<吉祥寺残日録>シニアのテレビ📺 NHKスペシャル「追跡・謎の中国船〜“海底覇権”をめぐる攻防〜」 #220628

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ドイツで開かれているG7サミットで、アメリカのバイデン大統領が「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」の発足を表明した。

①気候変動②情報通信③男女格差撤廃④医療の4分野で、アジア・アフリカの低・中所得国のインフラ整備を後押しする構想だという。

5年間で総額6000億ドル(約81兆円)の投融資を目標に掲げ、中国の「一帯一路」に対抗する狙いがある。

6000億ドルのうち、アメリカが2000億ドル、EUが3000億ユーロを負担、岸田総理も日本が650億ドル(約8.8兆円)以上の拠出を目指すと表明した。

ロシアによるウクライナ侵攻によって、ますます先鋭化する民主主義と専制主義の争い。

中国寄りのスタンスを取り続けていたヨーロッパでも、軍備増強だけでなく、宇宙空間までも視野に入れた中国の世界戦略を警戒する声が一気に高まってきた。

私はもちろん民主主義の国で生きたいと思っているものの、習近平政権の未来を見据えた戦略性には驚嘆させられることも多々ある。

その一つが、日本でもすっかり定着した「海洋進出の動きを強める中国」という常套句まで生んだ海洋での活発な動きだ。

この週末放送されたNHKスペシャル「追跡・謎の中国船〜“海底覇権”をめぐる攻防〜」。

私の知らない事実がいろいろ出てきて改めて中国の先見性としたたかさを痛感した。

ウクライナ情勢によって混沌とする世界のエネルギー・鉱物資源の争奪戦は、海底にまで広がっている。NHKは、特に動きが活発な中国船の航跡10年分を分析。見えてきたのは世界に展開する中国船の実態だ。海底資源が豊富な日本近海にも出没し希少なレアアースなどを調査しているとみられている。さらに、埋め立てなどに不可欠な海砂の採取をめぐっても各地であつれきを生み出している。海底をめぐる中国と日本・世界の攻防に迫る

引用:NHK

番組では世界各地で活動する2種類の中国船に注目する。

その一つが「調査船」である。

石油や天然ガスだけでなく希少な鉱物資源が眠り「最後のフロンティア」と呼ばれる海底資源にどこよりも積極的に取り組んでいるのが中国。

現在中国が保有するとされる調査船は80隻以上、どこで何を調べているのかを探るため、番組が注目したのは船に搭載された「AIS(船舶自動識別装置)」の情報だった。

過去10年間に及ぶ主要な中国船の位置情報2000万点を入手し、その航跡を分析したところ、中国の調査船の活動はアジアのみならず世界中に広がっていることがわかった。

しかも海底資源を探っていると見られる一帯をスキャンするような詳細な調査が行われた海域がいくつも見つかったのだ。

その中には本州から1800キロ離れた南鳥島周辺も含まれている。

南鳥島周辺の海域では日本がいち早く2013年から海底資源の調査を行なっていて、島の南側の海底からレアアースを大量に含む泥が見つかっている。

先端技術に欠かせないレアアースを輸入に頼っている日本にとって南鳥島のレアアースは極めて重要な資源として注目されている。

中国の調査船がこの南鳥島に現れたのは去年8月、日本のEEZの境界線ぎりぎりの公海を詳しく調査していたことが明らかとなった。

14億の人口を抱える中国にとって、海底資源の確保は重要な戦略となっているのだ。

また日本の最南端、沖ノ鳥島周辺でも中国の動きが活発化している。

日本はパラオと協力して、沖ノ鳥島とパラオを結ぶ「九州・パラオ海嶺」を大陸棚の延長として認めるよう申請しているが、これに中国が反対するための調査だと見られている。

国際的なルールでは陸地から200海里(約370キロ)までの海底が大陸棚としてその国の権利が認められているが、地質などが同じだと国連の委員会に認められるとその先の「延長大陸棚」の資源も優先的に開発できるとされる。

