今日から暦は二十四節気の「処暑」。
「残暑がしばらくとどまるが、朝夕は秋の気配が漂う」季節となった。

東京は連日30度を超える日が続くが、日差しが少ないこともあり、今年の夏は涼しく感じる。
そして「処暑」の初候となるのが「綿柎開(わたのはなしべひらく)」。
文字通り、「綿の実を包む顎(がく)が開き、綿を吹き始める頃」という意味だそうだ。
私は綿の実が開くところを見たことがないので、この言葉によって季節を感じることはないが、野生の綿花を見つけてこの植物から繊維を取り衣服を作った最初の人はすごいと思う。
綿についてこれまで関心を持ったことがなかったが、一番最初に木綿の栽培を始めたのはメキシコやインドあたりらしい。
Foods and Nutrition Encyclopedia によれば、現在までに見つかっている木綿栽培の最古の証拠はメキシコにあり、約8000年前に遡る。その種類はアメリカ栽培綿 Gossypium hirsutum で、現在世界で栽培されている木綿の89.9%がこの種である。野生の木綿の種はメキシコで最も多様であり、それにオーストラリアとアフリカが次いでいる。
旧世界で最も古い木綿栽培の痕跡は約7000年前(紀元前5千年紀から紀元前4千年紀)のもので、インド亜大陸の北西の広大な領域(現在のバングラデシュと北西インドの一部)で発達したインダス文明の住民によるものである。インダス川流域の木綿産業はかなり発展し、そこで生まれた紡績や機織りの技法はインドで比較的最近まで使われ続けていた。西暦が始まる以前に木綿の布はインドから地中海、さらにその先へと広まっていた。
ギリシャ人はアレクサンドロス3世のころまで木綿を知らず、ほぼ同時代のメガステネスが『インド誌』の中でセレウコス1世に「(インドには)羊毛が生える木がある」と教えている。
出典:ウィキペディア
『羊毛が生える木』という表現はなかなか面白い。
これほど一部地域で使われていた綿がヨーロッパに広まったのは大航海時代以降、日本には中国や朝鮮からの輸入品として入ってはいたが、国内で本格的に普及したのは江戸時代に入ってからのことだ。
明治政府が綿布の生産に力を入れたことで、1930年代には日本が綿布の輸入量で世界一となり、戦争で落ち込んだものの戦後も一時期、世界一の座を取り戻した。
しかしその後は外国製の安い綿製品に押されて日本の繊維産業は衰退、合成繊維の登場でほぼ壊滅したという。
今では、綿布の国内自給率は0%である。

井の頭公園では、綿の実を見ることはできない。
ただこの季節に公園内を散策すると、様々な植物が実をつけ始めていることに気づく。

「ツバキ」の実。

「カキ」の実。

「エノキ」の実。

こちらはちょっと大きな「トチノキ」の実。
すでにたくさん地上に落下していた。

子供たちが集めたのだろうか?
第二公園では木の切り株の上にたくさんの松ぼっくりが並べられていた。
今日から「処暑」。
秋はもうすぐそこまでやって来ている。

秋の気配は、この人にも・・・。
菅総理のお膝元で行われた横浜市の市長選挙。
大臣を辞めて出馬した小此木八郎氏が、菅総理の応援にもかかわらず立憲民主党の山中竹春氏に大差で敗れたのだ。
菅さんも力を入れて来た横浜へのIR誘致が市民からの強い反発を反発を呼んだことに加え、コロナ対策など菅政権に対する不満がまさかの大敗につながった。
来月に迫った自民党総裁選を前に、菅さんの求心力の低下は避けられず、今後自民党内で「菅おろし」の動きが広がるかどうか予断を許さない状況となって来た。
個人的には、他に総理になってほしい政治家がいるわけでのないので菅続投を期待しているが、高市とか下村とか私が最も嫌う政治家たちが名乗りをあげ、その背後にいる安倍さんの復活も警戒しなければいけない。
見栄えのいい政治家ほど危ない。
菅さんのような実務型で一般受けしない政治家を総理にしておいた方が安全だと私は思っているが、やはり一般大衆は見栄えや耳障りのいい政治家を求めてしまう。
日本や世界に秋風が吹かないことを祈るしかない。
<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌻七十二候「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」に日本の伝統産業「養蚕」を学ぶ #210521
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