疑惑・加計学園①

「一強」の安倍総理最大の弱点、「加計学園疑惑」で初めてダメージになりそうな動きがあった。前の文部科学事務次官・前川喜平氏が突然会見を開き、野党が追及している内部文書が実在したと証言したのだ。

まだこれだけでは安倍総理の政権基盤が揺らぐことはないだろうが、対応を間違えると政権発足以来初めてのピンチを迎える可能性がある。

産経新聞が会見の詳しい内容を伝えてくれているので、そちらを引用させていただく。

『 愛媛県今治市における国家戦略特区において、新しい獣医学部の新設を規制改革のもとで認めるべきだと、これが昨年来、一つの大きな行政の課題になっていた。私はその経緯の中で、文部科学省の事務方の責任者として経緯に関わっていた。

その間の行政のあり方については、私はその当事者の立場の中で非常に疑問を感じながら仕事をしていたということを申し上げざるを得ない。今般、国会でその間の経緯を示す文書が議論され、野党からその存在について政府に対し問いただすということが行われ、また文科省において、その文書、8枚の文書について本物であるかどうか、真正なものかどうか、存在するかどうかについて、文科省の中で調査が行われたと聞いているが、その結果、これらの文書については確認できなかったという結論になったと聞いている。

私は大変残念な思いを抱いた。これらの文書は私が実際に在職中に共有していた文書なので、これは確実に存在していたわけであります。そのことについてまず申し上げたい。

もちろん、今回の文書をめぐっては、こういう発言を私がすることによって非常に文科省の中にも混乱が生じるだろうと思っている。文科省としては調査をしたけれども確認できなかったといっているわけですから、私が(記者会見に)出てきて「それはありますよ」ということによって、非常に文科省も困った事態になるということだろうと思っていて、私の後輩たち、私がお世話になった大臣、副大臣といった政務3役の方々に、この件でご迷惑をおかけすることになるかもしれない。その点については大変申し訳ないと思うが、あったものをなかったものにできないということで申し上げたいと思っている。

私は今治市における国家戦略特区の獣医学部新設の経緯について、その当事者であったわけで、その当事者として少なくとも昨年から今年の1月21日、私が辞職するまでの間は当事者として業務に携わっていた。

その間に十分まっとうな行政に方針を戻すということができなかった。結局、押し切られてしまったことは私自身が負わなければいけない責任は大きいと思っている。私が事務方のトップとして、大臣を支える事務次官として十分仕事ができなかったということなので、私からもこの場を借りて文科省にもおわびしたい。

こういった思いから今回この文書の真正性、信憑性、それから国家戦略特区において今治市の提案が認められ、規制改革が行われ、獣医学部の新設が行われるという運びになった経緯について私が思うところを述べたいと思った。

国会において提示され、野党からの要求に基づいて文科省で調査をした文書が8種類あったと承知している。この8種類の文書については、私が昨年の9月から10月にかけて、今治市の国家戦略特区の関係の課題について、文科省の高等教育局専門教育課から事務次官の立場で事務次官室において報告を受け、相談を受けた際に、私が担当課である専門教育課から受け取った文書に間違いない。ですから、これは真正なるもの。

専門教育課で作成され、また幹部の間で、共有された文書である。これは間違いないことであります。従って文科省においても、改めて調査をすれば存在が明らかになるはずのものだと考えている。

いくつかの資料があるが、最初の資料として、(週刊)文春の中でも紹介されているが、「平成30年4月開学を大前提に逆算して最短のスケジュールを作成し、共有していただきたい。これは官邸の最高レベルがいっていること」という、こういうペーパーがあるが、このペーパーは私の手元にあるスケジュールだと9月28日に私が専門教育課から説明を受けた際に受け取ったものと同じもの。

ここが内閣府から文科省に強く要請が来た最初の、一番強い要請が来た話であって、この要請を文科大臣まで上げて、文科省が対応を求められた、そういったきっかけになった文書だと。

この文書に対して文科省としては非常に苦慮していたわけだが。それも含めて大臣からも懸念点が示された。なぜ30年4月の開学でなければならないのかという点や、やはりこれは与党の中にもいろいろな意見があるから、与党の中での議論が必要ではないかという大臣からの指示もあった。この指示を受けて内閣府でまた確認をするという作業を担当課はしていた。

