<吉祥寺残日録>グリーン&デジタル!安倍さんと菅さんの話を聞きながら感じた「三本目の矢」 #201226

今朝、玄関のチャイムが鳴り、出てみると荷物が届いた。

Amazonの箱、すごく軽い。

中身はサッカーボール、先日Amazonで注文したものだった。

配達は年明けになると表示されていたのになぜか年内に届いたようだ。

言うまでもないが、右側が新しいボールで、左がこれまで使っていた古いボール。

ボールの表面がボロボロになってきたので同じものに買い換えたのだ。

といっても、このボールを使ってサッカーをするわけではない。

腹筋の緊張をほぐしたり、ストレッチの際に体をほぐす器具として使用するのだ。

サッカーボールを眺めていたら、ここ1週間ほど運動をさぼっていることが気になってきて、意を決して井の頭公園に向かった。

日差しが入るポカポカの室内から眺めているよりも、外気は冷たい感じがした。

公園の樹々もほとんど葉を落とし、すっかり冬の装いとなっている。

井の頭池の方はどんな具合になっているんだろう?

久しぶりに池を一周してみることにした。

まず立ち寄ったのは「井の頭弁財天」。

『弁財天(弁才天)はもともとはインドのヒンドゥー教の神様サラスヴァティーです。 このサラスヴァティーとは聖なる(豊かなる)河といった意味で、水の神様とされてきました』と、公式サイトには書いてあった。

なるほど、だから井の頭池のほとりに昔から建っているんだと少し納得する。

毎年、初詣で賑わうこの神社だが・・・

なんと来年の正月は参拝客を受け入れないという。

『1月1日〜1月3日、1月9日〜1月11日 終日閉門したします』という貼り紙があちらにも、こちらにも・・・。

これもコロナ対策のためではあるが、井の頭弁財天の長い歴史でも前代未聞の出来事かもしれない。

我が家も毎年、弁財天に初詣に来ているが、さてどうしたものかと思って妻に相談すると、「別に初詣なんかしなくていいんじゃない」とあっさり答えた。

私も別に信心深い方ではないので構わないのだが、吉祥寺に引っ越してから年に一回、弁財天の裏にある「銭洗い弁天」でお金銭を洗うようになってから生活が安定しているようにも感じられる。

やっぱり、年明け早いうちにお金銭を洗いに行きたい気もする。

弁財天を後にして、反時計回りで池の周りの遊歩道をランニングする。

午前11時ごろの井の頭公園は、普段の週末よりも人出が少ないように感じた。

紅葉シーズンも終わり、寒くなったせいもあるだろう。

池に漕ぎ出すボートの数も目立って少なくなった。

井の頭公園名物のボート乗り場も緊急事態宣言の時期には閉鎖されていたことを思い出す。

冬に入ってコロナの感染が急拡大する中で、緊急事態宣言を再び出すことを求める論調も目立つ。

私の妻も緊急事態宣言派だが、私にはちょっと躊躇する気持ちがある。

緊急事態宣言の時、吉祥寺では有名店がいくつも閉店した。

収入の安定したサラリーマンや年金生活者にとっては、コロナ感染を抑えることが最優先かもしれないが、経済を止めることで生活の糧を失う人が少なからずいることは考えなければならない。

昨日の夕方、菅総理が会見を開き、改めて静かな年末年始を過ごすよう国民に訴えた。

自らの会食について謝罪し、発信が足りないと批判されることを反省し、今後は国民とのコミュニケーションに努めると語った。

しゃべりが下手な菅総理だから、気の利いた言葉はもちろんないのだが、私はこの会見から一定の誠意を感じた。

「GO TO トラベル」に固執した菅さんはコロナを全国に拡散したと各方面から批判され、支持率が急落した。

でも、私は思うのだ。

朝日、毎日から読売、産経まで幅広く批判される菅総理は、安倍前総理よりもずっと信頼できると・・。

菅さんが会見を開く数時間前、安倍前総理は衆参両院において桜の問題で過去の発言を訂正し陳謝した。

しかし、相変わらずたくさんしゃべるわりに真実は何も語らない不誠実な答弁ぶりが目立った。

「戦略的」とか「国難」という派手な言葉が好きで、「地球儀を俯瞰する外交」を得意とした安倍さんには、メディアにもネット上にも多くの応援団がいた。

それに比べて菅さんには、応援団どころか信頼できる側近さえいないように見える。

菅政権が一歩踏み出そうとした夫婦別姓の問題も、安倍さんに近い議員によって阻止されてしまった。

それでも私には、「安倍応援団」のような気持ちの悪い連中が付いていないことだけをとっても菅さんの方が断然いい。

安倍さんが辞めた後、Yahooニュースなどから百田尚樹や高須クリニックといった“差別主義者”たちの意見が姿を消した。

それだけでも、どれほど日々気持ちよく暮らせることか・・・。

朝日、毎日は安倍さん同様、菅さんにも手厳しいが、安倍さん寄りだった読売、産経も菅総理には厳しい。

憲法改正にあまり意欲を示さず、「グリーン」や「デジタル」を政策の柱に据えようという菅内閣には「国家ビジョン」がないと批判している。

でも私から言わせれば、イデオロギー色の強い安倍さん的な憲法改正よりも、グリーンやデジタル面での構造改革を進めようとする菅さんの方が、ずっと日本という国の将来にとって重要な「国家ビジョン」を示していると感じるのだ。

