「文春オンライン」に気になる記事が載っていた。
記事のタイトルは・・・
「首を刈ってやる」という脅迫も……“8割おじさん”西浦教授がそれでも語る「第三波、第四波は絶対来ます」
さすが文春、タイトルだけ見ても中身を読みたくなる。
専門家会議が、分科会というより見えにくい形となり、私が一番信頼していた「8割おじさん」こと、北大の西浦教授の姿もテレビでほとんど見なくなった。
文春の記事は、そんな西浦さんの最近の分析をストレートに伝えてくれているので、ぜひ記事のいくつかを引用して書き残しておきたいと思う。
記事は「8割おじさん」のこんな言葉から始まる。
「野球に例えると、まだ2回表で新型コロナウイルスが攻撃している段階です。僕たち理論疫学の研究者は強固な対策を行わなければ流行が収束しないことを『メジャーエピデミック(大規模流行)』と呼んでいます。それを第二波だと定義すると、今は本当の意味で分岐点にさしかかっている。数年間にわたる長期戦を想定した対応が必要です」
出典:文春オンライン
「まだ2回表で新型コロナの攻撃中」という言葉は、私の認識と見事に一致する。
そして今後の見通しについてはこう述べている。
「第三波、第四波は絶対来ます。私たちは国内のデータだけを分析しているのではなく、海外の流行状況も常に見ています。南米がピークを迎えつつあり、インド、アメリカなど、国際的にパンデミックが起こっている。そんな中、日本政府には各国の大使館から主要な取引をしている人だけでも入国させてくれとリクエストがあり、今後ビジネス目的の避けられない移動が始まります。一方で検疫所のキャパシティは限界に迫っているのです」
出典:文春オンライン
「第三派、第四派は絶対来ます」・・・私もそう思う。
新型コロナを前にして、楽観的な予測を立ててみてもなんの意味もない。
ジタバタせずに、ウィルスと共存するしかないのだ。
それでは精神的に耐えられないという人は、瞑想やヨガでも習って、自らの精神を鍛える必要があるかもしれない。
でも、今後2~3年はそんな状態が続くと飲み込んでしまえば、それはそれで身の処し方はある。
西浦教授も淡々とこんな話をしている。
「上がったり下がったりを続けることになるでしょう。この繰り返しの中で、『減衰振動』と言いますが、感染者数の上げ幅を小さくしていかなければなりません。陽性者1人が何人に感染させるかを示す実効再生産数が一を下回れば、流行は収束しています。一を上回っているときは、たとえばリモートワークの実施率を上昇させたり、大規模イベントを自粛したりして抑制させる。この方法はドイツでも行われています」
出典:文春オンライン
とにかく、国民が冷静に対応すること、政府や自治体には国民が参考にできる正しいデータを提供することが求められる。
コロナ出現から半年以上経っても、諸外国に比べて検査体制が拡充されないのは、拡充しようという意思がないからであって、無能であるか悪意があるかのどちらかだと断定せざるを得ない。
さて、今話題の「GO TO トラベル」について西浦さんはどう考えているのだろうか?
西浦教授の見解とともに、尾身会長からの電話についても文春に語っているので、その部分を丸ごと引用させていただく。
では、話題のGoToトラベルキャンペーンは?
