習近平の中国①

ゴールデンウィークの南京旅行を前に中国関連の本を読み始める。

まずは、元駐中国大使、宮本雄二さんが書いた「習近平の中国」(新潮新書)だ。

中国については、何となく知っているが、詳しく調べたことはない。最近の日本では、嫌中派が増えているようだが、私は中国についてもっと知りたいと思っている。

地政学的に日本は中国と関係なく生きてはいけない。中華思想を持つ隣人とうまく付き合うのは非常に難しい。昔は、海が両国を隔て、陸で中国と接する国々に比べると、適度な距離を保つことができた。常に中国がこのエリアの先進国であり、日本は中国から最新の技術や思想を学んだ。

さて、今の中国はどうか?

『「チーターよりも速く走っている象」が今の中国だ』と宮本氏は言う。

「習近平の中国」から気になった箇所を引用させていただく。

『13億の民を、8668万人の共産党員が首に縄をつけて引っ張っていくことはできない。224万人の人民解放軍、66万人の武装警察、160万人の公安がいくらもがいても、すべての国民を整列させて、思った方向に進ませることは不可能である。』

こうして、国家機密を盾に「隠したがり体質」だった中国でも情報公開が進んでいると言う。

宮本氏は「そう簡単に中国は崩壊しない」と言う。その理由は共産党の統治能力にある。

『現状を把握し、問題点を抽出し、対応策を考え、人材を養成し、その上で政策の実施を担保する共産党の力を決して過小評価してはならない。』

その具体例として2008年の四川大地震の対応をあげる。

『四川大地震は、マグニチュード7.9、死者行方不明者8万7000人を出し、負傷者は37万5000人に達する大災害であった。このときの対応の仕方にこそ、中国共産党の底力が示されている。 一例を挙げれば、多くの負傷者が次々に四川省の省都である成都市に運ばれてくる。そこもすぐに受け入れ能力を超える。そこで党は、中国の航空会社に航空機を成都に集めるように指示を出す。日本のように航空法第何条に基づき云々などと言う必要はない。党と国の命令であり、国有企業であろうと民間企業であろうとノーとは言えない。 成都空港に次々に航空機が集まってくる。その航空機に今度は300人、500人と負傷者を載せ、北京、上海、広州といった病院を多く持つ有力都市に向かわせる。後はそれぞれの都市の党と政府が負傷者の面倒を見る仕組みだ。こうして負傷者対策はあっという間に完了する。 私が視察した遼寧省の大連も大忙しだった。震災で授業を受けられなくなった生徒と先生を数千人単位で受け入れ、授業を続けされるのが彼らの仕事だった。復興の段階でも、沿岸部の豊かなところは、すべて震災復興を手伝わせられている。費用は基本的に沿岸部の地方政府が持つ。かくして1年で、かなりの復興が進んだ。 このように、党中央という頭脳のもと、党組織という神経系統を使って末端まで指示どおりに動く仕組みがつくられているのだ。これが私のいう“中国は政治で動く”、“中国は政治の国である”ということの今日的な意味だ。中国の政治の中心に共産党が座っているのである。』

確かに災害対応には中国式は役に立つかもしれないね。

続いて、共産党の基本構造について。

『共産党の基本形は、党規約に定められている。 中国で最も重要な言葉の一つに「単位」というものがある。中国の末端組織はここから始まる。個人が所属する組織であったり、団体であったり、部門であったりする。共産党の社会管理の基本となるものが「単位」と呼ばれるものであり、すべての分野が「単位」に整理されていく。』

『企業や学校といった「基層単位」と呼ばれるものには、共産党員以外の人たちも多くいるし、企業や学校を管理し運営するための組織は当然ある。それとは別に共産党の組織があるということだ。そこに正式党員が3人以上いる場合は、党の「基層組織」を作らなければならない。 この党の「基層組織」の中心にあって指揮するのが、党の「委員会」と呼ばれるものである。会社でいえば取締役会のようなものだ。この「党委員会」が、このレベルにおける最も重要な組織である。その構成メンバー(委員)とトップ(書記)は、党員の数が少なければ党員の直接選挙で、一定数を超えれば党員が選んだ「代表」からなる「代表大会」において選出される。「代表大会」が会社でいう株主総会のようなものだ。任期はすべて5年となっている。』

『これが中国共産党の基本形であり、この基層レベルの上に省レベルの中間組織があり、一番上に党の中央組織がある。全国レベルの党委員会は「中央委員会」と呼ばれる。 12年11月の第18回党大会で、第18期中央委員会が選出された。その直後に開催された中央委員会全体会議(一中全会)において、政治局委員と政治局常務委員会委員(常務委員)が選ばれ、総書記に習近平が選出された。 この過程では、まず8668万人の党員が2325人の党大会代表を選び、彼らが205名の中央委員を選び、中央委員が25名の政治局委員、7名の政治局常務委員、及び1名の総書記を選んだ。』

『党大会は5年に一度しか開かれないので、その職務と権限は中央委員会に移譲されている。中央委員は、大臣だったり地方の党委員会の書記や省長だったりするので、彼らが参加する全体会議をしょっちゅう開くわけにはいかない。大体、年に1回程度だ。 そうなると、中央委員会の職務と権限を政治局に移譲しておかないと、いざという時に間に合わない。政治局委員は、政府でいえば副総理クラスの位置付けである。党、政府、人民解放軍などの主要部門を任されており、会議に頻繁に出席して国政全般を見ることは難しい。 そこでいわば専従として国政を四六時中眺め、必要な決定をしていく仕組みとして政治局常務委員会が作り出された。流行りの言葉を使えば、彼らが「チャイナ・セブン」であり「党中央」そのものなのだ。』

今年、5年ぶりの党大会が開かれる。中国にとって大切な勝負の年だ。

ちなみに、「中南海」についての説明も引用しておく。

『地方勤務者を除き政治局委員以上は全員が中国共産党本部のある「中南海」と呼ばれるところで勤務している。 北京には有名な観光地でもある北海公園がある。人工の湖である北海は、中海と南海と呼ばれる別の人工湖とつながっている。いずれも王宮(紫禁城)の一部であったが、北海は公園となり、中海と南海、つまり「中南海」は共産党の本部になった。』

なるほど。ニュースでよく聞く言葉も、その正確な意味を知らずにここまで来た。

知らないことが多いということは、これから「知る楽しみ」がそれだけたくさん多くあるということでもある。

 

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