トランプ勝利

きょうは久しぶりに朝からテレビを見ていた。「ヒラリーVSトランプ」という嫌われ者同士による米大統領選挙の行方が気になったからだ。

開票前はすべてのメディアがヒラリー勝利を疑っていなかった。直近の世論調査ではヒラリー氏が2−3ポイントリードしていた。

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朝方の東京市場も上げて始まった。そして勝敗の鍵を握ると見られていたオハイオやフロリダでトランプ氏がリードすると、株価は一気に下がった。

そして「トランプが予想以上に健闘している」と伝えていたテレビも徐々にトランプ大統領誕生という予想外の結果を認めざるを得なくなった。ABCテレビのベテラン女性記者は泣きそうな表情でパニックに陥ったように見えた。アメリカのインテリ層にとっては「あってはならない事」が起きたのだ。

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トランプ氏が第45代米大統領となることが正式に決まると、「驚くべき番狂わせ」と米メディアは一斉に伝えた。

トランプ氏の当選が確実になった日本時間の昼過ぎ、私は仕事で文化庁にいた。文化庁の職員もトランプ勝利に困惑顔だ。

みんな、この先何が起きるのか予想がつかない。時代の大きな変わり目になるかもしれないが、心配したほどのことはないかもしれない。個人的には、レーガンやブッシュに比べると戦争好きではない気もするので、そこまで心配はしていない。

ただ一番心配なのは、アメリカがこれまで演じてきた「世界の警察官」の役割を本当にやめて国内に閉じこもってしまうこと。そうなれば、相対的に中国の存在感が高めることになるだろう。

もう一つ気になることがある。今回の選挙で、アメリカのマスコミは完全に権威を失った。アメリカだけではない。世界中で既存のメディアが市民の信用を失いつつある。明らかにインターネットの影響だろう。

既存メディアの伝統は、理想主義である。権力を監視し、人権を重視し、より良い社会を作るために情報を発信する。欲望のままの社会ではなく、理性的な寛容な社会を志向してきた。

しかし、ネット世論はもっとむき出しの本心だ。皆が何となく心の中に抱いている本音を誰かがネットで発信すると、そこに同調して世論が形成される。それはメディアが伝える情報とずれる。そのためメディアが嘘の情報を流しているという不信感が広まる。マスコミを通じてしか情報を得られなかった時代には、自分の感情は間違っていると感じていた人が、ネット上に自分と同じ気持ちを持つ人がいることを知り、自分の感情により素直に行動するようになる。

文字通り「本音の時代」が世界中に広がっていくのだ。

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インターネットが作り出す新しい世界。これはもう止めることはできないだろう。行くところまで行って激しい不都合が誰の目にもはっきりした時に、また修正される時が来るかもしれない。

トランプショックはそのままマスコミショックであり、今後も一層世界に広がっていくだろう。中国やロシアのような強権国家がどこまでその波に抗えるかがむしろ注目である。

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