感染力が強いイギリス型の変異種がとうとう日本国内で確認された。
なぜか、静岡県だった。
厚労省によると、3人は20代と40代の女性、60代男性でいずれも1月上旬に発症。3人とも重症ではなく、自宅療養をしている。不特定多数との接触はない。
出典:時事通信
女性2人は、PCR検査で変異種感染の疑いが出ていた人の追跡調査を通じて感染が発覚した。男性は、変異種調査のために実施している陽性者の全遺伝情報(ゲノム)解析を進める中で感染が分かった。40代女性は20代女性の濃厚接触者で、20代女性からうつった可能性もある。
女性2人の変異種感染が発覚するきっかけとなった人も、英国に渡航歴はないという。
国立感染症研究所の脇田隆字所長は18日夜、記者会見し、「感染に面的な広がりはないが、状況から国内感染が起きたと推定できる」と述べた。脇田所長によると、3人から検出された変異種の遺伝子配列は似ており、感染研が詳しく調べている。
誰か「運び屋」がいるはずだ。
イギリスから帰国して検疫をすり抜けた誰かが静岡にウィルスを運んだ。
今の入国者数ならば、首都圏よりは「運び屋」を特定できる可能性が高い。
この際、静岡で大規模なPCR検査を実施してみると、通常のウィルスも含めて日本における市中感染についての貴重なデータが得られるだろう。
緊急事態宣言によって少しピークアウトの兆しが見えてきているだけに、ここは大きな勝負どころである。

この日、通常国会が開幕し、菅総理が所信表明演説を行った。
いかにも菅さんらしい、味も素っ気もない演説であり、45分近い演説の中でコロナ関連は7分あまりだった。

本当にこの人は、スピーチが下手である。
各メディアによる世論調査でも支持率が下がり続け、不支持率と逆転しているのもやむを得ないだろう。
でも、個人的には今も、菅さんには期待している。
評価しているのは、変なパフォーマンスをしないことと怪しい岩盤支持者たちがついていないこと。
次の総理候補としては河野太郎さんがトップに躍り出たようだが、個人的には菅さんの方が安全な気がする。
河野さんには確かに発信力があるかもしれないが、どうも精神状態が不安定で、独裁者になる危険性を感じる。
もちろん菅さんにも習近平さん的な独裁者になる可能性はあるが、安倍さんや河野さんよりもリスクが低いと私は見ている。
それは変な取り巻きがいないこと、身の回りがクリーンであるという理由が大きい。
とはいえ、総理は一国のリーダーであり、その発言で国民を勇気づけ団結させなければならないという意味では、菅さんは総理大臣としての資質に欠けているとも言える。
しかし、一方でメディアや世論も少し「情緒的」すぎるのではないかと思いながら眺めている。
「GO TO」ではしゃいでいたかと思えば掌返しで叩き、緊急事態宣言が遅いといいながら宣言が出されると飲食店が可哀想だという。
医療現場が逼迫していると危機感を煽るだけ煽りながら、今度はコロナ患者を受け入れない民間病院はけしからんと文句を言うだけで、ボトルネックになっている具体的な問題点を取材したり、医療崩壊を防ぐために参考になりそうな海外の事例を紹介したりと言う有益な報道がほとんどない。
ただスタジオでワーワー騒ぎ立てて、視聴者の不安を煽って、全部菅さんの責任にしているように見えて仕方がない。
安倍さんと違って、菅さんには擁護してくれる人がほとんどいないので、へそ曲がりな私としてはちょっと菅さんを応援したい気持ちになってくるのだ。
コロナ対応は、誰が総理になったとしてもそううまくはいかないだろう。
特に、この冬が最大の山場になることは最初から予想されていたことだ。
こんな時には、メディアはもう少し冷静な報道を心がけて、ギャーギャー文句を言うよりも、一つでもいいから役に立つ事例を見つけてきて紹介するような地道な報道姿勢を求めたい。
もし私が今現場の責任者であったなら、そういう編集方針を取っただろう。
みんなが右に行く時には意識的に左に、みんなが左に行く時には意識的に右に重心をかけながら伝える、そんな少し天邪鬼的な報道マンはいないものか・・・。
正しい道は多くの場合「中庸」にあるが、「中庸」を維持することは極めて難しいのだ。

さて、総理候補として急浮上中の河野太郎さんだが、昨日夕方突如菅総理に呼び出され、ワクチン担当大臣に任命された。
菅総理が公約する2月末までのワクチン接種開始のロジを統括する重要な役割である。
昨夜BS−TBSの番組に出演した河野さんは、珍しく慎重だった。
今、とても重要な局面であることを自覚しておられるのだろう。
河野さんは麻生派所属。
とはいえ、同じ神奈川県の選出議員として菅さんとも親しく、菅内閣の目玉閣僚として政権浮揚のミッションを任された格好だ。
菅さん自身、長く総理をやる気もないだろうから、河野さんを名実ともに総裁候補に押し上げる狙いもあるのだと思う。
ワクチンは菅政権にとって最後の命綱である。
これが予定通りスピード感を持って接種が実施されれば、国民の間に広がっている不安感も徐々に落ち着いていくだろう。
しかし、もし失敗したら・・・政権の命取りとなる可能性が高い。
世界を見渡すと、ワクチン接種の進み方はイスラエルがトップを独走している。
大金でワクチンを大量に入手しただけでなく、国中が有事対応に慣れている特殊な国家である。
それに比べて日本は未だに保健所が電話で入院調整をやっているようなレベルなのだ。
河野大臣の前に立ちはだかる壁は、洒落にならないほど高いだろう。
医療界は「伏魔殿」、医師会の調整さえままならない「小さな王様」のような病院の集まりである。
こんな医療界をなぎ倒して、残り1ヶ月余りの間に全国的なワクチン接種のロジを整えられるのかどうか、河野さんの手腕が試される時だ。
今求められるのは「情緒的な言動」ではなく、日々刻々と変化する状況に冷静に粛々と対応する効率的な「システム」である。