日本とパラオはこの海域は「延長大陸棚」に当たると主張しているのだ。

今パラオでは、日本、アメリカ、オーストラリアが支援する形で中国船への警戒が強化されているという。

ここにきて中国が南太平洋諸国への働きかけを強化している背景には、このような海底資源をめぐる覇権争いがあるようだ。

海底資源をめぐって西側諸国が中国に遅れを取る中で、注目されるアメリカのベンチャー企業がある。

去年ナスダック市場に上場した「ザ・メタルズ・カンパニー」だ。

深海用の無人機を投入し海底資源の商用開発を2年後に実現すると宣言している。

今まさに「海底の大航海時代」が始まっている。

いち早く海底資源の調査を始めた日本だが、いつも予算不足で美味しいところを他国にさらわれてしまう。

世界有数の海洋国家として日本政府と企業の覚悟が問われている。

一方、調査船と並んで番組が注目したのは中国の「浚渫船」の活発な活動である。

台湾のEEZにも頻繁に出没し、台湾当局が取り締まりを強化しているという。

中国大陸に近い台湾領の南竿島で拿捕された浚渫船には数千トンもの砂が積まれていた。

海底の砂を根こそぎ採取していたのだ。

海底の砂はコンクリートの材料や港の埋め立てには不可欠だが、中国で続く開発ラッシュのため国内の砂は取り尽くされて今では採取が厳しく制限されていて、業者たちは砂を求めて台湾や北朝鮮に群がっているという。

2020年10月には250隻もの浚渫船が南竿島周辺に集まり集団で海底の砂を吸い取った。

島の沖合を埋め尽くす船団が撮影されていた。

それはまるで沖縄戦の時のアメリカ艦隊のように見えた。

さらに浚渫船の航跡を分析すると、台湾で砂を採取した船が一旦フィリピンやインドネシアに寄稿、そこから香港などに向かう謎のルートが浮かびあがった。

調べていくと、この時期香港で新空港の建設が行われていて台湾で採取された砂が空港の埋め立てに使われたこと、さらに台湾から正式な許可が得られないため、他の国で架空の原産地証明書を手に入れ「洗砂(砂のロンダリング)」を行って高値で売っているのだということがわかった。

一方、中国の浚渫船は南シナ海での人工島建設でも威力を発揮し、安全保障上の観点からも注目されるようになってきた。

浚渫船の航路を分析すると、2013年9月ごろ、1隻の浚渫船がこの海域で活動を始めたことがわかる。

後に作られる7つの人工島のうち5ヶ所を行き来し、少しずつ珊瑚礁を砂で埋め立てていたと見られる。

アメリカはその動きに気づいていたが、これほどの大規模な地表の改造はうまくいかないと考えていたという。

しかし中国は国を挙げて浚渫技術を向上させ、今では200隻を超える浚渫船を保有する世界一の浚渫大国となった。

当初は1隻で行なっていた南シナ海での人工島建設も、国際社会の反応が薄いことを確認した2015年になると少なくとも5隻の船が加わって、1300ヘクタールの埋め立てが一気に進められた。

中国の最新鋭浚渫船は1時間に7000トンの砂を吸い上げる能力を持ち、そのままパイプから砂を吐き出して直接埋め立てを行うことが可能なのだ。

中国の浚渫船の活動は世界20カ国以上に及んでいることも今回の分析で明らかになった。

その主要な目的な港湾建設である。

スリランカのコロンボ港、マレーシアのクアンタン港、「海のシルクロード」と呼ばれるルート上に次々と布石を売っている。

そして今活動が活発化しているのが西アフリカ。

4年前に建設されたガーナのテマ港が西アフリカ一帯の拠点となっている。

ガーナでは今ゴールドラッシュに沸いていて、港から中国の工作機械を運び込み金やマンガンなどの鉱物を採掘しようと中国人ビジネスマンが乗り込んできた。

西アフリカ各地に建設される港湾を拠点に中国は内陸の資源開発に乗り出していて、その影響は今後ますます強まることが予想される。

19世紀の帝国主義の時代、中国は西洋列強に戦争で敗れ港を開放した。

列強はその港を拠点に、中国内部の鉄道や鉱山の権益を握り、事実上の植民地化が進められた。

これは中国人にとって忘れ難い歴史上最大の汚点であり、その時に味わった植民地主義的な手法を今度は中国自身がアフリカで行なっているように見える。

中国の海洋開発は調査船や浚渫船に限らない。

中国のニュースサイト「人民網日本語版」を少し見れば、今年に入ってからだけでも新たなプロジェクトが次々に実行されていることがわかる。

上の写真は、中国初の国産化深水水中サブシーツリー。

今月中旬から本格稼働を始めた海底油田を開発するための施設で、これまでは欧米企業に独占されていた技術だ。

さらに「深海オペランド科学実験ステーション」や世界初の「スマート型無人システム母船」など、様々な新兵器が投入されているようだ。

予算や議会に縛られる民主主義国と違って、中国では何事もトップが決めれば一気に動き出す。

国を挙げて世界秩序の再編成を目指す中国に対し、歴史的なインフレで足元が揺らぐG7のリーダーたちがどこまで結束を維持できるのか?

これは1年や2年で終わることのない、民主主義陣営の正念場となるだろう。

<吉祥寺残日録>「G7 vs 中国」時代の幕開け・・・それでも世界は強権的な国々であふれている #210614

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