その間、文科省も、農水省とか厚労省であるとか関係する省庁にコミットメントしてほしいということは幾度も繰り返していっていた。そういう状況があった。

10月4日の日付がついている、義家(弘介)副大臣レク概要というのがあるが、義家副大臣はこの当時、農水省のコミットメントを求め、そのために内閣官房の萩生田(光一)副長官などにお願いして、文科省だけでなくて獣医師の養成、あるいは新しい分野のライフサイエンスなどの分野に責任を持つ農水省、厚労省の参加を求めると、こういう作業をしてくださっていた。

さらに大臣ご確認事項に対する内閣府の回答というという文書がある。この文書は私の理解する日程からいくと、10月17日に専門教育課から私が説明を受けた際に受け取った資料です。この内閣府からの回答というのはいわば内閣府からの最後通告に近いもので、与党での議論はいらないということが書いてあるし、30年4月開学というのはもう決まったことだと。そこに総理のご意向という言葉も出てくるわけですが。

30年4月ではなくて31年以降になるのであれば、それは文科省の設置認可の手続きが遅れることでそうなるのは構わないが、層でない限り30年4月開学が決まったことで、大前提であると、こういったこともいわれている。

また農水省であれ厚労省であれ参加を求めることはできないと。会議に呼ぶことはできるけれども、内閣府としてこの2省の実質的な参画を求めることはしないと、そういったことが申し渡された、その時の資料でございます。

いずれも真正なるものである、本物であるということをここで申し上げることができる。

これらの文書は私が担当課から説明を受けた時点、昨年9月から10月にかけて作成され、私が受け取ったことは間違いない。それが現在もあるかは、私は現在の状況を確認していないので分からないが、少なくとも作成したもの、共有したものはそこに今でも。あるいは、パソコンの中、サーバーの中にあるのかもしれない。そこは何とも申し上げられない。少なくとも私が在職中に作成され共有された文書であることは間違いない。

愛媛県今治市、広島県の国家戦略特区において、今治市における新しい獣医学部の新設に向けて、新たな追加規制改革を行うかどうかは、2015(平成27)年から既に検討課題にはなっていた。

ただ、検討するにあたっては、閣議決定で「日本再興戦略改定2015」というものがある。2015年6月に閣議決定されたこの日本再興戦略の中で、新たな獣医学部の新設を認めるかどうかを検討するにあたって4つの条件があると示した。

それは、現在の提案次第による既存の獣医師養成ではない構想が具体化する。2つ目は、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになる。さらに、それらの需要について、既存の大学学部では対応が困難である。4つ目に、近年の獣医師の需給の動向を考慮しつつ全国的な見地から検討する。こういう4つの条件のもとで検討することが閣議決定で決まっていた。

だから、獣医師養成の大学の新設を、もし追加規制改革で認めるなら、この4つの条件に合致していることが説明されないといけないが、私は4つの条件に合致していることが実質的な根拠をもって、示されているとは思えない。

また、文部科学省としては、大学の設置認可の権限を法律上持っているが、きちんと国民に説明できる形で権限を行使しないといけない。いったん設置認可された大学には国民から預かっている税金から、私学助成を行わないといけない。従って大学の設置認可はやはりきちんと根拠のある形で慎重に行わないといけない。

特に医師、獣医師、船舶職員など特定の分野については、文科省の認可基準において、将来の人材需要が見込めないということで、原則的に新設をしないという考え方になっている。

獣医師、獣医学部についても、その中で獣医学部の新設は行わないという基準があるわけだ。それは、獣医師の将来需要が見込まれないという前提があるからだ。

獣医師の将来需要は、どこが責任をもって見通しを立てるのか。これは農林水産省だ。農水省は獣医師国家試験、獣医師という業そのものを所管しているから、獣医師の将来の需要については農水省がどんな分野でどういう獣医師が必要であるかきちんとした見通しをたてないといけない。

あるいは獣医師ではない別の分野で、獣医学部で養成する人材で、新たな分野は、日本再興戦略でいわれているような、ライフサイエンスなどの分野で新たな需要がある。その新しい分野の人材需要は、それぞれ責任がある省庁で、明らかにされないといけない。

