<吉祥寺残日録>外出自粛の東京に降る雪 #200329

外出自粛2日目、天気予報通り東京に雪が降った。

吉祥寺でも朝8時ごろから降り始め、昼過ぎには大粒のボタン雪に変わった。

今年2回目の雪。

大きな雪がゆっくりと空から降ってくるので、満開の桜も雪の中に紛れてよく見えないほどだ。

予想したよりも積雪が多かったので、雪が止んだら公園を一回りしようと思っていたら、午後1時半には雪が雨に変わり、あっという間に木々の緑が雪の下から現れた。

3月29日、今年結婚する三男の誕生日だ。

でも東京には外出自粛の要請が出されていて、結局一歩も家から出ずに3月最後の日曜日を過ごす。

録画していたドキュメンタリー番組を見た。

NHK-BS1で1月に放送した『BS世界のドキュメンタリー選「戦地のスキーヤー」』。

戦争のニュースでしか紹介されないアフガニスタンだが、スキーを始めた2人の若者が冬のオリンピック出場を目指す姿を通して、知られざるアフガニスタンの現状を伝えるドキュメンタリーだった。

舞台は、カブールの西方にあるバーミヤン。

シルクロードの要衝として栄えた美しい土地で、世界遺産にも登録されている。

2001年にタリバンがバーミヤン遺跡の2体の大仏を爆破して国際的な非難を浴びた。

冬のバーミヤンは、周囲の禿山が雪に覆われ美しいゲレンデとなる。

アフガニスタンの人たちはスキーをする習慣はないが、この地を訪れた外国人に支援され、2人の若者がスイスでスキーの特訓を受ける。

彼らの目標は冬季五輪史上初めてのアフガニスタン選手として、2018年の平昌オリンピックに出場すること。しかし、スキーを始めてわずか数年で出場できるほどオリンピックは甘くはない。

結局平昌五輪参加のための標準記録には及ばず出場は夢と消える。

しかしヨーロッパで大会にも出場した2人はアフガニスタンの英雄となり、彼らに憧れてスキーを始める若者や子供たちが次々に現れる。

木の棒を削って手作りのスキーを作り、歩いてゲレンデを登っては転びながら滑り降りる彼らの表情は光り輝いている。

中には若い女性たちの姿もあり、男女が一緒に活動することのないアフガニスタンでスキーが伝統文化を大きく変えようとしていた。

生まれてからずっと戦争が続いているアフガニスタン。こんな国に生まれた人たちは何を目標に生きればいいのか?

アメリカ軍が撤退し、政府軍とタリバンの対立が再び激化しようとするこの国で、テレビカメラが捕らえた若者たちの姿には一縷の希望が見えたような気がした。

真っ白な雪は、大地を美しくお化粧してくれる。

でも、雪はあっけなく消え去り、その下から現実が現れるのだ。

新型コロナウィルスによって行動の自由を奪われようとしている東京だが、アフガニスタンの現実に比べれば本当に恵まれている。

自らが愛する家族や社会のために、一人一人ができる努力をすること。

誰かに言われたからするのではなく、自分の頭で判断し、良いと思う行動をとればいいのだ。

トランプさんが象徴する強欲で自己中心的な世界を襲った新型コロナウィルスはまさに神の啓示である。

これから多くの試練が私たちを待ち受けている。

そして病を乗り越えた先に訪れる世界の形や人々の価値観は、間違いなくコロナ以前とは大きく変わっているだろう。

私たち一人一人が少しずつ意識と行動を変えることで、コロナ後の世界を少し良い方向へ変えることができるかもしれない。

第二次大戦後に生まれた理性と理想を重んじる世界を再び取り戻したいと心から願う。

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