夜の間に少し雨が降ったのだろうか?
目を覚ますと、井の頭公園に朝もやが立ち込めていた。

美しい夜明けだ。
しかし、新型コロナウィルスに対する警戒感がじわじわと広がりつつある。
昨夜記者会見した分科会の尾身会長は、3週間程度の短期集中でより強い対策を実施するよう政府に提言した。
今年は「我慢の師走」となりそうで、忘年会シーズンを迎える飲食業界などからは悲鳴が上がっている。

私はといえば、今日は月一回のハローワークへの出頭日。
午前9時前に三鷹のハローワークに顔を出すと、2階のフロアはガラガラで「今日は早く手続きが終わりそうだ」と思ったが、そうはうまく行かなかった。
私の申請書類をチェックした担当者から、「求職活動の回数が足りない」と指摘されたのだ。

新型コロナ対策の特例として、通常1ヶ月に最低2回は行わなければならない所定の求職活動が9月までは猶予されていたが、10月以降は通常に戻り、月2回の求職活動が給付を受けるための条件となったらしい。
私の場合、1回ハローワークの求職相談を受けただけだったので回数が足りず、特別に今すぐ求職相談を受ければ2回目とカウントしてくれることにしてくれた。
やはり日本のお役人さんは優しい。

ハローワークの1階で求職相談を済ませて、再び2階の申請カウンターへ戻ると、先ほどと同じ場所とは思えないほど多くの人が待っていた。
中でも、若い女性の姿が目立つ。
飲食や小売業界での厳しい雇用状況が反映しているのだろうか?
ハローワークに集まる人たちを観察すると、社会の現状が見えてくるようだ。

求職相談の担当者に「どんなことをすると求職活動と認めてもらえるのか?」と質問すると、たとえばと言って「就職支援セミナー」という冊子を持ってきてくれた。
東京労働局が主催するセミナーで、「自己理解・職業理解」や「履歴書の書き方」「面接対策」などのコースがあり、スケジュールを見ると来月上旬に三鷹でも行われることになっている。
帰宅後さっそく申し込もうと思い電話をかけてみると、ほとんどのセミナーはすでに定員いっぱいで、私が参加できそうな近場のセミナーは一つも残っていなかった。
それだけ、真剣に仕事を探している人が多いということなのだろう。
切羽詰まっていない私のような人間が割り込むべきではないと思い、他人に迷惑がかからないような求職活動を探すことにした。
いずれにせよ、私が失業給付をもらえるのも年内いっぱいのことなのだ。

ハローワークから戻って、今度は行きつけの理髪店に電話を入れる。
「ヘアサロン・アドニス」。
吉祥寺には珍しい気取らない床屋さんで、長年営業しているので男性の常連客が大勢ついている。
髪を切ってもらいながら店長と話をしていると、理髪店の組合が「GO TO 床屋」のようなキャンペーンを始めたと言う。
回数券のようなものを10回分まとめて買うと散髪代が半額になると言うので、私も今日からそのキャンペーンを使わせてもらうことにする。
どうやら、お店は組合から補助を受け、組合は東京都から補助を受ける仕組みらしい。
菅総理肝いりの「GO TO キャンペーン」はここにきて逆風にさらされているが、どの業界も大変なのは同じなようで知らないところで様々な「GO TO」が生まれているみたいだ。

午後には、行きつけの整体にも行ってきた。
「バキバキしない整体」がキャッチコピーの「きむらカイロプラクティック・吉祥寺」。
会社に通っていた頃は月に一度はお世話になっていたお店だが、退職後はコロナの影響もあって足が遠のき、およそ3ヶ月ぶりのカイロとなった。
さすがに「GO TO カイロ」のようなお得なキャンペーンはないと言うが、やっぱり話題はコロナや「GO TO トラベル」のことになった。
院長は、小学生のお嬢さんが通う学校で一人コロナに感染した生徒が出て2週間の休校となったという話を切り出した。
驚いたのはその余波で、中学生のお兄ちゃんまで学校から行ないように言われたというのだ。
妹の通う学校でコロナの子が見つかったからといって、直接関係ない兄が通学できなくなるというのはいささかやりすぎではないかと感じた。
コロナに関しては人それぞれ考え方が違うので、保護者の中にはひどく神経質な人もいるのだろう。
そうして学校現場が萎縮し必要以上に対応が厳しくなることで、結果として子供たちの学習機会が不必要に奪われるという問題が起きているのだ。
困った問題である。

来週にはもう12月、コロナに揺れた2020年も残りわずかとなった。
コロナのせいで仕事を失った人、過敏になっている人、様々な不安を抱える人たちが大勢いる一方で、マーケットだけは異常に元気で、NYダウは史上初の3万ドルを記録し日経平均もバブル以来の高値に湧いている。
やはり何かが、おかしい。
私は親たちの見守りのため来月初めにまた岡山に帰省したいと考えていたが、東京発着の旅行も制限されそうな雲行きで、しばらく推移を見守るほかはない。
果たしてどんな師走が待っているのか、そして来年はどんな年になるのだろうか?
確かな答えは、きっと誰も持っていない。