<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 ロシア軍侵攻2日目!突然戦争に巻き込まれた人たちの絶望 #220225

ロシア軍によるウクライナへの軍事侵略から2日目。

とても憂鬱な気分だ。

戦争というものは、リアルタイムで何が起こっているかを知るのは難しく、断片的な情報をつなぎ合わせて全体像を想像するしかない。

日本のメディアは昔と違って記者・カメラマンの安全第一で、戦場に自前のスタッフを送り込むことをしなくなった。

だから、テレビでもスマホで現地の人が撮影した映像を見ながら専門家を呼んでああでもないこうでもないと同じような話を繰り返すだけだ。

なので自ずと、現地取材をしていそうな海外メディアも含めて、いろいろなサイトにアクセスして自分なりに情報収集をしている。

今やフェイクニュースも戦争の一部なので、ネット上の情報を迂闊に信じるのは危ない。

こちらは、英BBCのサイトに出ていた地図。

戦火はウクライナ全土に及ぶ。

主に、ウクライナ軍の軍事施設や空港などが最初の標的となり、160発を超える巡航ミサイルが撃ち込まれたようだ。

ロシア国防省は83の軍事施設を破壊したと発表した。

この最初の攻撃で制空権を握ったロシアは、攻撃ヘリコプターを使って首都キエフなどの空港を攻撃、占拠しようとしている。

さらに、ロシア軍の戦車部隊がベラルーシやクリミア半島などからウクライナ領内に侵攻し、キエフの北方に位置するチェルノブイリ周辺はすでにロシア側の手に落ちたという。

ロシアの目的はチェルノブイリではなく、おそらくそのまま南進し首都キエフに突入するのだろう。

すでにロシア軍部隊は首都キエフから32キロの地点まで迫っているという。

黒海沿岸の軍港オデッサでもロシア軍が上陸し、一部地域を占領したとの報道もある。

空港や港といった重要拠点を最初に抑えて、そこから兵員や物資を送り込み長期戦に備えるのは戦争の常道、いったん軍事侵攻を決断した以上、後は計画通りに部隊を動かしていくだけだ。

ウクライナのゼレンスキー大統領は・・・

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日、ロシア軍の大規模侵攻を前に「われわれは孤立無援で防戦している。共に戦ってくれる者はいないようだ」と述べた。

また、ロシアの工作員が首都キエフに侵入したとして、住民に警戒と夜間外出禁止令の順守を呼び掛けた。

大統領によると、ロシア軍が侵攻を開始した24日、民間人を含めウクライナ人137人が死亡、316人が負傷した。

大統領は、自身もロシア側の最重要の標的となっているが、家族と共に国内にとどまっていると語った。

引用:AFP

コメディアン出身のゼレンスキーさんには自分を支えてくれる強力な組織はないだろう。

あるのは自らの言葉だけ。

ロシアの軍事侵攻後も身を隠すのではなく、自ら動画を発信し国民に団結を呼びかけ続けている姿はなかなか立派だと思う。

だが、世界有数の軍事力を持つロシアに対してウクライナがどこまで持ち堪えられるのかは心配だ。

「われわれは孤立無縁、共に戦ってくれる者はいないようだ」というゼレンスキー大統領の言葉は、大国の脅威にさらされている世界各地の人たちに重く響くことだろう。

早くからロシアの軍事侵攻を警告し、「もし侵攻したら厳しい代償を支払わせる」と繰り返してきたバイデン大統領が何を語るのか私も注目していたが・・・

「プーチンは侵略者だ。プーチンがこの戦争を選んだ。今、彼はその代償を払うことになる」

言葉は強いが、経済制裁の内容はあまりにも想定内、まさにプーチンさんが予想した範囲に留まった。

ロシアのウクライナ侵攻を受けたバイデン米大統領による24日の演説要旨は次の通り。

ロシア軍は理由も正当性も、必要性もなくウクライナに対する野蛮な攻撃を開始した。(ロシアのプーチン大統領は)米国と同盟国、パートナー諸国が相互の安全保障上の懸念に対処するために行った対話を通した誠実な努力を全て拒否した。プーチン氏はこの戦争を選び、彼と彼の国はその報いを受けることになる。今日、私は強力な追加制裁とロシアへの新たな輸出規制を承認する。これはロシアの経済に直ちに、そして長期的に深刻なコストをもたらす。

