡庸なサミットに明確なメッセージを与えた。

もう一つの仕掛けは、グローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国の首脳8人を招待したことである。
かつて世界のGDPの6割を誇ったG7も、中国やインドの台頭によってそのシェアは4割余りに落ち込み、もはやG7だけでは世界の課題が解決できない時代になっている。
そのため、中国やロシアも加えたG20という枠組みが存在感を増しているのだが、実際にはG7と中ロがことあるごとに対立し完全な機能不全に陥っている。
そこでG7をベースにしたまま、中ロを除くグローバルサウスの主要国を取り込もうというのが岸田総理の狙いだった。
インド、ブラジル、インドネシア、いずれもロシアに対する経済制裁には加わらず中立的な立場を取っている国々だ。
特にインドとブラジルはBRICsの枠組みで中国やロシアとの関係も深い。
G7サミットが始まった当初から、日本は「先進国と途上国のつなぎ役」を自認し、日本が議長国を務める際にはアジアの声を欧米諸国に伝える役目を演じてきたが、当時と今ではその重みが違う。
グローバルサウスの支持を取り付けることは、G7にとって死活的な重要性を持ちつつあるのだ。

こうして広島とグローバルサウスという2つの仕掛けを作り「外交の岸田」をアピールしようとした岸田総理に、思わぬプレゼントが舞い込んだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインではなく、急遽来日し対面で会議に参加することが決まったのだ。
今年岸田総理がキーウを訪問し、直接ゼレンスキー大統領をサミットに招待していたものの、戦争中の大統領が本当に遠く離れた日本までやってくるとは思っていなかっただろう。
来日を熱望したのはゼレンスキー氏自身だったという。
今月に入り、ヨーロッパ各国を精力的に回り、サウジアラビアに飛んでアラブ首脳会議にも参加したゼレンスキー大統領。
近日中には開始されるとみられる反転攻勢を前に、出来るだけ多くの支援を取り付けるタイミングに広島サミットがドンピシャでハマったというわけだ。

G7の首脳たちとは何度も会っているゼレンスキー氏の狙いは、インドのモディ首相だったとも言われる。
20日に来日するとすぐにモディ首相との首脳会談に臨んだ。
インドはロシアとの軍事的なつながりが強く、ウクライナ侵攻後も大量のロシア産原油を購入して経済制裁の抜け穴になっている。
そんなインドに直接支援を要請したのだ。
モディ首相もなかなかしたたかで、会談直後すぐにSNSにゼレンスキー大統領と握手する写真をアップし、「個人的には解決に向けできることは何でもやる」と伝えたと明らかにした。
しかし一方でロシアを批判することは避け、あくまで中立的な立場は崩さなかった。

ゼレンスキー大統領の来日で、広島サミットに対する世界のメディアの注目度は格段に上がった。
ウクライナが一貫して求めている戦闘機F-16の供与についても、これまで後ろ向きだったバイデン大統領がウクライナ人パイロットの訓練を受け入れることを表明し、欧州の同盟国がF-16をウクライナに提供することを容認するとこれまでの姿勢を転換させたのだ。
反転攻勢を前にして各国の軍事支援を獲得するゼレンスキー大統領の動きは、サミットの関心を示さなかった欧米のメディアを惹きつけ、広島発のニュースが各国でトップニュースとして扱われている。
岸田さんの思い描いた核軍縮サミットではないものの、これまでの日本で開催されたG7サミットと比べると間違いなく最も注目を集めた成功事例になったことは間違いない。
ゼレンスキー大統領はサミット閉幕後、原爆資料館などを訪れ岸田さんが世界に発信したかった広島のメッセージを拡散することに貢献した。
広島を訪れた経験は、各国首脳が今後平和について演説する時、自身の心に残ったエピソードとして語られるかもしれない。
そうした意味で、岸田総理の企みは広島の価値を高めたと私は評価している。

私が特に注目したのは、21日の朝に行われた韓国の尹錫悦大統領と岸田総理の行動。
2人で平和記念公園内にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花したのである。
原爆投下から78年、日韓の指導者が揃ってこの慰霊碑を訪ねるのは初めてのことだ。
これまで十分な補償や謝罪を受けることのなかった韓国人被爆者からはおおむね歓迎の声が上がったという。
これまで見落としてきたこうした小さなアクションを積み重ねることが、日韓のこじれた関係を改善してくれることを願わずにはいられない。
韓国のメディアの反応を見ると、保守系の新聞は好意的に伝えているが、革新系のハンギョレ新聞などは慰霊碑への献花の扱いよりも福島第一原発の汚染水の問題をトップに掲げ、「福島第一原発の汚染水…捨てるな、陸上に保管せよ」というキャンペーン記事を大きく掲載していた。
韓国の専門家による調査団が福島に入るということの方がどうやら関心が高いらしい。

