<吉祥寺残日録>イスラエル・UAE国交樹立の背後で何が動いている? #200814

中東のニュースというのは、どうも理解が難しい。

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今日飛び込んできた「イスラエル・UAE国交樹立」というニュースはどう読めばいいのか?

瞬間的に感じたのはトランプ政権が準備してきた再選戦略という意味合いだ。

就任以来、一貫してイスラエル寄りの姿勢を貫いてきたトランプ大統領だが、その動機となっているのはアメリカ国内の有力ユダヤ人たちの支持をつなぎ止めることと娘婿のクシュナー氏の存在だろう。

さらに言えば、徹底してイランを痛めつけることによって、イランと敵対しているサウジアラビアやUAEへの影響力を強める戦略もとってきた。

そうしたこれまでの実績が、ここにきてアラブ主要国の一角をイスラエル承認へと導いたのだろう。

アメリカが主導した過去の中東和平でも、エジプト、ヨルダンに次ぐ3つ目の成功例であり、日本人からすれば遠い印象を受けるが、アメリカ国内ではそれなりの成果とみなされるのかもしれない。

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日経新聞に興味深い分析が出ていたので、今後の推移を見る上で引用させていただこうと思う。

今回の関係正常化は次に続く入り口で、その先に控える本命はサウジアラビアだ。サウジの実力者ムハンマド皇太子とイスラエルのネタニヤフ首相、トランプ米大統領の娘婿であるクシュナー上級顧問を通じた緊密なつながりがここ数年、ささやかれてきた。

狙いはイスラエル、サウジ、米国が敵対するイランをめぐる包囲網の構築だ。11月に控える米大統領選でトランプ氏は苦戦が伝えられる。その前に対イラン陣営を確固たるものにしておきたい。

UAEはサウジの単なる露払いかといえばそうではない。役割はもっと大きい。中東で近年起きている様々な事象に、UAEという補助線を引いてみると、大きな構図が見えてくるからだ。

たとえば、2017年にサウジやエジプトなどアラブ4カ国が踏み切ったカタールとの断交だ。アラブの同胞国家間に生じた亀裂は、カタールによるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」への支援を嫌がるUAEのアブダビ首長国のムハンマド皇太子の意向が強く反映したとされる。

アブダビのハリファ首長が病床にある中で、事実上のUAEの元首であるムハンマド皇太子は、サウジのムハンマド皇太子にとっても頼れる兄貴の位置づけだ。両者の緊密な関係の中で、対イラン、イエメン内戦、カタール断交、石油政策にいたるまで、サウジとUAEの共同歩調が鮮明になっている。

アラブの湾岸産油国とイスラエルのパイプができれば、スタートアップの宝庫とされるイスラエル企業にオイルマネーが入り込む余地が生まれる。ハイテクや医療、農業などの分野でのイノベーション協力は双方に果実をもたらす。

その一方、米トランプ政権を介在する、イスラエルとサウジやUAEなどのアラブ諸国の接近は、イランと同国が支援するシリアや、和平の道筋が一段と遠のくパレスチナなど反イスラエル陣営との分断を広げることになるだろう。

イスラエルの建国以来、4度にわたって戦火を交えたアラブ諸国をつなぎ留めてきたのは、占領で追われたパレスチナの人々のもとに結集する「パレスチナの大義」だった。それが崩れたのはイラクが同胞の隣国クウェートに侵攻した90年8月2日の湾岸危機だ。

パレスチナ解放機構(PLO)はイラクのフセイン政権を支持、UAEやサウジの怒りを買った。これらの国で暮らすパレスチナ人は逃げるように出国した。「アラブはひとつ」とするアラブ民族主義が幻影となった日からくしくも今月で30年。その節目にUAEはイスラエルと手を結んだ。

出典:日本経済新聞「イスラエル・UAEの国交樹立、中東の構造転換映す 」

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私たちの世代は、パレスチナに同情的な国際世論の中で育ってきた。

だからどうしてもパレスチナの人たちを無視して進む打算の政治には反発するのだが、アラブがイスラエルと戦った4度にわたる中東戦争が終わってからすでに50年近くが経っているのだ。

当然、アラブの指導者たちの顔ぶれも変わる。

パレスチナ問題の解決がますます遠のく中で、中東は「パレスチナの大義」を捨てて、トランプ政権が主導するイラン包囲網に加わろうとしているように見える。

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今年秋の米大統領選挙では、民主党のバイデン候補がトランプ大統領をリードしている。

バイデン氏といえば、イラン合意をまとめた当事者であり、オバマ大統領は一貫してイスラエルに厳しい姿勢を貫いた。

イランを封じ込めることを望むイスラエルとサウジアラビアは、トランプ政権の存続を望んでいるのだろう。

それがこのタイミングでの国交樹立発表となったと私は見ている。

11月までには、第二弾、第三弾のサプライズが用意されているかもしれない。

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すべては、大統領選挙のために用意された打ち上げ花火・・・。

そう考えれば、ロイターが伝えているこんな記事も気になってくる。

「トランプ氏の娘婿、大統領選出馬表明のK・ウェスト氏と面会」

タイトルだけ見ても意味がわからないが、どうやらトランプ陣営では対抗馬であるバイデン氏の黒人票を奪うことを目的に黒人の人気ラッパーを大統領選に出馬させる計画が進行中らしいのだ。

トランプ米大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問は13日、米人気ラッパーのカニエ・ウェスト氏と最近会ったことを確認した。ウェスト氏は2020年米大統領選への出馬を表明している。

ウェスト氏はトランプ氏を支持していることで知られる。ウェスト氏の大統領選出馬を巡っては、民主党候補指名を固めたバイデン前副大統領から黒人票を奪い、トランプ氏の選挙選を有利にする狙いがあると指摘する向きもある。

出典:ロイター「トランプ氏の娘婿、大統領選出馬表明のK・ウェスト氏と面会」

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勝つためには手段を選ばない。

中東だろうが、ラッパーだろうが利用できるものはすべて利用する。

まあ、現役大統領としては当然といえば当然だろうが、中東に限らずこの先何が飛び出してくるのか注意深く見守る必要がある。

連日、「猛暑」「コロナ」ばかり騒いでいる日本のメディアが注目しないところで、いろんなことが進行中だ。

そして気づいた頃には、きっと日本にもその影響が及んでいるのだろう。

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