クリスマスの昨日、メディアではコロナ変異種の問題や安倍さんの国会招致などがあって、あまり大きなニュースにならなかったが、私が注目した重要な発表があった。

政府が発表した温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにするための工程表である。

日経新聞にちょっと詳しい記事が出ていた。

政府は25日、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする工程表をまとめた。自動車の電動化などで電力需要が30~50%膨らむと想定し、再生可能エネルギーの比率は今の3倍の50~60%に高める目安を示した。脱炭素の投資を成長のてこにする戦略で、50年に年190兆円の経済効果を見込む。

引用:日本経済新聞
引用:日本経済新聞

環境先進地域であるヨーロッパはもちろん、アメリカや中国でも脱炭素社会への動きが進んでいる。

日本がガソリン車に固執する間に、中国が電気自動車で大きな世界シェアを獲得しようとしているのだ。

日本が旧来型のビジネスモデルに固執すれば、ジリ貧の未来が待っている。

こうした世界の潮流に対処するため、菅政権が「グリーン」と「デジタル」を柱に据えて、社会・経済全般にわたる構造改革を政府が主導して推進すると決めたことは、大きな政策転換である。

そもそも今回のコロナによって、日本社会がいかにデジタル分野で遅れをとっているかが白日の下に曝された。

「グリーン」や「デジタル」分野での改革が必要なことはもう10年ほど前から言われ続けていたのに、安倍長期政権は抜本的な方針も示さないまま改革を遅らせてきた。

安倍政権が掲げた「三本の矢」は結局、金融と財政だけに偏り、株価は上がったが肝心の構造改革には手がつけられないまま終わってしまった。

今、菅政権が矢継ぎ早に打ち出している方針は、まさに安倍政権が取り組むべきだった「三本目の矢」である。

ではなぜ、安倍政権は構造改革に取り組まなかったのか?

理由は簡単だ。

利害調整が難しいからである。

「グリーン」も「デジタル」もこれまで改革が進まなかったのは、それによって不利益を被る業界や官庁が猛烈に反対してきたからなのだ。

引用:日本経済新聞

菅内閣が示した工程表を具体的に見ていこう。

工程表は洋上風力や水素など14の重点分野を定め、課題と対応策をまとめた。家庭部門にも目標を置いた。住宅・建築物は30年までに新築平均で実質ゼロとする。自動車は30年代半ばに全ての新車を電気自動車(EV)などの電動車にする。

全体としては産業・運輸・生活の各部門が化石燃料から脱却し、電化する。そのためエネルギー源となる電力部門は石炭火力への依存をやめ、再生エネの比率を大幅に高めるという立て付けだ。

国内では現在ほとんど普及していない洋上風力は40年までに最大4500万キロワットの導入を目指す。原子力発電所45基分に相当し、再生エネ先進国であるドイツをしのぐ規模となる。風車は部品数が多く裾野が広い。産業育成へ40年に国内調達率を60%にする目標も打ち出した。現状では国内に風車は製造拠点がない。

燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない水素は火力発電での利用を念頭に50年に2000万トン程度の消費量を目標とする。国内の発電設備容量の2割ほどをまかなう想定だ。今は天然ガスの数倍のコストを需要の拡大によって同等以下に抑えられるかがポイントだ。水素への移行期の燃料とするアンモニアは30年に天然ガスを下回る価格水準での供給をめざす。

引用:日本経済新聞

中長期的な目標を立てても、それに向かって今すぐに動き始めなければ意味はない。

しかし、菅さんは本気だと私は信じる。

なぜなら、この人には取り巻きがいないからだ。

私利私欲も感じない。

そして何より、仕事が好きそうに見え、あらゆるしがらみを断ち切って本気で未来のために働こうという強い意志を感じるのだ。

安倍さんが目指したのは明治政府が作り上げた日本への回帰だったが、菅さんが目指しているのはまったく新しい未来のように私には見える。

強いて言えば、縄文時代や江戸時代のような比較的穏やかな社会だろうか?

「自然との共生」は縄文人の時代から、日本人のDNAに深く刻み付けられている価値観である。

日本ほど豊かな山林や海が残っている国は、世界中ほとんどない。

明治から昭和にかけて、破壊してきた美しい自然を復活させて、その中で一人一人が自由に生きられる社会が実現できれば最高ではないか・・・。

安倍さんが実現したかった「国家ビジョン」よりも、菅さんの思い描く未来の方が遥かに日本的なのである。

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