例えば、新しい薬をつくる新薬の開発について、獣医学部で養成すべき人材がいるなら、それは厚生労働省で人材需要について見通しを立てないといけない。文科省としては、責任ある省庁が将来の人材需要についてはっきりと見通しを立てない限り、告示で一律新設しないといっている分野で、新たな学部を新設することに踏み切ることはできない。

従って、文科省としては、農水省や厚労省の実質的な参加がなければ結論は出せないと言い続けてきた。

ところが、結局、農水省も厚労省も、将来の人材需要についての明確な見通しは示さなかった。そのまま特区での規制改革が行われてしまった。獣医学部の新設について、これまでの特例を認めるべきだという結論がでてしまったわけだ。

ですから、文科省としては負いかねる責任を負わされたと思っていたし、現在でも私はそう思っている。改めていえば、もともと検討にあたって4つの条件があった。この4つの条件に合致しているかどうかを判断すべき責任がある内閣府はそこの判断を十分根拠ある形で行っていないと思っている。

また、将来の獣医学部で養成すべき人材について、その人材需要についての見通しを明確に示すべき農水省あるいは厚労省はその人材需要についての見通しを示していない。従って、責任あるそれぞれの省庁が、その役割を果たしていない中で、文科省において、この設置認可の審査するところまで来ている。

これは非常に行政のあり方として問題がある。極めて薄弱な根拠のもとで、規制緩和が行われた。また、そのことによって、公平公正であるべき行政のあり方がゆがめられたと私は認識している。

ただ、経緯がそうであっても、今の状況は、文科省がこの3月に学校法人加計学園(岡山市)から獣医学部新設の申請を受け取り、それを大学法人学校法人審議会の審議に付託し、そこで審議会が審査を行っている段階だ。少なくとも文科省は、きちんと基準にのっとって、公平公正な審査をして、確かに、この獣医学部はきちんと審査した結果だという形で結論をだしてほしいと願っている。これ以上、行政のあり方をゆがめることがないようにしてほしい。

まあ、私が加計で責任ある立場にいたということは事実だ。ですから、私の努力不足があったということは認めざるを得ない。その点は最初に言った通りだ。しかし、少なくとも文科省がこの先、大学の設置認可という文科省の専権事項で仕事しないといけない。その部分においてはきちんとした審査をしてほしいと思う。

--内閣府が文部科学省に「平成30年4月開学」を通告したよりも早く、愛媛県今治市の担当課は市議会議員に「4月30日だ」と言っている。内閣府と今治市が直接連絡しあっていたと感じたか

前川氏「私は内閣府と今治市の交渉の経緯は全く承知はしてない。内閣府から言われたことだけしか私は承知しておりません」

--頭越しにやられたことを今はどう思うか

前川氏「いずれにしても、文科省で設置認可の審査をしない限りは大学はできませんので、あらかじめいついつに大学をつくるということは、本当は言えないはずなんですよ。

審査の結果、これは落ちてしまっているということもあり得ることですから、許認可なしに勝手にできることであれば、できることかもしれませんし、国が自らやることであれば、いつまでにやるということはいえるかもしれませんが、民間が行い、国が許認可を行う事業ですから本来、いついつまでに必ずやりますということはできない類いの問題だと思っている」

--大前提として、この問題は加計学園ありき、今治市ありきだったということでいいか

前川氏「関係者の暗黙の共通理解としてあったのは確かだと思う。口に出して『加計学園』という言葉を使ったかどうかと、そこは使っていない場合が多いと思います。

しかし、内閣府においても文科省においても、この国家戦略特区で議論している対象は、今治市で設置しようとしている加計学園の獣医学部と。そういう共通認識のもとで仕事をしていたと認識しております」

--国会では8つの文書以外に、共産党が提出したものが出ている。これらも承知しているか

「ちょっと今、拝見した限りでは、確たることは申し上げられませんけれど、私が担当課から受け取ったものと同一のものではないかと思われます」

--証人喚問を求められた場合、出ることは

「証人喚問があればまいります」

--政府は、文科省の調査で存在が確認できなかったという主張を崩していない。文科大臣は「お辞めになった方についてはコメントしない」と。これらに対して感想は。また、菅義偉官房長官は記者会見で、前川氏が文科省を辞めることについて「地位に恋々としがみついていた」という発言しているが、名誉毀損などの法的な措置をとる予定は