「旅行でリスクがあがらないというのは厳密に言うと間違っています。家族旅行は気をつければ大丈夫ですが、社員旅行など団体の場合は伝播する可能性がある。感染症専門家の有志の会でも、移動は差し支えないが、GoToのように推奨するのは難しいと議論しています。専門家たちの意見も固まっていない中、GoToは進んでいるのです」(同前)
7月16日午前中、西浦氏に電話があった。掛けてきたのは、新型インフルエンザ等対策有識者会議会長とコロナ対策分科会長を務めている尾身茂氏だった。
「GoToトラベルキャンペーンの相談でした」(同前)
その際、尾身氏は、
「できれば2週間は様子をみた上で決めたらいいんじゃないかという話にしようと思う」 と話した。
だが、その日に行われた経団連のフォーラムで、尾身氏は「旅行自体は問題ない」と発言する。
この尾身氏の発言は真意と違うのではないか。感染症の専門家たちはそう心配しているという。
「尾身先生の意向がおそらく通っていないと思う。(対策分科会のメンバーである)尾身先生や押谷仁先生らは感染症の制御について間違った方向に導かないと私は信じています。ただ、有識者会議や分科会には経済学の専門家もいるし、政府の思いが強く入る構造になっている。そのため、政府や経済的な意向が混入されたかたちで、尾身先生は会長としてメッセージを出すことになる。もし流行が大きくなったとき、尾身先生に責任転嫁されるのではないか。政府の人は困ったら『専門家』という言葉を口にされるので」(同前)
出典:文春オンライン
やっぱり、私は「8割おじさん」を信用する。
「有識者会議や分科会には経済学の専門家もいるし、政府の思いが強く入る構造になっている」
「もし流行が大きくなったとき、尾身先生に責任転嫁されるのではないか」
「政府の人は困ったら『専門家』という言葉を口にされるので」
これらの言葉は、専門家の人たちに大声で言って欲しいと思っていた言葉だ。
安倍総理も西村大臣も、都合の悪いことはすべて「専門家の意見を聞いて決める」と専門家をエクスキューズの道具として使ってきた。しかし不思議なことに、テレビはそんな専門家の本音を引き出そうと努力していないように私には思えた。
またも、文春である。
テレビは一体、何をやっているのか?
専門家会議を外れたなら、西浦さんをコメンテーターなり解説者に引っ張り出せば良いではないか?
あれだけ、顔が売れた人をなぜ使わないのか?
私の邪推では、西浦さんを攻撃する輩が存在するからだろうと見ている。
もし西浦さんを解説で呼ぶと、番組宛に抗議が来る可能性があるのだ。
文春の記事の中にも、西浦教授に対する攻撃について触れられた部分があるので、それも引用させていただこう。
西浦氏がそもそも“8割おじさん”と呼ばれるきっかけとなったのは4月のシミュレーションだった。行動制限をとらなかった場合、42万人が死亡すると推計を発表した。現在はどう考えているのか。
「科学者として後悔していないし、試算に瑕疵があった訳ではありません。ただ曲解されないようにしっかり条件を説明するなど、発表の仕方は工夫すべきだったと反省しています」(同前)
この試算をきっかけに「国民を脅かす行為」「経済を無視している」などとの批判が強まることになった。
「経済的な被害が少ないモデルを考えることは重要ですが、私は感染症対策の専門家です。経済を気にして流行を止められず、人が死ぬことを避けなければならないと考えています」(同前)
西浦氏の研究室には電話や手紙が相次いだ。
「中には励ましのメッセージもありました。ただ、『いますぐ大学を辞めなさい。辞めなければ私が大学に行き、首を刈ってやる』という脅迫も来ました」(同前)
出典:文春オンライン
なぜ西浦教授が攻撃されなければならないのか?
彼は自らの専門分野を活かして、国民が参考にすべきデータを示したに過ぎない。それをもとに、対策を考えるのも、対策を呼びかけるのも政府の仕事だ。
しかし、安倍総理を筆頭として、政府がいかにも専門家が全てを決めているように偽装したために、攻撃の矛先が西浦教授に向かった。
ひょっとすると、安倍応援団と言われる人たちが、意図的に西浦さんを攻撃したのかもしれない。
それでも、西浦教授はこうして取材に来る記者がいれば正直に自分の考えを披瀝している。
こういう専門家がいることは、日本の救いだ。
こうした専門家を攻撃する輩を、なぜ警察は取り締まらないのか?
これは明らかに脅迫罪である。
西浦さんだけじゃない。
検査の拡充を訴えていた大谷医師も執拗な攻撃に晒されて、テレビに出演できなくなってしまった。
歴史を振り返れば、自分の意に沿わない者を攻撃するところから、日本の軍国化が始まった。
電話やメールによる攻撃を野放しにしていると、いつか物理的なテロに発展し、暴力によって言論が封殺される時代がやってくる。
そんな馬鹿なことを繰り返してはいけない。
だから、私は断然「8割おじさん」を信用している。
西浦さんを批判することはもちろん許されるが、脅迫し黙らせようとする輩は絶対に許すことはできないのだ。