大阪府が緊急事態宣言を政府に要請したというが、もはやあまり関心はない。
コロナ感染は所詮、人間の弱さを反映して拡大することがわかっている。
いくら緊急事態を宣言しようが、一人一人が行動を控えなければ効果は限定的なものとなる。
そんな中、警視庁公安部は中国共産党員が偽名でレンタルサーバーを契約していたとして書類送検した。
この男が契約したレンタルサーバーが宇宙航空研究開発機構(JAXA)など防衛や航空関連企業を中心に、国内約200の企業や研究機関を狙ったサイバー攻撃に使われたというのだが、事件は5年ほど前のものだ。

事件の背後には、中国人民解放軍の指示を受けた中国のハッカー集団「Tick」の存在があるという。
しかし、なぜ今、こんな物騒な情報が出てきたのかという方に私は興味がある。
中国が組織的に日本企業や政府機関に対してサイバー攻撃を仕掛けているのは周知の事実だし、警視庁公安部は常にロシアや中国のスパイ活動を監視しているがその事実は表に出ることはない。
このタイミングで過去の事件を書類送検したのは、先の日米首脳会談を受けた動きだろう。
「中国はヤバイ国」という印象を日本人に与える効果を狙ったのか、警視庁公安部が予算獲得のためにこの機を利用したのかは分からないが・・・。

ただ私がもっと興味を持ったのは、たまたまつけたテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で紹介されたある日本のベンチャー企業だった。
この会社の名前は「ティアフォー」という。
自動運転ソフトを開発しているらしいが、私はその存在をこの番組で初めて知った。

「ティアフォー」は2015年に創業した社員200人ほどの会社である。
その自動運転ソフトは、トヨタの「eパレット」に採用されたほか、国内外の200社が導入しているという。
その中には、インテルやアーム、LGといった世界的な企業が含まれる。

日本のベンチャーに過ぎない「ティアフォー」の技術が世界の大企業に受け入れられた秘密は、ソフトを「オープンソース」にして誰でも利用できるようにしたことにある。
「テスラ」や「グーグル」が自社技術を囲い込んで自社で実証実験を行なっている間に、「ティアフォー」の基本OS「Autoware(オートウエア)」は世界中で実験が始まっている。
そこに「世界標準」となる可能性があるのだ。
今年に入って「ティアフォー」が注目を集めるビッグニュースがあった。
台湾の鴻海精密工業と手を組んだのだ。
21年3月下旬にオートウエアの普及団体は、鴻海が主導する「MIH EV Open Platform」と呼ばれるEVプラットフォームの普及団体と連携を決めた。MIHもオープン化の手法をとっており、標準化した部品やソフトなどを使って、中小や新興メーカーが比較的容易にEVへの参入が図れる利点がある。普及団体には既に米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)や中国・寧徳時代新能源科技(CATL)、日本電産など1000社以上が参画している。
両団体が連携することで、MIHを活用したEVに、オートウエアを採用した自動運転システムを載せやすくなる。自動運転とEVで存在感を高めるオープンソース陣営が手を組むことで、今まで一握りの大手の自動車メーカーやIT企業でなければ参入が難しかった自動運転EVの「敷居」が大きく下がる可能性がある。ティアフォーと鴻海は台湾の自動車メーカーと組んで21年秋には多目的スポーツ車(SUV)の自動運転EVを試作し、同国で実証実験を始める計画だ。
引用:日経XTECH「車に「水平分業」の足音、鴻海・ティアフォー連合の衝撃」
自動車産業は100年に一度の大変革期を迎えていると言われている。
アメリカや中国が巨額の資金を投入して実用化を競う中で、日本のベンチャーと台湾企業がいち早く世界標準を実現したら、驚くような快挙である。
それは決して絵空事ではないという。
その鍵を握るのが世界が注目する「Appleカー」の動向だ。
「iPhone」の製造を請け負っている鴻海は、今後電気自動車の生産に注力する計画で、アップルと組む可能性は大いにあると見られているためだ。
そうなれば、日本のベンチャーが開発した基本OSが自動運転の世界標準になることも十分にあり得るのだ。

「ティアフォー」を率いるのは、38歳の若き創業者・加藤真平さん。
日本国内でもタクシーを使った実証実験を始めている。
次世代の自動車業界の覇権を誰が握るのかは、まだまったく見通せない状況で、日本にはまだ中国に狙われる技術があるということがわかった。
果たして、世界で戦える日本のベンチャーが登場するのか、「ティアフォー」の今後に大いに注目してみていきたい。