日常生活がどんなものだったのか、コロナ禍の生活が長く続いたせいで正直忘れてしまった気がする。
ここに来て、どういうわけか日本中でコロナの感染者が減少し、東京の新規感染者も昨日が19人、そして今日は17人まで減った。
そして今日から、東京など首都圏の1都3県と大阪でも酒類の提供自粛や営業時間短縮の制限が全面解除された。
あくまで十分な感染対策を取っている認証店が対象だが、すでにほとんどのお店はこの認証を受けていて、およそ11カ月ぶりに夜の街が正常化することになる。

ということで、私も今日から「日常生活」を再開してみようと思った。
とりあえず、井の頭公園をジョギングしてみることにした。
久しぶりにジョギング用のパンツに着替え、少し秋色に染まりつつある公園の道を走る。
贅肉が揺れ、脚の関節がちょっと痛い。

今日は曇り空でひんやりしているので、トレーニングエリアに人影はまばらだ。
鉄棒を使って腕や肩の筋肉を揉みほぐし、腹筋運動をし、脚の裏側の筋を伸ばしながらゆっくりとストレッチをする。
空気が冷たくて気持ちいい。
トラックを走ろうかとも思ったが、いきなり頑張ると足をつるのでやめた。

ゆっくりとジョギングを続ける。
今月、開園20周年を迎えた「ジブリ美術館」は平日だというのに賑わっていた。
みんな様子を見ながら、恐る恐る元の生活に戻ろうとしているのか・・・。
昨年同様、秋にいったん感染が収まっても冬になると再び緊急事態に舞い戻ってしまうのか?
一気に「日常」が戻ってくるのは、やはり難しいかもしれない。

そんな全面解除初日。
吉祥寺の街はどうなっているのか?
私は妻を誘って、居酒屋さんに行ってみることにした。

選んだのは、我が家のお気に入り「MIYAUCHI」。
お店が混雑しないうちにと思って、開店時間の午後5時半に訪ねてみた。
入り口には認証店のステッカーが貼られている。

まだ時間が早いのでお客さんはいなかった。
カウンターのいちばん端っこに腰かけて、焼酎のお湯割を注文した。
今年はずっとテイクアウトのみだったので、吉祥寺のお店で飲むのは一体いつ以来だろう。
6時ごろになると徐々にお客さんがやってくる。
「久しぶり」とマスターに声をかける常連さんも多い。
みんな自粛していたんだろう。

「帆立と春菊のかきあげ」(750円)。
美味い。
やっぱり、この美味しさはテイクアウトでは味わえない。
妻とお互い好きなものを注文し、1時間余りでお店を出た。
だらだら飲むのではなく、美味しいものをしっかりいただいて短時間で引き上げてもお店で飲む満足感は半端ない。
それでも、コロナ前と同じとはいかない。
私たちがお店を出る頃には半数以上の席がお客さんで埋まっていたが、みんな少人数で静かに料理を楽しんでいる印象だ。

制限が全面解除された初日の夜。
吉祥寺の街は事前に予想したほどには賑わっていなかった。
時間がまだ早かったとはいえ、裏通りでは人通りも少なく寂しい印象だ。

帰り道に「ハモニカ横丁」を覗いてみたが、こちらもコロナ前の賑わいにはまだほど遠い。
まだ閉まっている店も多く、大声で喋る人もほとんどいない。
制限解除を心待ちにしていた飲食店に本当の賑わいが戻るには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
コロナ禍はまだ終息したわけではない。
多くの人がそう考えているのだろう。

コロナ禍は、一人一人に「当たり前」だった日常を見直すきっかけを提供した。
仕事帰りに同僚と居酒屋に立ち寄るという「当たり前」は、本当に自分にとって必要だったのか?
少なくない人たちが自らの行動を冷静に再検討している。
果たして居酒屋にかつての活気が戻るのかどうか、その答えが出るのはまだまだ先のことになりそうである。