前川氏「まず、文科省の調査に関してですね。問題になっている文書が確認できなかったという調査結果ですけれども、私が思うにもう少しちゃんと調査をすれば確認できるのではないかと思います。また、松野(博一)大臣が、私の言動にはコメントしないとおっしゃるのは、それはそれで結構だと思うのですが、私の偽らざる気持ちを申し上げれば、大臣も含め、文科省の皆さん、私の後輩たちも含め、本当に気の毒だと思っているんです。

あるものをないといわざるを得ないとか、できないことをできるといわざるを得ないとか、そういう状況に追い込まれていると私は受け止めております」

--文科大臣の直接の懸念の言葉を前川氏は聞いたか

前川氏「いや、今うかがった限りの印象です。松野大臣には在職中、大変お世話になり、私は本当に尊敬し、敬愛する政治家なんですよ。ですから、本当に私の偽らざる気持ちとしては、気の毒であると。もう一つは、私が十分サポートできなかったことが申し訳ないと。そういう気持ちの方が先にたちます。

それから、私の退職、辞職の経緯は、誰に恨みを持つようなものでもなく、私は文科省のいわゆる天下り問題、再就職規制違反の問題について責任ある立場におりましたから、これは再就職等監視委員会からも違法行為を指摘されましたし、私自身も自分自身が行った違法行為、それから違法行為を行った職員に対する監督責任、そういったものが問われたわけでありまして。私が引責辞職したのは、自らの意思です。

1月5日だったと覚えいますけれども、私の方から松野文科大臣に監視委員会の調査の状況、文科省としての対応の状況などをご報告した際に、かなり多くの処分が不可避です、こういった事態にいたったことについては私が責任を取らざるを得ないと思いますと。従って、責任ある形で、辞職させていただきたいと申し入れた記憶がございます。私の方が、大臣に。

事務次官の辞職というのは勝手にはできない。辞職を承認する辞令をいただかなければならないので。辞職を承認していただきたいと私の方から大臣に申し上げた。大臣は慰留してくださいました。

しかし、私はこれは辞めるしかないということで、官邸とご相談したいとうことで、官邸にも大臣のお許しを得て、ご相談にまいりました。

ご相談の相手は、杉田(和博)官房副長官です。杉田副長官にも、これから起こるであろう文科省の職員に対する処分がどのようなものになるかの概略を説明しながら、私自身の引責辞職についても、お許しをいただきたいと申し上げたところ、『いいだろう』というお話を承りまして、それを持ち帰り、大臣に官邸からもご了解をいただきましたということで、事実上、私の辞職がそこで決まったということです。

また、私自身の処分に関しては、私自身がお手盛りでやったわけではございません。私は省内で処分を受ける側に回るということがはっきりしていたので、どのような処分をするかということについては、文科省の中に独立したチームを設けて、私はそこに入らず、そのチームで監視委員会とも調整を行い、大臣との相談も行い決めていったということで。

私は結果として減給2カ月という処分をそのまま受け止め、処分を受けたわけですね。ですから、地位に恋々としたとか、あるいはジタバタしたとかということは私はなかったと思っている」

--(獣医学部新設計画をめぐる)一連の記録文書にある「総理のご意向」「官邸の最高レベル」という言葉は、あくまでも内閣府の藤原(豊)審議官の言葉ということだが、もし首相の意向がなかったにもかかわらず、審議官が勝手に使ったら大変なことになる。これまでの経験で首相の意向について、嘘をつくとかつかれた経験はあるか

前川氏「私自身は経験ないです」

--そういう文言があったとしたら、それは信じてしかるべきだという前提で読むという理解でいいか

前川氏「私が目にした文書は、文科省の専門教育課が作ったものでありまして、専門教育課の職員が内閣府の藤原審議官のもとを訪れて、藤原さんがおっしゃったことを書き留めた。そういう性格の文書です。

