ブティジェッジ氏の撤退で米大統領選は70代の戦いに!タリバンと合意してまで再選に賭けるトランプ大統領はコロナに勝てるか?

アメリカ大統領選挙の第4戦となるサウスカロライナ州での予備選挙。

これまで苦戦が続いていたバイデン候補が圧勝し、黒人層での高い支持を裏付けた形だ。

いよいよ明日3日には、決戦となるスーパーチューズデーを迎える。トップを走るサンダース氏が独走体制を固めるのか、ここから参戦する大富豪ブルームバーグ氏がどのような結果を残すのか? 今年の大統領選を占う大きな一日となる。

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しかし残念なニュースが入ってきた。

私が期待を寄せていた若手のブティジェッジ氏が選挙戦からの撤退を表明したのだ。初戦のアイオワで勝利し、そのまま旋風を起こすことを狙った30代の新鋭は、その後期待したほどの爆発的な支持の広がりは得られず、特に民主党候補にとって重要な黒人とヒスパニックの間ではまったく支持が得られなかった。

全米での戦いに望むには資金力も知名度も足りず、スーパーチューズデーで惨敗する前に撤退した方が、次につながると判断したのだろう。

若い超インテリ候補にとって今年の選挙は、全米に自身の名前を売ったことだけで十分な成果があったとも言え、4年後の大統領選挙を目指す足場を築いたことは間違いない。

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さて、ブティジェッジ氏がいなくなった大統領選に何を期待すればいいのか?

残った有力候補はトランプさんを含めて全員が70代。おじいさんたちの戦いである。この世代、日本で言えば団塊の世代にあたり、世界的に戦後の混乱期に生まれ政治でも経済でも常に戦ってきた世代なのだろう。とにかくパワフルで、自己主張が強く、しぶとい。

その中でも有利な戦いを進めているトランプさんとサンダースさんは、左右の両極端とはいえ、いずれも熱狂的な岩盤支持層を持ち、極端な主張をするという共通点がある。

アメリカが最終的に社会主義を選択するという事態は現状では想像しにくいので、この両者が戦った場合、トランプさんが圧倒的に有利だと見られている。

そのため、中道派のバイデンさんが有利とされていたサウスカロライナ州の予備選挙では、トランプ支持派の共和党の人たちが民主党の予備選挙に参加してサンダース氏に投票するという珍現象も見られたという。

こうした中で、トランプ大統領はこの週末、アフガニスタンに関する重大な発表を行った。

長年戦ってきた反政府武装勢力タリバンとの間で和平合意に調印したという。これはある意味、すごい政治決断である。

この戦争は、共和党のブッシュ大統領時代、同時多発テロの報復としてアメリカがアフガニスタンを攻撃し、当時のタリバン政権を崩壊させたところから始まった。それから20年近く、アメリカ軍はアフガニスタンから撤退することができず、泥沼の戦争が続いてきた。

先日銃撃されて亡くなった中村医師も、そんな戦乱で荒廃してしまったアフガニスタンの復興のために奮闘されてきたのだ。

トランプさんは先の大統領選で、アフガニスタンからの米軍撤退を公約に掲げてきた。アメリカ兵があんな不毛の土地で戦争しているのは意味がないと考えているのだ。確かに、アフガニスタンには資源もなく、金儲けに繋がりそうな利権はほとんど見当たらない。そんな場所でアメリカの若者が命を落とすのは無意味だと考えるトランプさんの素直な発想には共感しなくもない。

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ただし、である。

アメリカは軍事介入によってアフガニスタンで親米政権を打ち立てた。その親米政権に対して軍事支援を続けることでなんとか治安を維持しているのが現状であり、アメリカ軍が撤退すれば再びタリバンが政権を奪取する可能性が高い。

つまり、アメリカは「テロとの戦い」という名目で他国に軍事介入して、国内をグジャグジャにしただけで、親米政権を見捨ててアフガニスタンを去ろうとしているのだ。

シリアでもアメリカが支援した反政府勢力を見捨てたように、アフガニスタンでもタリバンのイスラム原理主義に反対する民主的勢力を見捨てることにしたわけである。

アフガニスタンのことは、アフガニスタンの人たちが決める。それ自体は正しいことだろう。しかし、中村医師が努力したようにアフガニスタンの経済をよくしないまま見捨てれば、多くの人々が望まない過激な政権が生まれ、再びテロの温床になる可能性は消えない。

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でも、これはトランプさんの公約であり、政治家が選挙の時に約束した公約を守る姿勢は評価しなければならないだろう。公約を平気で破る政治家が多い中で、トランプさんは公約をきちんと守ろうとしている。ただ問題は、トランプさんが掲げた公約の多くが、私から見てひどい内容だということである。

シリアの状況で明らかなように、アメリカの影響力が弱まったエリアには、ロシアや中国の影響力が強まる。シリアでは地域パワーであるトルコまで軍事介入し情勢はより複雑化してきた。

そこに暮らす一般の人たちにとっては、悲惨な状況が続き、構図が複雑化することによって先の見通しはますます不透明になっている。

アフガニスタンも同じ運命にあるのだろう。

1970年代のソ連による軍事侵攻以来、アフガニスタンでは様々な戦争が続いてきた。様々な思惑を持った「戦争をしたい人たち」が外国からアフガニスタンに集まってくる。祖国で静かに暮らしたいと考えている普通のアフガニスタン人の人たちは、どんな気持ちで今回の合意を見ているのだろうか?

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和平合意では、今後135日以内に駐留する米兵を半数近く減らし、14ヶ月以内に完全撤退を目指すとされている。その条件は、タリバン側がアルカイダなどのテログループとの関係を断ちアフガニスタンをテロの温床にしないことである。米軍の撤退はタリバンが合意を順守するかどうか見守りながら進めるとしている。

合意には人質の交換やタリバンへの制裁の解除も含まれていて、アフガニスタン政府も懸念を表明している。普通に考えれば、米軍の撤退が直ちにアフガニスタンの平和に結びつくとは考えにくい。

それでもトランプさんは米軍の撤退を進めるだろう。それは公約であり、11月の選挙前にはアフガニスタンから撤退させた若者たちを自らの選挙キャンペーンに招いて選挙戦に利用するのだろう。その時、アフガニスタンで何が起きていようがトランプさんには関心がない。重要なのはアメリカでテロを起こさないことだけなのだ。

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現役の強みを最大限に利用して大統領再選に布石を打つトランプ大統領。

民主党の現状を見る限り、トランプ有利の情勢は揺るぎそうにない。

最大のリスク要因は、アメリカにも飛び火した新型コロナウィルスだろう。

トランプさんは、オバマ前大統領が作った新型インフルエンザの対策チームを解散し、感染症対策の予算を大幅に削ったと言われる。今回のコロナ騒動に対しても、これまでのところ超楽観的な姿勢に終始している。

今後アメリカ国内での感染が拡大し、自らの支持率に影響を及ぼすことがあれば、極端な対策を打ち出す可能性もあるが、現在の楽観的なスタンスが感染を広げるリスクはある。

もし全米に感染が広がり、経済にも大きな影響が出るようなことがあれば、「社会主義者」サンダース氏にもチャンスが生まれる。オバマケア推進に貢献したバイデン氏やニューヨーク市長として治安対策などで成果をあげたブルームバーグ氏に追い風が吹く可能性もあるかもしれない。

トランプさんにとって最大のライバルは、予想不能な新型コロナウィルスということになりそうだ。

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