岡山に帰省すると、終日肉体労働で明け暮れるため夜早く寝てしまう。
昨夜も10時半ごろ寝たのだが、朝起きてテレビをつけると津波の特番をやっていて驚いた。
岩手県と奄美などに津波警報が発令され、北海道から沖縄まで日本列島の太平洋側全域に津波注意報が出されている。
何が起きたのかしばらくわからなかったが、南太平洋のトンガ諸島で昨日の昼過ぎに起きた大規模な火山噴火が原因だとわかった。

噴火したのはトンガの首都ヌクアロファから北に60キロ離れた海底火山「フンガトンガ・フンガハーパイ」。
日本時間の昨日午後1時10分ごろ、海面から立ち上った噴煙は上空1万6000メートルに達し、気象衛星「ひまわり」が宇宙からはっきりと噴火の様子を撮影した。
噴煙の範囲は直径300キロに及ぶ巨大なもので、専門家は「100年に一度」の大噴火だろうと語っている。
この噴火に関して昨夜7時のニュースは、「多少の潮位の上昇はあるが日本で被害が出る心配はない」との予想を気象庁が発表したと伝えていたので、朝起きた時、いきなり津波特番になっていて驚いたわけだ。
それにしても、宇宙から観測された噴煙の凄まじさはどうだ。
この映像を見ながら、私は阿蘇や桜島で大昔に起きたと言われる「カルデラ噴火」という言葉が脳裏に浮かんだ。
もし今、阿蘇山で「カルデラ噴火」が起きれば、火砕流は九州全域を焼き尽くし四国にまで達すると言われている。
私たちの短い人生では到底経験できないとんでもない火山活動が、地球の歴史では何度も起きているのだ。

気象庁は、今日の午前0時15分に奄美・トカラ列島に津波警報を発令、北海道から沖縄の太平洋側に津波注意報を発令した。
この時すでに奄美大島では最大1m20cmの津波が観測されていた。
つまり、事前に津波を予測したのではなく、想定外の潮位上昇に見舞われて事態が把握できないままに警報は発せられたのだ。
気象庁は当初、トンガと日本の中間にあるナウルでの観測データをもとに、日本への影響は小さいと判断したのだが、実はこれまでの津波とは全く異なる現象が世界各地で起きていることが明らかになった。
巨大噴火によってもたらされたと思われる衝撃波が太平洋全域に広がり、日本各地でも瞬間的に気圧が上昇する現象が観測されていた。
太平洋各地でこうした気圧の急上昇が起きたことで津波に似た現象があちこちで起こったのだ。
波が押し寄せるという意味では津波に似ているが、これは津波ではない。
その証拠に、トンガ周辺よりも遠く離れた日本やアメリカ、ペルーなどで大きな潮位上昇が見られたほか、大西洋に浮かぶカリブ諸国でも潮位の変化が見られた。
火山噴火の衝撃波が大気を揺らして陸地で隔てられたカリブ海にまで届いたと考えられるのだ。

8000キロ離れた南太平洋で起きた火山の噴火により、日本各地で1メートル前後の潮位の上昇が見られ、高知などでは漁船が転覆するなどの被害も出た。
さらに海岸線を走る鉄道が運行を取りやめたことで、今日行われた「大学入学共通テスト」が一部の会場で中止となるなど受験生の人生にまで大きな影響を与えた。
今年の受験生たちは、トンガという自分とは全く縁のなかった島国のことをきっと覚えたに違いない。

今年の受験生は、本当に大変だ。
受験シーズンに合わせたかのように、オミクロン株の感染爆発が起き、各地で過去最高の感染者数を記録している。
勉強だけでなく体調管理にいつも以上に気を使わなければならない。
それでなくても神経質になっている受験生が試験会場で刺されるという衝撃的な事件が起きた。
大学入学共通テストの初日だった昨日、試験会場となった東京大学でのことだ。
犯人は名古屋から高速バスで上京した高校2年生。
家から持ち出した包丁の他に、手作りの火炎瓶やナイフ、ノコギリを所持し、試験を受けに訪れた2人の受験生と70代の男性を刺した。
東大医学部を目指すエリートだが、成績が落ちたため事件を起こして自分も死のうと考えたという。
最近この手の身勝手な犯行が相次いている。
走行中の電車内で火をつけたり、自ら受診しているクリニックに放火したり。
これもゲームの影響があるのだろうか?

少子化によってかつてのような熱い受験戦争は影を潜めたものの、大学受験をめぐっては記述式問題の導入が突然見送られたり相変わらず混乱が続いている。
若者たちの将来を決める一発勝負。
岸田政権が発表したコロナ感染者や濃厚接触者への特別待遇策へも公平性を疑問視する意見が相次いだ。
交通機関が乱れたり、風邪をひいたり、大雪が降ったり。
受験には常に実力だけではない要素がつきまとう。
ただ自然災害はいざ知らず、大人たちの思惑でルールが混乱するのは勘弁してもらいたいだろう。

混乱といえば、4連覇がかかる全豪オープンに参戦するためオーストラリア入りしていたテニスのジョコビッチ選手をめぐる対応も異例の混乱ぶりだった。
大会主催者はワクチンを接種していないジョコビッチ選手にビザを発給したが、オーストラリア政府がそれに待ったをかけた。
ところが、オーストラリアの裁判所はジョコビッチ選手の入国を差し止めた政府の決定に合理性がないとして入国を認める。
これで全豪出場が決まったと思いきや、豪政府は再びビザを取り消し、裁判所もそれを認めた。
結果的にジョコビッチ選手は全豪に出場できないことになり、4連覇の夢はオミクロンによって阻まれた。
世の中は「想定外」に溢れている。
トンガで起きた巨大噴火は、人知の限界を改めて教えてくれている。