私は部下だった職員が書いてあることを聞いてきたのだと。100%信じられると思っておりますので、藤原さんがそういうことをご発言になったということは私は確かなことであろうと思っております」

--藤原さんが嘘をつく可能性はあるか

代理人弁護士「それは藤原さんしか分からないので」

--獣医学部新設について、当初なかった「広域的に獣医学部がない地域に限る」という基準を具体的に指示したのは誰か

「このプロセスは、文科省が実質的に責任を負えないプロセスなんですね。これは内閣府が主務官庁である国家戦略特区の枠組みの中で、こういった判断が行われておりますので、文科省としてそうしてくれとお願いをしたことはないといえます。

ですから、どうしてこういった形の文言になったのかは私ども文科省としては説明できない。内閣府から説明していただかないと、私どもとしては説明できない問題です」

--前川氏は直接、安倍(晋三)首相とやり取りはしていないのか

前川氏「この問題について安倍総理と直接、お会いしたことはございません」

--その必要性はないと感じていたのか

前川氏「私のレベルで、この問題について安倍総理にお会いすることは考えられないですね」

--一連の文書が公になってから安倍首相は一言もコメントしていない。どう考えているか

前川氏「そのことについて私はコメントする立場にはございません」

--身の危険を感じたこと、権力側から嫌がらせを受けたことはあるか

「まあ、嫌なことは起きることは起きますけども、それが権力側の嫌がらせかどうかというのは分かりません」

--「最高レベルがいってることだ」という9月28日付の文書を目にしたときに率直にどう感じたか。また松野(博一)大臣と2人で安倍首相に官邸で会っていると思うが、そのときには話はしなかったのか

前川氏「まず、2番目のご質問から。私が総理のところに大臣に同行していくケースはございましたが、それは私が記憶する限り、教育再生実行会議の進め方についてです。議事内容であるとか、段取りとか説明にうかがったはずで、この段階で国家戦略特区の問題について、ご相談があることは考えにくいですし、私の記憶ではそんなことはしておりません」

--前段の質問は

前川氏「官邸の最高レベルがいっているということをどう受け止めたかですか? 私は官邸の最高レベルというのが誰のことだか分かりませんが、一番上であれば総理だし、その次といえば官房長官でしょうから、そのお二方なのかなと思ったということですし。もし、本当にそうであるとすれば、それはやはり気になることではありましたね」

--文科省としてそれに対してどう対応したのか

前川氏「文科省のスタンスは一貫しておりまして、規制改革を行い、設置認可が申請できるようにするためには、まず一つは人材需要があるということが明確に示されなければいけないと。それを示すのは農林水産省、あるいは厚生労働省。

やはり、獣医師ですから、メーンは農水省なんですよ。農水省が責任を持って、将来の人材受給について見通しを立ててくれなければいけない。そこで現在よりも多くの獣医師が必要ですということを明確に言ってくれなければ、獣医学部の新設に門戸を開くことはできないと。これは一貫した立場だったんです。

それからもう一つ。国家戦略特区で獣医学部を認めるかどうかの検討に当たっては、4つの条件が閣議決定されていましたから。この2015年6月の閣議決定の条件に合っているかどうかと。これは国家戦略特区を担当している内閣府において、責任を持って判断してくれなければ困ると。

その上でなければ、獣医学部の新設申請を解禁するということにはなっては困るというのが文科省の一貫した立場で、その関係省庁の責任ある対応をずっと求めていたわけです。

どんなに急いだとしてもそれがなければできませんということで、4条件は淡々とクリアしているんですねと。ちゃんと実質的な根拠を持って内閣府で判断してほしい。将来の獣医師の需要について、農水省、厚労省が、こういった人材が必要ですと明確に示してほしい。その上でなければ、獣医学部の設置を解禁することはできないということをずっと訴えていた。

ですから、どのように急ぐといわれても、それはやっぱりその条件が満たされなければならないということは言い続けていたというのが文科省の一貫した立場だった」

--書面だけど官邸の最高レベルという話が出てきた。この言葉が急がせたのか

 前川氏「最終的には内閣府に押し切られたと私は思っていますが、国家戦略特区で規制改革をするかどうかについては、主務官庁は内閣府ですから。内閣府が最終的にそのように判断したのであれば、もう私どもの手の及ばないところであると。致し方がないと。それを受け止めるしかないと」