サミット閉幕にあたり議長として記者会見に臨んだ岸田総理は、「G7首脳と胸襟を開いて議論し核兵器のない世界に向けて取り組んでいく決意を改めて共有した」とその成果をアピールした。
原爆資料館を訪ねた首脳たちが「広島ビジョン」と名づけられた核軍縮に関する声明を発出したことを「歴史的な意義を感じる」と自画自賛してみせた。
広島選出の岸田総理がどうしても出したかったこの「広島ビジョン」だが、被爆者団体や核廃絶を目指す活動家からはすこぶる評判が悪い。
果たしてどんな内容なのか、外務省のホームページをチェックしてみた。
ここに、全文を引用しておこうと思う。
歴史的な転換期の中、我々G7首脳は、1945年の原子爆弾投下の結果として広島及び
引用:外務省HP「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」
長崎の人々が経験したかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を長崎と共に想起さ
せる広島に集った。粛然として来し方を振り返るこの時において、我々は、核軍縮に特に焦
点を当てたこの初のG7首脳文書において、全ての者にとっての安全が損なわれない形で
の核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを再確認する。
我々は、77年間に及ぶ核兵器の不使用の記録の重要性を強調する。ロシアの無責任な核
のレトリック、軍備管理体制の毀損及びベラルーシに核兵器を配備するという表明された
意図は、危険であり、かつ受け入れられない。我々は、ロシアを含む全てのG20首脳によ
るバリにおける声明を想起する。この関連で、我々は、ロシアのウクライナ侵略の文脈にお
ける、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許
されないとの我々の立場を改めて表明する。我々は、2022年1月3日に発出された核戦
争の防止及び軍拡競争の回避に関する五核兵器国首脳の共同声明を想起し、核戦争に勝者
はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないことを確認する。我々は、ロシアに対し、
同声明に記載された諸原則に関して、言葉と行動で改めてコミットするよう求める。我々の
安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、
侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている。
冷戦終結以後に達成された世界の核兵器数の全体的な減少は継続しなければならず、逆
行させてはならない。核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、
核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎として堅持されなければならない。
我々は、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプ
ローチを通じて達成される、核兵器のない世界という究極の目標に向けた我々のコミット
メントを再確認する。この点に関し、日本の「ヒロシマ・アクション・プラン」は、歓迎す
べき貢献である。我々は、新戦略兵器削減条約(新START)を損なわせるロシアの決定
を深く遺憾に思うとともに、ロシアに対して、同条約の完全な履行に戻ることを可能とする
よう求める。同時に、中国による透明性や有意義な対話を欠いた、加速している核戦力の増
強は、世界及び地域の安定にとっての懸念となっている。
我々は、核兵器に関する透明性の重要性を強調し、米国、フランス及び英国が、自国の核
戦力やその客観的規模に関するデータの提供を通じて、効果的かつ責任ある透明性措置を
促進するために既にとってきた行動を歓迎する。我々は、まだそうしていない核兵器国がこ
れに倣うことを求める。我々はまた、透明性を促進するために、まだそうしていない核兵器
国に対し、将来のNPT関連会合における、非核兵器国及び市民社会の参加者との双方向の
議論とともに行われる国別報告書についての開かれた形での説明を通じたものを含め、非
核兵器国と核戦力及び核軍備競争の制限に関する透明性についての有意義な対話を行うこ
とを求める。この観点から、我々は、リスク低減への実質的な貢献として、関連する戦略的
活動の事前通告の利点を強調する。G7は、戦略的リスクを低減するための核兵器国による
具体的な措置の必要性を認識する。我々は、中国及びロシアに対し、第6条を含むNPTの
下での義務に沿い、関連する多国間及び二国間のフォーラムにおいて実質的に関与するこ
とを求める。
