リスク・パリティ

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日経新聞のシリーズ企画「モネータ 女神の警告」が興味深い数字を紹介している。

今月5日に始まった世界的な株価急落の背景に何があるのか? その先に何が待っているのか? 株価の値動きとは別に、世界経済の今をしっかり理解するために記事の一部を引用させていただく。

まずは12日付「自動取引 膨張に拍車、暴発のリスク」から・・・。

『  1987年の「ブラックマンデー」もプログラム取引が背景にあった。だが今やその規模は当時と桁違いだ。JPモルガン・チェースのマルコ・コラノビッチ氏によると、米国の株式運用資産の6割は機械的な運用で、10年前の2倍に増えた。人が執行に関わる売買は1割にすぎないという。

空前の金融緩和はあふれんばかりのマネーを市場に流してきた。2006年からの10年間で世界の通貨供給量は8割増え、世界の運用資産は80兆ドル超と04年の2倍に達した。マネーの水たまりは国債をはじめ様々な資産の利回りを低下させ、息の長い投資に対する展望を見失わせた。

短期のサヤ取りの繰り返しに活路を見いだしたマネーは、速度と頻度を求めてコンピューターと結びつき「無機質なマネー」を増殖させた。アルゴリズムの高速売買が膨張に拍車をかける。処理能力は速いもので10億分の1秒。売買は人の手を離れていく。

だが近視眼的な売買は、ちょっとした潮目の変化にも一斉に反応する。米国から日本、欧州へと続いた自動取引の共振。乾いたまきに燃え移った炎のような勢いに市場は立ちすくんだ。

無機質マネーの奔流はあらゆる資産をのみ込む。17年6月26日、ニューヨーク金先物市場で、わずか1分間にフィンランドの金準備を上回る180万トロイオンス(約56トン)が取引された。誤発注とみられる売りに自動取引のマネーが群がり、売買が異様に増幅された。』

最初のキーワードは「自動取引」。アメリカの株式取引の6割は機械が行なっている。様々なアルゴリズムが開発されている。今回の株価急落劇で注目されたのは「リスク・パリティ」と呼ばれるボラティリティー・インデックス(VIX指数)に反応するファンドの拡大だ。

昨年は年間を通してボラティリティーの低い「適温相場」が続いた。この局面で高いパフォーマンスを上げたのがこの手のファンドで、そこに大量に資金が流入していた。

この「リスク・パリティ・ファンド」について解説したロイターの記事を引用する。

『 ボラティリティーの上昇は、どのようなルートで株安・債券安(金利上昇)をもたらすのか。1つのカタリスト(触媒)となるのが、リスク・パリティ戦略を採るファンドだ。

近年最も成功したファンドとされるリスク・パリティ・ファンドは、システム(アルゴリズム)系のプレーヤーで、各アセットのボラティリティーを均等化(パリティ)する戦略をとる。高リスク資産は相対的に低いウエート、低リスク資産は高いウエートに調整。相場急変時の損失を最小化する。

伝統的なポートフォリオでは本来逆相関の株式と債券に資産を分散し、一方が下落すれば、他方が上昇することで損失を抑えようとする。しかし、2008年の金融危機では、株式と債券などほぼ全金融資産が同時に売られる事態となり、リスク・パリティ・ファンドに脚光が集まった。

ボラティリティーの上下で調整するのは各資産のバランスだけでなく、ポートフォリオ全体の規模も増減される。昨年、金融市場全体のボラティリティー(リスク)が低下。リスク・パリティ・ファンドは、レバレッジをかけて株式や債券の各資産を増やす動きに出たとみられている。

しかし、2018年に入り、株式や債券のボラティリティーが上昇。「リバランスの時期にも重なったが、ボラの上昇に合わせて、レバレッジの解消に動いているようだ。ゴルディロックス相場の逆回転が起きている」と野村証券のクオンツ・ストラテジスト、高田将成氏は指摘する。』

話を「モネータ 女神の警告」に戻す。

13日付の「金融政策と財政、ずれる歯車」からの引用。

『 米ダウ工業株30種平均が史上最大の下げを記録した翌日の6日。余波はギリシャに及び、この日予定していた7年国債の発行をいったん延期した。リスク回避が投資家の間で強まり、信用力の低い同国債の利回りが跳ね上がったからだ。

財政危機に陥ったギリシャが国債市場に復帰したのは2017年夏。カネ余りを背にした国債発行で財政を再建し、国際支援から脱する腹づもりだった。だが、そのシナリオは米国発の市場動揺で揺らぐ。ギリシャへの逆風は、緩和マネーをあてにした各国財政政策への不安と重なり合う。

国際通貨基金(IMF)のまとめでは、191カ国のうち174カ国が財政規模を拡大中だ。財政悪化への懸念をものともせず、投資に前のめりな国は多い。

「ビルド・ビルド・ビルド(造って、造って、造ろう)」。17年末、フィリピン・マニラの北西約80キロメートルの米軍基地跡地に関係者が集まり、熱気に包まれた。パリ市並みの敷地にビジネス街や住宅地を整える巨大プロジェクトが動き出す。

仕掛けたのは、過激な発言で民衆の人気を集め、「フィリピンのトランプ氏」と呼ばれるドゥテルテ大統領だ。22年までに8兆ペソ(約17兆円)を投じる計画を掲げ「インフラ黄金時代を迎えた」と叫ぶ。一連の投資で年200万人の雇用を生みだし、国民所得を押し上げると宣伝する。

金融危機後の景気テコ入れを狙い、各国政府は財政のアクセルを強く踏んだ。お金をため込むばかりの企業・家計に代わる最大の使い手として振る舞い、マネーの奔流を勢いづかせた。

減税や財政出動へ借金を重ねられた底流には中央銀行の金融緩和がある。中銀が大量の国債を買って金利を低く抑え、政府は資金繰りの心配から解放された。

国際金融協会によると世界の政府部門が抱える負債は昨年9月末時点で63兆ドル(約6800兆円)とこの10年で倍増した。政府部門の負債は金融機関を上回る。世界全体の国内総生産(GDP)に対する政府債務の比率は、金融危機前の6割から9割に上昇した。』

2番目のキーワードは「政府債務」。日本でも財政が拡大する一方だが、世界的には10年で倍増しているという。

この状態で金利が上昇すれば、デフォルトに陥る国が次々に出てくるだろう。いつか見た光景。ギリシャ危機のことをすでに私たちは忘れている。

景気は循環する。問題は頂きがどこにあるのか、その後何が起きるのかということだ。

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