--官邸の最高レベルから来ているということについて、松野大臣と話をした記憶は

前川氏「私はその松野大臣への説明の場には居合わせていませんが、担当である高等教育局からは、松野大臣にそのことは説明しただろうと」

--官邸から来ているぞ、ということか

前川氏「内閣府の審議官の言葉として、上げたのではないかと思います」

--読売新聞に前川喜平氏が出会い系バーに行っていたという記事が出ていた。権力の脅しではないかと思うが、こういう記事についてどう思うか。今回、自ら記者会見することに影響したのか

前川氏「出会い系バーというものがありまして、読売新聞で報じられたが、そういったバーに私が行ったことは事実です。

経緯を申し上げれば、テレビの報道番組で、ドキュメント番組で、いつどの局だったかは覚えていないが、女性の貧困について扱った番組の中で、こういったバーでデートの相手を見つけたり、場合によっては援助交際の相手を見つけたりしてお金をもらうという女性がいるんだという、そういう女性の姿を紹介する番組だった。

普通の役人なら実際に見に行こうとは思わないかもしれないが、その実態を、実際に会って話を聞いてみたいと思って、そういう関心からそういうお店を探し当て、行ってみた。

その場で話をし、食事したり、食事に伴ってお小遣いをあげたりしながら話を聞いたことはある。

その話を聞きながら、子供の貧困と女性の貧困はつながっているなと感じていたし、そこで話を聞いた女性の中には子供2人を抱えながら、水商売で暮らしている、生活保護はもらっていないけれど、生活は苦しい。就学援助でなんとか子供が学校に行っているとか、高校を中退してそれ以来ちゃんとした仕事に就けていないとか。あるいは通信制高校にいっているけどその実態が非常にいい加減なことも分かった。

いろいろなことが実地の中から学べた。その中から、多くの人たちが親の離婚を経験しているなとか、中学・高校で中退や不登校を経験しているという共通点を見いだした。

ある意味、実地の視察調査という意味合いがあったわけですけれど、そこから私自身が文部科学行政、教育行政をやる上での課題を見いだせた。ああいうところに出入りしたことは役に立った。意義があったと思っている。

あと、読売新聞がこの問題をどうして報じたのか。私の極めて個人的な行動ですから。それをどうして読売新聞があの時点で報じたのかは私には分からない」

--権力の脅しかということはどうか

前川氏「私はそんな国だとは思いたくない」

代理人弁護士「その点は明らかな証拠はないですから、何とも答えようがない」

--獣医学部新設計画をめぐる記録文書に関し、1枚目の内閣府からの伝達事項について説明を受けた際に、さらに追加で口頭で説明されたことはあるか

前川氏「このペーパーに則して内閣府の意向を聞いた。これ以上のことは聞いていないと思うが、その際に、文科省としてのこれまでスタンスですね。構造改革特区で15回にわたって規制緩和をお断りしてきた経緯について担当課から説明を受けた記憶がある。私も昨年の6月下旬に事務次官になったので、それ以前の経緯について十分に承知していなかったので、その辺の経緯についても説明を受けた」

--前川氏から専門教育課にこの文書に関連して何か聞いたか

前川氏「詳しいことは覚えていない」

--問題の文書は幹部で共有したというが、具体的に持っているのは誰か

前川氏「ものによって違う。共有といっても、担当課が個別に説明にいって渡している。どの資料をどの人に持っていって渡しているかは私も分かりません。担当課でなければ分かりません。

一連の資料は、いわゆる『レク資料』と呼ばれるもので、部下が上司に説明するときに使う。複雑な課題を、要領よく要点を並べて分かりやすく整理したペーパーで、通常こういうものには日付も付けませんし、担当課の名前も付けませんし、保存用じゃありませんので、その場で説明する場合に使ったものです。どの人の説明にどの説明資料を使ったかは担当課でないと分からない」

--松野(博一)文部科学大臣がそのうちのいくつかを読んでいる、持っているということは考えられないか

前川氏「松野大臣の説明にも使った可能性はあります。ただ、その場合は大臣は自分で保管しませんから、その場合は秘書官なり、他の方なり、あるいは担当課が持っているものであれば、大臣がいつも保管しなくてはいけないものではないので」

