拉致問題解決への道は開かれるのか? 日朝にもようやく動きが出てきた。
安倍総理がきょう韓国のムン・ジェイン大統領と電話会談したという。先に行われた南北首脳会談でムン大統領が金委員長に対し、拉致問題や日朝関係について安倍総理の考えを伝えたことが明らかになった。
金委員長は日本との交渉に前向きな姿勢を示したという。
拉致問題について金委員長がどのような反応を示したかは明らかにされていないが、「蚊帳の外」に置かれていた日本政府はひとまず胸をなでおろした感じだ。
だが、日朝交渉はそうすんなり行くのだろうか?
日本では一方的に拉致問題の解決が叫ばれるが、慰安婦問題や強制連行の問題は解決済みとの立場を見直す気配はまったくない。
日本人が「拉致」という許しがたいカードを切るならば、北朝鮮は「強制連行」という許しがたいカードを切ってくるだろう。日本人の拉致被害者は数十人、それに対して朝鮮人の「強制連行」被害者の数について韓国・北朝鮮は数百万人と主張している。
拉致問題と強制連行をはじめとする戦争責任の問題は、日朝交渉の中ではセットとして扱われるというのが私の予測だ。
この日本の戦争責任の問題は、日韓条約締結で解決済みというのが日本政府の立場であり、日本人の多くがそう思っている。
だが、北朝鮮との間ではこの問題は解決していないのだ。
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さらに、ムン・ジョイン大統領は韓国政界の左派を代表している。韓国の左派は、今でも朴正煕時代に締結された日韓条約に納得せず、従軍慰安婦問題や強制連行問題での日本の責任を追及している。
つまり、日朝交渉の過程で、日本の戦争責任をめぐって南北の利害が一致するのだ。韓国世論も大いに盛り上がるだろう。その国内世論を受ける形で、韓国政府も改めて日本政府に謝罪と賠償を求めることは十分に考えられる。ムン大統領が安倍総理に対して、「日朝の橋渡しを喜んで行う」と言った意味は、日朝交渉を利用して、韓国国内の対日問題も解決したいという狙いがあるのではないか。
だから日本政府は、韓国政府に借りを作りたくないと考える。なんとかアメリカの圧力で日朝交渉に持ち込みたいと思っているだろうが、果たしてうまく行くのか?
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戦後70年。東アジアに大きな転機が訪れるかもしれない。
ここで日本は何をなすべきなのか?
私はこの機会に、安倍総理が韓国との間の慰安婦問題解決に本腰を入れることを期待する。北朝鮮との交渉を始める前に、韓国とのわだかまりを解決すべきである。
そのためには安倍総理の決断が不可欠だ。
安倍総理のような自民党右派で日本会議系の総理でなければ、この問題は解決できない。かつての村山総理のようなリベラルな首相がいくら韓国に謝罪しても国内右派は反発するだけだ。外国から見れば、日本は謝罪していない、反省していないとしか見えないのだ。
日韓関係の抜本的な解決は、安倍さんのような総理がやるしかないのだ。
朝鮮半島の和平が本当に進展することになった場合、日本がその流れに乗るには日韓・日中の間に長年横たわる「歴史認識問題」の不可逆的な解決が絶対に必要だ。
安倍さんが歴史に名を刻む最大のチャンスは、今安倍さんの目の前にある。