我々は、長きにわたって遅延している、核兵器又は他の核爆発装置に用いるための核分裂
性物質の生産を禁止する条約の即時交渉開始を求める。2023年は、核兵器用核分裂性物
質生産禁止条約(FMCT)を求める国連総会決議のコンセンサス採択から三十年目の年に
当たり、我々は、核軍備競争の再発を阻止するための優先行動として、あらゆる個別の、又
は補完的な取組を含め、FMCTへの政治的関心を再び集めることを全ての国に強く求め
る。この点に関し、我々は、まだそうしていない全ての国に対し、核兵器又は他の核爆発装
置に用いるための核分裂性物質の生産に関する自発的なモラトリアムを宣言又は維持する
ことを求める。
我々は、いかなる国もあらゆる核兵器の実験的爆発又は他の核爆発を行うべきではない
との見解において断固とした態度をとっており、それを行うとのいかなる威嚇も非難し、包
括的核実験禁止条約(CTBT)の発効もまた喫緊の事項であることを強調する。我々は、
CTBTが法的拘束力を持つまでの間、核爆発実験に反対するグローバルな規範を堅持す
ることに引き続きコミットし、全ての国に対し、核兵器の実験的爆発又は他のあらゆる核爆
発に関するモラトリアムを新たに宣言すること、又は既存のモラトリアムを維持すること
を求める。我々は、核実験を行う用意があるとのロシアの発表に懸念を表明し、ロシアによ
る核実験モラトリアムの遵守を求める。我々はさらに、包括的核実験禁止条約機関(CTB
TO)準備委員会が世界中の核爆発が疑われるものの探知及び報告を行う上で果たす不可
欠な役割を強調する。G7は共同で、2023年に1億米ドル以上の額でCTBTOの活動
を支援している。我々は、CTBTの検証体制の全ての要素の継続的な運用と長期的な持続
可能性を確保するために十分な資源を提供するというG7のコミットメントを再確認し、
他の者に対し同様の行動を求める。
核兵器のない世界は、核不拡散なくして達成できない。我々は、関連する国連安保理決議
に従った、核兵器及び既存の核計画、並びにその他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の、
北朝鮮による完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄という目標への揺るぎないコミッ
トメントを改めて表明する。我々は、北朝鮮に対し、核実験又は弾道ミサイル技術を使用す
る発射を含め、不安定化をもたらす、又は挑発的ないかなるその他の行動をも自制するよう
求める。北朝鮮は、NPTの下で核兵器国の地位を有することはできず、有することは決し
てない。北朝鮮の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画が存在する限り、制裁は、全ての国に
よって完全かつ厳密に実施され、維持されることが極めて重要である。我々は引き続き、信
頼に足る民生上の正当性がなく、実際の兵器関連の活動に危険なほどに近づいているイラ
ンの核計画の継続したエスカレーションを深く懸念している。我々は、イランが決して核兵
器を開発してはならないとの我々の明確な決意を改めて表明し、全ての国に対し、国連安保
理決議第2231号の履行を支持するよう求める。我々は、イランに対し核エスカレーショ
ンを停止するよう強く求める。我々は、イランに対し、更なる遅滞なく、核不拡散に関する
法的義務及び政治的コミットメントを果たすよう求める。イランの核計画に関する国際的
な懸念を解消するためには、外交的解決が引き続き最善の方法である。この文脈において、
包括的共同作業計画(JCPOA)は、引き続き、有益な参考である。我々は、イランに対
し、迅速かつ具体的な行動により、保障措置に関する義務及び表明されたコミットメントを
遵守することを求める。我々は、イランにおける国際原子力機関(IAEA)の重要なマン
デートと取組を称賛し、引き続き全面的に支援する。
この不確実性と緊張の時代において、既存の体制やその他のグローバルな取組を維持し、
資源を投入し、強化することは最も重要である。我々は、全ての国に対し、次世代原子力技
術の展開に関連するものを含め、原子力エネルギー、原子力科学及び原子力技術の平和的利
用を促進する上で、保障措置、安全及び核セキュリティの最高水準を満たす責任を、真剣に
果たすよう強く求める。我々はさらに、ロシアによるウクライナの原子力施設を管理しよう
とする試みに深刻な懸念を表明する。これは、原子力安全及び核セキュリティ上の深刻なリ
スクをもたらすものであり、原子力の平和的利用の追求というNPTの下でのウクライナ
の権利を完全に無視するものである。我々は、核不拡散体制の基本的な構成要素として、I
AEAの最高水準の保障措置の実施及び追加議定書(AP)の普遍化の重要性を再確認する。
我々は、APの適用を含む核不拡散の最高水準に従って、信頼できかつ責任ある原子力サプ