--そうすると、大臣が知らないのはおかしくないか

「そこはちょと、コメントできない」

代理人弁護士「評価を聞く質問はなしにしてください。事実を聞いてください」

--朝日新聞にあったが、昨年秋に官邸幹部から出会い系バーにいったことを指摘されたというのは、いつか。幹部とは誰か

前川氏「日付は覚えていません。指摘を受けたのは杉田(和博)官房副長官からだ」

--ちょうどそれは加計学園でやりとりしていた時期と重なるのでは。昨年9月か

前川氏「時期的には重なるかもしれないが、事柄として関連があるとは思っていない」

--そのときは社会的な探訪と説明したのか

前河氏「そのときは言い訳はしていない」

--文書のあるなしについては水掛け論になっている。ペーパーを残していた理由、それが真実と証明できるもの、または手帳でのやりとりだとか証拠のようなものは他にないか

代理人弁護士「当時ではなくて、現在、彼の手元に書面がある。それについて、現段階は説明を控えさせていただく」

--その理由は

代理人弁護士「その理由についても(控える)」

--証人喚問を控えて、ということか

代理人弁護士「それもあるかもしれない」

--(獣医学部新設を認める)4条件に合致していないという説明があったが、具体的にどこが一番合致していないのか

前川氏「まぁ、あの4条件全てですけども。特に新しい分野における需要が明らかになっているのか。例えば新薬の開発とか水際の対策とか事柄としては出てきているが、本当にそれは具体的な内実を伴うものなのか。そこが薄弱だと思う。新しい分野の具体的な人材需要ですね。

それから、それが明らかになっていないのが問題なんですが、それがあったとして既存の大学学部では対応できないという条件も検証されていない。すでに16大学でできないから新しい大学を作るという理屈になるわけですが、そこが検証されていない」

--学校法人加計学園(岡山市)の関係者に会ったり、陳情を受けたりしたことはあるか

前川喜平前文部科学事務次官「加計学園には文科省出身者もいて、私も親しくしていた方もいる。そういう方と、お会いする機会はございました」

--それはいつごろか。獣医学部新設が決まる前後か

前川氏「昨年9、10月ではなかったけれども、それよりも以前に会ったケースはあった」

--そのときはすでに内閣府から新学部ができる雰囲気の話はあったのか

前川氏「私が具体的なことを担当課に聞く前だったのではないかと思います」

--そのときに要望はあったか

前川氏「加計学園に再就職した人も来たので獣医学部が話題になったと思います」

--具体的にどんな内容か

前川氏「加計学園は獣医学部を作りたいのでよろしく、みたいな、そういう話題が出たのではないかと思う」

--それに対しての対応は

前川氏「ただ受け止めただけで。聞いただけで。それを聞いた上で何かアクションを起こすことはなかった」

--(きょうの記者会見に)代理人弁護士を付けた理由は

前川氏「まぁ、特に。1人では心細かった」

--前事務次官というポストを考えれば堂々と1人で出てこられてもおかしくないと思うが、このタイミングで代理人弁護士と出てこられた理由は

前川氏「いや、そんなに。確たる理由はない」

--内閣府からの官邸の意向という獣医学部新設をめぐる記録文書をみてプレッシャーを感じたといっていたが、文書以外に他に官邸なり政権なりのプレッシャーを感じたことはあったか

前川氏「まぁ、あの。その点については現時点では答えを差し控えたい」

--その理由は

前川氏「理由も含めて(控えたい)」

--文科省は十分調査をせず確認できないといっている。その回答を出さざるを得ない背景にどういうパワーバランスがあるのか

前川氏「先ほどもちょっと答えたが、文科省の、特に国家戦力特区に関わっている職員の人たちは本当に気の毒だと思う。もともと十分な根拠なく規制緩和が行われ、本来、赤信号のところを青にさせられて、その経緯について示す文書について、これがなかったとする。実際にある文書をなかったことにする。

いわば白を黒にするよういわれているようなものですから。本意ではない、意に反することをさせられている、いわされている状況が続いている。本当に気の毒だと思う。先ほども申し上げたが、大臣を含めて気の毒だと思う。