我々はロシアに与える長期的な影響を最大限にし、米国や同盟国への影響を最小限に抑えるよう制裁を設計した。我々は共同で影響力を増幅するため、欧州諸国や日本など世界経済の半分以上を代表するパートナーの同盟を構築してきた。我々はロシアが世界経済に参加する力を制限し、ロシア軍を成長させる手段を阻止し、ロシアがハイテク経済で競争する能力を弱める。

ロシアの主要4銀行を新たに制裁対象とし、米国内の全ての資産が凍結されることになる。米国や同盟国、パートナーによる制裁で、ロシアのハイテク輸入の半分以上を減らすと推計している。プーチン氏の長期的な戦略的野望に大きな打撃となる。我々はさらなる制裁を準備している。

我々は特に東部の北大西洋条約機構(NATO)同盟国を防衛するための措置を取る。米軍はウクライナにおけるロシアとの紛争には関与しない。米軍はNATO同盟国を守るために欧州に展開する。米国は全力でNATOの領土を守る。ドイツに米軍を追加派遣する。

ガソリン価格の高騰から米国の家族とビジネスを守るためにあらゆる方策を講じる。状況によっては戦略石油備蓄の追加放出を行う。(ロシアによる)この侵略に対抗しなければ、米国への影響はさらに深刻なものとなる。米国は横暴に立ち向かい、自由のために立ち上がる。

これは欧州全体、世界全体の自由にとって危険な時だ。プーチン氏は世界の平和を支える理念そのものに攻撃を仕掛けた。これは最初から彼らの安全保障上の懸念などではなく、むきだしの侵略、プーチン氏の帝国への野望が目的だった。プーチン氏が国際舞台でのけ者になるようにする。ロシアのウクライナ侵略に賛成する国は汚名を着ることになる。自由は勝利する。

引用:日本経済新聞

自国の経済への影響に配慮した結果だろうが、次の選挙のことが気になる民主主義国家のリーダーとしてはこれが限界なのかもしれない。

結局、独裁国家のリーダーに比べて取りうる手段は限られていて、そこをプーチンさんに見透かされたのだ。

ウクライナに限らず、香港でもミャンマーでもアフガニスタンでも、それまで自由を享受していて人たちが強権によってそれを奪われるのを見続けている。

とても絶望的な気分だが、そんな救いのない戦争を現地で記録し発信するジャーナリストの存在意義を改めて感じる。

米CNNのサイトを覗くと、突然の戦争に巻き込まれ途方に暮れる人々の姿をとらえた写真がたくさん掲載されていた。

戦争報道は、得てして戦況や犠牲者数、そしてプーチンの狙いや経済的な影響など俯瞰的な話に終始してしまうのだが、かつて戦場を取材した人間からすると、どうしても戦火に追われ苦しむ人たちのことが気になってしまうのだ。

写真や映像はどんな言葉よりも戦争の真実を私たちに伝えてくれる。

どんな大義を掲げようとも、戦争が起きれば多くの人が日常を失い、悲劇に突き落とされるのだ。

私がとても心を打たれたCNNの写真を引用させていただきながら、その写真がどこで撮影されたのかを記録しておこうと思う。

この女性は、ウクライナ東部ハリコフの集合住宅で空爆を受けたとされる。

24日に撮影された写真。

ハリコフはロシア国境に近いウクライナ東北部にあるウクライナ第二の大都市だ。

民間人は攻撃しないというロシア側の発表とは裏腹に、団地に着弾して子供が亡くなったという。

こちらは、24日、首都キエフを脱出するバスに乗り込んだ人たちだという。

一様に不安そうな表情だ。

当然だろう。

これだけ多方面からの侵攻だと、どこに逃げれば安全なのか誰にもわからない。

こちらは同じく24日、キエフ駅で撮影された写真だ。

幼い子供を抱えるお母さんたちにとって、戦争は文字通り地獄である。

自分一人でも大変なのに、子供をどうやって守るのか、慣れない土地でどうやって子供に食べ物を与えるのか、病気になったらどうすればいいのか、これまで考えもしなかった難題が突然目の前に現れたのだ。