ライチェーンを促進する。我々は、原子力供給国グループ(NSG)のガイドラインにおい
てAPを供給の条件とすることに向けた同グループ内での更なる議論を支持する。原子力
発電又は関連する平和的な原子力応用を選択するG7の国は、原子力エネルギー、原子力科
学及び原子力技術の利用が、低廉な低炭素のエネルギーを提供することに貢献することを
認識する。G7は、医療や同位体水文学などの分野における原子力技術の応用の、繁栄の促
進及び国連の持続可能な開発目標の取組への貢献に留意する。我々は、二十年以上にわたり、
世界各地において核不拡散を推進するための具体的で影響力のあるプログラムを提供して
きた、G7が主導する大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ
への最大限のコミットメントを改めて表明する。
我々は、民生用プルトニウムの管理の透明性が維持されなければならないことを強調す
る。我々は、民生用プログラムを装った軍事用プログラムのためのプルトニウムの生産又は
生産支援のいかなる試みにも反対する。かかる試みは、原子力の平和的利用の促進を含むN
PTの目的を損なうものである。この点に関し、我々は、プルトニウム管理指針(INFC
IRC549)の実施の重要性を強調する。我々は、平和的原子力活動における全てのプル
トニウムの保有量をIAEAに年次報告することにコミットした全ての国に対し、かかる
コミットメントを履行することを求める。我々は、同指針の対象となるプルトニウムに関す
るものと同様の責任を持って、高濃縮ウランの民生保有量を管理する必要性を認識する。ま
た、我々は、世界中の兵器利用可能な核物質の民生目的での生産と蓄積を削減するための取
組を優先することにコミットする。
我々が望む世界を実現するためには、その道がいかに狭いものであろうとも、厳しい現実
から理想へと我々を導く世界的な取組が必要である。この点に関し、我々は、軍縮・不拡散
教育やアウトリーチの重要性を強調する。我々は、広島及び長崎で目にすることができる核
兵器使用の実相への理解を高め、持続させるために、世界中の他の指導者、若者及び人々が、
広島及び長崎を訪問することを促す。この目的のため、我々は、日本による「ユース非核リ
ーダー基金」、P5の「ヤング・プロフェッショナル・ネットワーク」、ドイツにより資金提
供された「軍縮のための若者チャンピオン」及びEU不拡散・軍縮コンソーシアムが設立し
た「若い女性たちによる次世代イニシアティブ」などのイニシアティブや、軍縮・不拡散の
プロセスへの市民社会の関与に加え、女性の完全で、平等で、意義ある参加を支援する他の
イニシアティブを歓迎する。
被爆者の人たちが求めている「核兵器のない世界」にさまざまな但し書きがついている。
『全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを通じて達成される、核兵器のない世界』
すなわち、核保有国に気を遣って既存の核抑止力を容認していると批判されているのである。
確かに、岸田さんが胸を張るほどの画期的な決意表明があるわけではなく、ロシアや中国、イランや北朝鮮を批判する回りくどい官僚的文章だとは思う。
しかし、核保有国の首脳に原爆資料館を見せ、こうした宣言を発出しただけでも一歩前進だと私は岸田さんの努力を評価したい。
もちろん核兵器のない世界が実現すれば、それは素晴らしいことではあるが、人類が一度手にした武器を手放した例は過去にない。
この世から戦争が永続的になくならない限り、核兵器が世界からなくなることは決してないだろう。
だから各国のメディアも、核兵器のない世界について大きく報道していないのだ。
好むと好まざるとに関わらず、核抑止力は現実に存在する。
もしも核抑止力がなければ、ウクライナの戦争もすでに欧米を巻き込んだ大戦争に拡大していた可能性が高いと思う。
だから核抑止力の存在を前提にして、その中で国際社会が連携して戦争を抑え込んでいく方法を模索することが、世界平和実現への最も現実的なアプローチだと私には思えるのだ。

外交が苦手な日本において、今回の広島サミットは「大成功」の部類に入るのではないか、少なくとも私はそう考えている。
欲を言えば、アジアでの開催ということで、ミャンマーのことも議題に入れてもらいたかった。
G7議長国としての務めは今年いっぱい続く。
一躍「外交の岸田」をアピールした岸田総理には、今度は中国に飛び込み、習近平国家主席を広島に招待して原爆資料館を見せるような継続的な取り組みを期待したい。
仲良しのG7だけでパフォーマンスをしても、それは日本国内向けの人気取りにしかならないだろう。
本当に世界の平和を求めるのであれば、敵対する国を包囲するだけでなく、嫌でも対話を重ね妥協点を模索していくしか方法がないのである。