<吉祥寺残日録>さらば、トランプ!この4年間は何を世界に残したのか? #210121

ついにトランプさんがホワイトハウスを去った。

最後まで前例に逆らう「トランプ流」を押し通した異例のフィナーレだった。

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バイデン新大統領の就任式が行われる20日の朝8時、ホワイトハウスの中庭には大統領専用ヘリ「マリーンワン」が降り立ち、トランプ大統領とメラニア夫人がにこやかに乗り込んだ。

向かった先は、ワシントン郊外にあるアンドリュース空軍基地。

ここに自らの支持者を集めて、前例のない自らの退任式を行った。

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21発の祝砲が轟き、ヘリコプターを降りたトランプさんが最後の演説に臨む。

「信じられないような4年間だった。私たちは一緒に多くのことを成し遂げた」

いつものように、4年間の成果を自画自賛したトランプさん。

この人のスタイルは4年間まったく変わらなかった。

そして、演説の最後にこう語った。

「私はなんらかの形でまた戻ってくる」

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4年前の1月20日、大統領就任式に臨んだトランプ新大統領は次のように語った。

『意見をいうだけで、行動を起こさない政治家にはもう容赦しない。文句をいい続け、それが仕事になっているような政治家たちだ。中身のない対話の時代の終わりだ。行動を起こす時が来た。誰にも「できるはずがない」と指示されるいわれはない。米国人の心、闘志、精神が乗り越えられない課題は存在しない。我々は失敗しない。米国は再び栄え、豊かになる。』

そしてその日、私はこんなことを書いていた。

選挙演説を聴いているようだった。大統領になると言動は変わると予測する専門家もいたが、驚くほど変わっていないというのが私の印象だった。トランプさんはある意味では一貫している。言った事はやる、そういう大統領になるのだろう。

トランプ氏は言ったことを実行しているだけ。メキシコ国境の壁もきっと作るのだろう。「さすがにそこまではやらないだろう」という楽観論はいつか痛い目をみることになる。

吉祥寺@ブログ「トランプ就任式」

私が就任式の日に感じた通り、トランプさんは4年間まったくブレなかった。

ワシントンの政治に染まることなく、自らの公約をある意味「愚直に」実行し続けた。

その点では、選挙の時だけ耳障りのいい公約を並べ、当選した途端に態度を変える既存の政治家とは違う大統領だった。

議会からの強い抵抗があってなかなか予算が取れなかったが、それでも4年間に647kmに及ぶ壁がアメリカとメキシコの国境に建設された。

大部分は老朽化していた壁を再建しただけとの皮肉も聞かれるが、熱狂的なトランプ支持者から見れば、言うだけで何もしなかった歴代の政治家よりもずっと実行力があると映っただろう。

国内外に多くの分断をもたらしたトランプ政権のある意味「象徴」とも言えるのがこの壁である。

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トランプ政権の終焉に合わせて、中米ホンジュラスからアメリカを目指す移民たちのキャラバンが北上を始めたというのは皮肉な現実だ。

移民排除を公約に掲げていたトランプ政権と違い、移民に寛容な姿勢をとっているバイデン政権は今後難しい対応を迫られるだろう。

すべての人に優しい政策は、耳障りはいいが実現するのは難しい。

バイデンさんが副大統領を務めたオバマ政権の8年間を見ればそのことがよくわかる。

「核なき世界」を訴えても、結局何も変わらず、むしろトランプ政権の方が武力の行使には慎重だった。

「トランプは何をしでかすかわからない」という不確実性が抑止力となり、中国も北朝鮮も中東でさえ、大きな軍事衝突が新たに発生することなく4年が過ぎた。

ある意味、軍事大国アメリカが最も軍事力を行使しなかった4年間だったかもしれない。

その一方で、「フェイク」と「分断」が世界中に拡散された4年間でもあった。

トランプ大統領の4年間に、アメリカの民主主義や良識が破壊され、大きな危機に直面した。

それでも、4年前の就任式の日に私が懸念したほどには、絶望的な破滅には至らなかったとも言えるだろう

ともあれ、トランプ再選を阻んだアメリカ国民の「良識」に、民主主義のしぶとさと、将来のわずかな希望を見た思いがした。

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そして、20日の午前11時すぎ、バイデン新大統領が就任式に臨んだ。

新型コロナ対策に加え、直前に起きた連邦議事堂襲撃事件を受けて、一般の観客を入れない異例の就任式。

群衆がいないと、これほどまでに寂しい光景になるのか・・・。

バイデン新大統領の話は明日改めて書くことにして、今日はトランプさんの話を続けよう。

連邦議会議事堂で行われた就任式には、トランプ前大統領の姿はなかった。

前大統領が就任式典に参加しないのは実に152年ぶりのことだそうだ。

152年前に欠席したのは誰かと興味を持って調べてみると、第17代大統領だったアンドリュー・ジョンソンという人物だそうだ。

時は、南北戦争の時代。

ジョンソン氏はリンカーン大統領時代に副大統領を務め、リンカーン暗殺後に大統領に就任したものの、激しい政争の末に弾劾訴追された。

弾劾は無罪となったが、彼は1869年に行われた第18代グラント大統領の就任式を欠席したという。

ちなみに、このグラント大統領というのは、南北戦争の英雄、北軍を率いたグラント将軍らしい。

ただ、将軍としては高い評価を受けるグラント氏は汚職によって「史上最悪の大統領」の一人と評されていて、政治家というのは実に難しい商売だということがわかる。

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退任式を終えたトランプ大統領とメラニア夫人は、大統領専用機「エアフォースワン」に乗ってフロリダの別荘へと飛んだ。

空港や沿道にはトランプ支持者が詰めかけ、車の中から支持者に向かって愛嬌を振りまくトランプさん。

バイデンさんの寂しい就任式と対照的に、トランプさんの周囲にはまだざわめきが残っている。

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トランプさんは常に人の意表を突く言動で支持者を魅了してきた。

この人にある種の「カリスマ」があることは認めざるを得まい。

退任したトランプさんは4年後の大統領選再出馬をにらんで今後も影響力を保持したい考えのようで、今はまだ多くのトランプ支持者たちが復活を望んでいる。

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しかし、時間の経過というものは容赦がない。

「去るもの日々に疎し」である。

個人的には、4年後の再出馬は難しいだろうと予想している。

トランプさんの演説には確かに麻薬のような魔力があるのだろうが、しばらく離れて夢から覚めてみるとすべては幻のように消えてしまうのではないか・・・。

それでも、長年ゴシップの世界でメディアを賑わわせてきた百戦錬磨の人だ。

メディアが欲しがる話題を提供し続けて、自らのネットメディアを立ち上げて、誰もやったことがない方法で影響力を保ち続けるのかもしれない。

「犬が人間を噛んでもニュースではないが、人間が犬を噛んだらニュースだ」というメディア界でよく使われる言葉がある。

トランプという人は、まさに「人間が犬を噛む」ことで世間の話題をさらってきた。

バイデンさんが「いい人=凡庸」なだけに、国民の多くが退屈に感じ、再びトランプという「麻薬」を求めるかもしれない。

弾劾裁判の行方も絡んで、今後もトランプさんからは目が離せそうにない。

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