それでも多くの人たちがより安全な西に向かって車を走らせ、各地でものすごい渋滞が起きたという。

ガソリンスタンドや銀行のATMにも長蛇の列ができている。

そうしてようやくポーランド国境に辿り着き、無事に国外に逃れられたとしても、そこから先どうなるのかわからない。

シリアやイラク、アフガニスタンなど、難民となった人たちの生活はみんな痛々しいほどに厳しい。

こちらはロシア軍の侵攻が始まる前、21日に撮影された写真だ。

ウクライナ東部の分離独立派が実効支配する地域を離れ、避難先のロシア・タガンログのホテルでプーチン大統領の演説を聞く家族。

彼らは親ロシア派の住民ということなのだろう。

軍事侵攻が始まる前、親ロシア派武装勢力の指導者は、住民たちに一斉避難を強制した。

全ては計画通りに進んでいるのだろうが、住民たちには突然の通告だったはずだ。

こちらは同じく黒海沿岸のタガンログで20日に撮影された写真。

親ロシア派の住民たちが一斉避難するために用意された一時避難所だという。

彼らは戦闘が収まるまで、ここで暮らすのだろうか?

親ロシア派はロシア軍の侵攻に合わせて、55歳以下の成年男性全員を強制的に軍隊に動員しているとも聞く。

ただ、国外に避難した人はウクライナ国民のごくわずか。

こちらの写真は、ウクライナ東部ノボフナティブカで親ロシア派による砲撃を受けて泣く子供をあやす女性の姿だ。

いつ何が起こるかわからない恐怖と戦いながら、住み慣れた自宅でひっそりと身を潜める人たちが大半なのだと思う。

戦争になると、普段は起こらないような犯罪や人権侵害行為が蔓延するようになる。

幼い子供を連れた女性にとって、砲弾に当たる以上に危険な状況が戦争によって作られるのだ。

こちらは、軍事侵攻前の20日に、東部ルガンスク州ポパスナ郊外の最前線で撮影されたウクライナの女性兵士の写真。

自分の国を守りたいという使命感と、強大なロシア軍が迫り来る恐怖の間で彼女はどんな心境でいたのだろう。

そして今、彼女はきっとロシア軍と戦っているに違いない。

親ロシア派による攻撃で死亡したウクライナ陸軍大佐の葬儀。

プーチン大統領が親ロシア派地域の独立を承認しロシア軍の派遣を発表した翌日の22日に撮影された。

本格的な戦争が始まって、戦死した兵士たちの葬儀もままならなくなってしまうのだろう。

岸田総理は今日午前記者会見に臨み、ロシアに対する追加の経済制裁などを発表した。

ロシア軍のウクライナへの侵攻は力による一方的な現状変更の試みでウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明白な国際法違反だ。国際秩序の根幹を揺るがす行為として断じて許容できず厳しく非難する。

主要7カ国(G7)をはじめとする国際社会と緊密に連携しロシアに軍の即時撤収、国際法の順守を強く求める。この事態を受け制裁措置を強化する。

具体的には

①資産凍結と査証(ビザ)発給停止によるロシアの個人、団体などへの制裁
②ロシアの金融機関を対象とする資産凍結といった金融分野での制裁
③ロシアの軍事関連団体への輸出、国際的な合意に基づく規制リスト品目や半導体など汎用品のロシア向け輸出に関する制裁

の3分野の措置を速やかに実施する。

引用:日本経済新聞

事前にアメリカから軍事侵攻の情報がもたらされていたため、2014年のクリミア侵攻の時に比べると素早い対応とも言えるが、プーチン大統領に打撃を与えるようなインパクトはない。

総理周辺からは、「あまりやりすぎると日本経済に打撃を与える」と当然のように声が上がっているという。

まさに「平時の対応」。

本当に日本が危機に陥らなければ、攻撃される側の気持ちには寄り添えないのだろう。

ウクライナから遠く離れた日本で不条理な戦争のニュースを聞く私たちには、豊かな想像力が必要だ。

もし自分がウクライナの最前線でロシア軍を待ち受ける兵士だったら、どんな気持ちになるのだろう。

自分の家族や生活をなんとか守りたい。

しかし、自分の死が目の前に迫っている。

寒くて暗い塹壕に心細そうにたたずむ女性兵士の姿を見ながら、「もし自分だったら?」と想像しながら、自分事としてウクライナの運命を見届けたいと思う。

<きちシネ>#17 「ミッドナイト・トラベラー」(2019年/アメリカ・カタール・カナダ・イギリス映画)&「ナディアの誓い」(2018年/アメリカ映画)

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