我が家のトイレにかけてある歳時記カレンダー。
今日から二十四節気の「白露」となった。

『秋も本格的になり、草葉に露が白く見えるようになる』という意味らしい。
そして七十二候では「草露白(くさのつゆしろし)」。
『草の葉に白露が宿り始める頃』と、その意味はほぼ「白露」と同じである。

朝起きると、久しぶりに青空が顔を出していた。
9月に入ってずっと雨ばかりで、青空を見たのは1週間ぶりになる。
早速、「草の葉に白露が宿り始める」情景を探しに井の頭公園に出かけることにした。

これはまさに、「草葉に露」。
本当は朝露という意味なのだろうが、この水滴は昨日まで降った雨の名残だ。
9月1日から昨日までずっと雨が降ったり止んだりの日が続いたが、9月初めから6日連続で東京の最高気温が25度未満となったのは1934年以来、実に87年ぶりだという。
1934年といえば私の母が生まれた翌年であり、満州事変が発生した3年後という大昔だ。

そして今日も、東京周辺は予報ほどは晴れ間が広がらず、結局最高気温が25度に達しなかった。
ついに9月に入り7日連続で25度未満。
これは1908年以来、なんとなんと113年ぶりの大記録となるそうだ。
1908年といえば明治41年、愛新覚羅溥儀がわずか2歳10ヶ月で清朝第12代の皇帝に即位した年である。
このところの天候不順がいかに珍しいがよくわかる。

ちなみに、富士山の初冠雪も今日観測されたようだ。
平年と比べて25日も早いという。
上空に強い寒気が流れ込んでいるということで、今年は世界各地で記録的な異常気象が観測されている。

そんなわけで、井の頭公園もすっかり秋の風情である。
井の頭池周辺に植えられたソメイヨシノの葉はすでに色づき、多くは散ってしまった。
この天気ではボートに乗る人もほとんどいない。

長雨で元気になっているのは菌類たち。
公園内の切り株にはサルノコシカケの類がたくさん繁殖していた。

蝉の音と虫の音を同時に聴けるのも今の季節だ。
知らぬ間に夏は去り、秋の物寂しさが公園を覆っている。

夏の暑さを栄養に育つだけ育った植物たちもすでに盛りを過ぎて、みんなくたびれて見える。
人間も植物も、育つ過程は美しいが老い衰える姿はお世辞にも美しいとは言えない。
ただ、還暦を過ぎた隠居の身になって眺めれば、秋には秋の良さもあるものだ。

秋は、「実りの秋」なのだ。
丁寧に樹木を観察していくと、多くの植物たちが「実りの秋」を迎えていることがわかる。
たとえば・・・
ひょうたん池のほとりではツバキの木に実がついているのを見かけた。
これから10月にかけて赤く色づき、この実を蒸して絞ると椿オイルが取れるのだ。

「アラカシ」の枝先には、どんぐりの赤ちゃんがたくさん。
こちらも10月にかけて茶色く成長して落下してくるが、こうして小さな独楽のような実がたくさん群れている様子がとても可愛らしい。

カワイイという意味では、たくさんぶら下がった「エゴノキ」の実もこの季節に目を引く存在だ。
「食べてください」と手の届く場所にぶら下がっているが、食べると「えごい(えぐい)」味がすることから「エゴノキ」と名付けられたのだそうだ。
昔の人も、たくさんの実がぶら下がったこの姿に誘われてついついその実を口に入れて食べてみたのだろう。

そんな9月初旬の井の頭公園で、今日私の興味を最も惹いたのが三角公園で見かけたこちらの植物。
7月に一度このブログにも記録したことがある「ヤブガラシ」という名のつる植物である。
夏の間に大きく育ち、いつの間にか大きな茂みに育っていた。

初めてこの植物を知った時、私はブログにこんなことを書いていた。
『人間には敬遠される「ヤブガラシ」も昆虫たちには人気がある。蓼食う虫も好き好きということで、私個人も「オニユリ」より「ヤブガラシ」の方が好みだ。』
小さな花が愛らしく、葉の様子も悪くない。
だから、「カワイイ植物だなあ」とその時は思ったのだが、この植物がなぜ「ヤブガラシ」という恐ろしい名前で呼ばれるのか、その理由が今日理解できた。

「ヤブガラシ」の下を覗き込むと、つやつやとした葉っぱが見えた。
ツバキである。
そうなのだ。
私が最初「ヤブガラシ」の茂みだと思った塊は、実はツバキであり、そのツバキに「ヤブガラシ」が取り付いてツバキが見えないほど表面を覆い尽くしまっていたのだ。
これではツバキはまったく太陽の光を得られないだろう。
文字通り、「藪枯らし」なのである。

ツバキの隣では、ツツジに「ヤブガラシ」が襲いかかっていた。
まだツツジの姿は見えるのだが、蔓を伸ばして頂上を支配した「ヤブガラシ」がツツジの側面にじわじわと攻め込み包み込もうとしている。

さらにその隣では、「ヤブガラシ」がソメイヨシノに絡みついていた。
下の方の枝はすでに「ヤブガラシ」に覆われていて、桜の枝を伝って上へ上へと這い上がろうとしている。
動きの鈍い植物の世界では、「ヤブガラシ」のようなつる植物は抜群に動きが早い。
自然の摂理とは言え、ツバキの立場になるとなんともひどい植物である。

永田町でも、水面下での激しい駆け引きが活発化してきた。
真っ先に名乗りをあげた岸田さんに対して、有力候補である石破さんが出馬を取りやめて河野さんの支援に回るとの観測が強まっている。
長年自民党を支配してきた安倍・麻生連合に対抗して、国民の支持が高い河野さんと石破さんの連合を作り一気に流れを作ってしまおうという作戦だ。
「薩長連合」とも呼ばれるこの企みが果たして成功するのかは、まだ読めない。
しかし、仮に石破さんや小泉さんの支援を受けて河野太郎新総裁が誕生すると、公文書偽造まで行って隠してきた安倍一強時代の大スキャンダルが明るみに出る可能性もある。
安倍さんも麻生さんも、絶対に石破さんには権力を渡さないつもりらしい。
きっと隠しておきたいことがあるのだろう。
「河野・石破連合」を小泉さんや若手が支援し、裏には二階さんや菅さんがいる。
もし、こうした反安倍連合が実現することがあれば、我が世の春を謳歌してきた安倍さんにも、にわかに秋風が吹き始めるかもしれない。
菅さんの突然の不出馬表明からわずか4日、ここ10年で最も面白い政治の季節が訪れようとしている。
【トイレの歳時記2021】
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