<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌸七十二候「虹始見(にじはじめてあらわる)」に知る鴨長明の「ひとりを愉しむ極意」 #210414

今日は「清明」の末候、七十二候の「虹始見(にじはじめてあらわる)」である。

「冬にはなかった虹が現れ始める頃」という意味だそうだ。

しかし、今日の天気は朝から雨・・・。

虹というよりも、来週に控える二十四節気の「穀雨」を思わせる。

今年は例年よりも1〜2週間、季節の進みが早いのだ。

昨日は大阪府の新規感染者が初めて1000人を超え、変異ウイルスの勢いは東京でも顕著になってきた。

6月に結婚式を予定している三男に先週末、「再延期を考えた方がいい」と電話でアドバイスしたところ、家族の披露宴を辞めることにしたとの予想外の連絡があり、「余計なことを言うからよ」と朝から妻に責められた。

ちょっと憂鬱な朝である。

そんな中、録画していたEテレの『先人たちの底力 知恵泉』という番組を観た。

現役時代には見向きもしなかったこの手の番組を録画してしまうこと自体、私が老いた証なのだろう。

この日のテーマは、『鴨長明 ひとりを愉しむ〜不条理な世を生きる極意』。

コロナ禍で、「おひとりさま」が時代のキーワードとなり、一人での食事や一人でのキャンプを楽しむ情報がもてはやされる昨今だが、平安時代の末期に「おひとりさま」を極めた人物が鴨長明だというのだ。

下鴨神社の神事を司る禰宜の家に生まれた鴨長明は神職としての出世の道が絶たれ、出家して「おひとりさま」暮らしを始める。

鴨長明の生き方から学ぶ知恵の第一は「積極的に“ひとり”になれ!」ということ。

長明は鴨川のほとりに一人用の家を建てて住み始める。

和歌の世界を徹底追求し、昔の和歌を学んだり自ら歌を詠んだり・・・。

時には熊野や伊勢に一人で旅に出て、また好きな歌人・在原業平ゆかりの場所を巡ったりしながら、充実した「ソロ活」をして過ごした。

そうした生活が幸いして1201年、後鳥羽上皇が進めた「新古今和歌集」の編纂を始めると、鴨長明は和歌所の寄人に抜擢される。

しかし、充実した和歌所での生活は3年で終わり、長明は再び、世俗を離れ京都・日野の山中に庵を立てる。

これが『方丈庵』である。

「方丈庵」は京都の河合神社の境内に復元されている。

広さはわずか5畳ほど。

その狭い小屋の中心に囲炉裏を置き、仏教修養の場と琵琶や和歌を楽しむスペースを別々に設けた。

長明はここで、「心休まる生き方への模索」を始め、あの『方丈記』を執筆する。

「方丈記」には、京都を襲った大火や地震、疫病など当時の天変地異が多く記述されていた。

長明が生きた時代は、公家の世から武家の世に移る激動期であり、多くの不条理が社会を覆っていたのだ。

鴨長明に学ぶ第二の知恵は「不条理を受け入れてみることで見えてくるものがある」。

不条理な現実を受け入れるために書き、やがて長明は新しい人生の標べを見出していく。

ひとりを愉しむ方丈庵での暮らしが気づかせてくれたのは・・・

春は野の花を楽しみ・・・夏はホトトギスの鳴き声に耳を傾け・・・時には山小屋の10歳の子供と連れ立って山歩きを楽しんだ。

願わずわしらず ただ静かなるを望みとし 憂へ無きを楽しみとす

出典:鴨長明「方丈記」より

混迷の中、長明が見出した新たな生き方とは、「心静かに生きる」ということだった。

番組の最後、結論となったナレーションはこんなものである。

「ソロ活」を謳歌した鴨長明、人生に降りかかる様々な不条理を前に、「腐らず怒らず、そして心静かに引き受ける」・・・ひとりの時間の中で探し当てた先人の境地です。

Eテレ『先人たちの底力 知恵泉』より

鴨長明の生き方を知るうちに、「私と同じじゃないか」と思った。

しらずしらずのうちに、私は鴨長明的「おひとりさま生活」に突入しているのかもしれない。

不条理なことは今の世でもたくさん存在する。

たとえば、福島。

政府は昨日、福島第一原発に溜まり続ける「処理水」を国際基準以下に薄めて海洋に放出する方針を決定した。

地元の漁業者はもちろん、中国や韓国からも強い反対の声が上がった。

しかし、私は菅総理の決断を評価したいと思う。

民主党政権も安倍政権も政治的なリスクを恐れて問題を先送りしてきた結果、敷地内には大量のタンクが並び、10年経っても将来の見通しすら立たないままだ。

原発の是非は別の問題であり、起きてしまった事故をどのように処理するのか、誰かが決断を下さなければならない。

政府が打ち出した方針は、処理水を国際基準を大幅に下回るレベルにまで下げて海洋に放出する一方で、国際機関の監視を受け入れて国内外に正確な情報を発信し、風評被害を防ぐために国を挙げた対策を取るというものだ。

これ以外に解決方法はないと私は思う。

あとは具体的な方法であり、政府が大方針を決めなければ何事も始まらないのだ。

トリチウム水の放出は国際的にも普通に行われていることだそうだ。

経産省の資料が正確かどうかの検証をマスコミは行い、事実であれば、国民だけではなく海外メディアにも伝える努力をしなければならない。

不都合な事実こそ、目を瞑るのではなく現実的な解決方法を模索して透明性を持ったプロセスで粛々と処理するのが一番だ。

政治的な思惑やごまかしが少しでも入り込むと、すべてが台無しになる。

「風評被害」というのは、政府に対する信頼が問われる問題だ。

もちろん、目に見えない放射能を恐れる人たちがたくさんいることは避けられないが、福島県産の海産物には政府の補助がついて割安になるなら買う人もいるだろう。

安全性が担保されるならば、永田町や霞ヶ関の食堂で積極的に福島の魚を使うとか、取れる対策はいろいろあるはずだ。

メディアもいたずらに不安を煽るのではなく、こうした問題こそ伝える側の責任が問われる。

日本が衰退してきた元凶は、責任者がリスクを取らない「先送り体質」にこそあるを私は考える。

先送りして将来良い解決方法が見つかるメドのある問題であれば、先送りも一つの知恵かもしれないが、そうでなければ誰かが責任を持って判断しなければならない。

不条理を嘆いて、誰かのせいにしていても、問題は何も解決しないのだから・・・。

<吉祥寺残日録>吉祥寺に引っ越してから5年!これからの人生で大切にしたいこと #210214

【トイレの歳時記2021】

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