私は辞めた立場なので自由に発言できるし、政権全体のことを考える必要はないという立場で、こういった話で出てきて自由に話ができるわけだが、現在の文科省にはなかなか、官邸、内閣官房、内閣府といった政権中枢の意向や要請に逆らえないという状況があると思う。そういった中で、それぞれが責任のある判断ができなくなっているのではないかと思う。

これは、農水省や厚労省が実質的な人材需要の判断をせず、いわば逃げているが、逃げざるを得ない。彼らが本当に人材需要について検討すれば、人材需要はないということになるかもしれない。そういう結論を出すわけにはいかないから逃げているとみることもできる。

ですから、そういう関係が政権の中枢と各省との間にできてしまっていることは、非常に問題があるんじゃないかなと思っている」

--省内に動揺や混乱があると思うが、職員に言葉をかけるとしたら

前川氏「文科省が少なくとも、私がやりきれなかったことをやってくれといっているわけですから、無理な注文をしているという部分はあると思いますけども、文科省においては公正さ、公平さ、客観性、それから根拠のある行政を心がけ、国民に批判されることのないようまっとうな仕事をしてほしい」

--閣議決定を無視してでも、何としても加計学園を通そうとする姿勢は、第2次安倍晋三政権になってからか。それとも安倍政権ができる以前からか。昨年12月22日に3大臣合意で(獣医学部新設を)1校だけだと合意したときに、どうして1校だけで合意することになったのか、当時事務次官として聞いていたか

前川氏「政治主導や官邸主導は、小泉(純一郎)政権のころから強まっており、徐々にそういう力関係になってきていると思う。政と官の関係、あるいは政府と党の関係、あるいは官邸と各省の関係は、20年ぐらいの間で、かなり変化してきていると思う。その変化の結果として今現在の関係があると思う。今、政権中枢の力が非常に強まっているのは事実だ。

そして、12月22日のことについて、この状況はフォローしておりません。残念ながら。その時点で、私は天下り問題で忙殺されていたので、他の案件の報告を受ける時間がなかなかなかった。12月22日の合意は、今はそういう報道があったと聞いているけど、その時点で報告を受けたかは記憶が定かでない」

--ちゃんと調査すれば文書は確認できるといっていたが、具体的な確認手段があるのか。文科省の再調査の必要性についてどう思うか

前川氏「私が確実に『ある』、あるいは『あった』資料といっているのは、私が現に見て受け取ったからだが、どういう調査をすればいいのかということについては、どこの何を見ればいいかというのは具体的に申し上げられないが、見つけるつもりがあればすぐ見つかる資料だと思います。何か複雑な調査方法を用いる必要ない」

--個人のパソコンは調べていないが、必要性については

前川氏「それは再調査するなら、文科省がどういう調査をするかは考えると思う」

--お持ちの資料を調査のために提出や開示されたり、国会に提出したりすることは考えているか

代理人弁護士「それは検討中です」

--在職中に知り得た資料を出すことには守秘義務違反に当たるとの指摘もあると思うが

代理人弁護士「その点はノーコメントです」    (完)』

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事務次官経験者がこれだけの告発をすることは異例だ。

さて、この爆弾会見がどこまで総理を追い詰めるか? 今後の展開は、野党とマスコミにかかっている。しかし、昔のように労働組合が力を持っていないので、野党の情報収集力は格段に落ちている。現段階では、前川前次官は籠池氏同様、権力によって逆に窮地に追い込まれる可能性が高い。

仮に総理の意向が働いたことが証明できたからと言って、犯罪になることはないだろう。

政権基盤の弱い内閣なら一発で吹っ飛ぶ疑惑だが、現在の安倍さんはまだまだ強い。G7サミットのため国を離れている総理。今、総理周辺があらゆる手段を講じて前川氏を潰そうと躍起になっていることだろう。

果たして、今後どう展開するのか? 少しこの問題も面白くなって来た。

1件のコメント 追加

  1. wildsum より:

    至上最強の安倍政権が大きな危機に陥りましたね。ようやく、彼の弱点が明らかになった気がします。政府自民党も、宗教団体もいっしょに守ろうとしていますが、見苦しいの一言です。

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