文在寅政権を見ていると、民主党の鳩山政権を思い出す。
泥沼状態が続いている日韓関係にさらに火に油を注ぐ決断を文在寅政権が下した。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたのだ。
韓国メディアも含めて予想外の決断だったという。
ただ、私はさして驚かない。なぜなら、文在寅政権は鳩山政権だと思っているからだ。
夢想家ではあるが、実務能力はない。まったく論理的ではないのだ。
文在寅大統領は、夢想家であるとともに活動家でもある。南北統一という大義の前では、全てのことは重要性を失う。さらに、日本の戦争責任追及も政権の基本的な姿勢である。
強硬姿勢を示している日本に妥協的な姿勢を示すよりも、毅然として戦う姿勢を貫くことが美しい、正しいと考えているのだろう。
所詮は安全保障の専門家ではないのだ。
文在寅さんとすれば、北朝鮮が反発した米韓軍事演習もやりたくはなかったのだろう。軍をはじめとする現場がその必要性を主張するから認めたに過ぎない。それが金正恩氏の怒りを買い、北朝鮮が韓国批判を強めたのは文在寅さんにとって頭が痛いところだったろう。
そのため、今回のGSOMIA破棄の判断は、外務省や国防省の現場の意見を尊重することなく大統領周辺で行われたようだ。すなわち実務者を排除し、文大統領側近の活動家たち中心で決めたのだろう。
韓国に限らず、アメリカのトランプ大統領も実務家の進言に耳を貸さず、FOXニュースを見ながら自らの思いのままにツイッターで発信してしまう。米韓に比べれば官僚をちゃんと使っているとは思うが、日本でも安倍官邸が強力な権限を持つようになり、「政治主導」になっていることは否定できない。
つまり、日米韓の3国はいずれも外交や安全保障のプロが政治主導の下で窒息死してしまっている状況なのだ。
政治的な打算が大手を振ってまかり通っている。
もちろん、中国やロシア、北朝鮮は元々民主主義はない強権的な国である。いつの間にか、6カ国協議の参加国すべてが強権的に国になり、弱肉強食のパワーゲームしかない世界になってしまった。
人類の叡智を集めて共存共栄のための妥協するといった戦後世界が尊重した価値観は、もはや跡形もなく吹き飛んでしまったようだ。
トランプさんが唐突にグリーンランドを買いたいと発言しデンマークに喧嘩を売っている光景など目を疑わざるを得ない。今は一体、どんな時代なのか?
6月に就任したばかりのデンマークの41歳の女性首相、フレデリクセン首相にはトランプさんの脅迫に怯まずに踏ん張ってもらいたいと思う。
そんな目を覆いたくなる世界の中では、安倍さんが相対的にまともに見えてしまう。今回のGSOMIA破棄の問題で、安倍総理が激昂しなかったのはせめてもの救いである。
当面、日韓関係は放っておく以外にないだろう。きっと時間が解決する。より深刻な問題が起きて、両国が関係改善しなければならない時期がきっと来るだろう。あれだけ険悪だった日中関係でさえ、今は穏やかな時期を迎えている。外交とはそういうものだ。
そんなどうしようもない世界の中で、ホッとする映像が流れた。

ニュージーランドの国会でのワンシーンだ。
議長席で赤ちゃんを抱くのは、トレヴァー・マラード議長。
そして赤ちゃんは、与党・労働党のコフィー議員と同性のパートナーとの子供で、代理母が産んだ赤ん坊だという。
日本の議会は自分の子供を議場に連れて行くのさえなかなか受け入れないというのに、なんというお国柄の違いだろう。
ちなみにニュージーランドでは昨年、現役のアーダーン首相が出産、生後3ヶ月の子供を連れて国連総会に出席、演説を行った。
私は、絶対にニュージーランドのような人間的な国会の方がいいと思う。
果たして、日本社会はそこまで成熟できるのか?
今年の年末年始、私はニュージーランドに行きたいと思っている。