今日は二十四節気の『春分』、昼と夜の長さがこの日で入れ替わり、これからは昼間の長い季節となる。
七十二候では、「春分」の初候は『雀始巣』、「すずめはじめてすくう」と読む。

意味するところは、文字通り「スズメが巣づくりを始める頃」だそうだ。
バードウォッチングが盛んな井の頭公園だが、スズメはあまり見かけたことがない気がする。
事実、スズメの数は以前と比べると減っているという。
日本におけるスズメの個体数は減少傾向にあると言われている。鳥類の行動や生態を研究している三上修らの推定によると、2007年のスズメの個体数は1990年ごろに比べて少なくとも半減、減少率を高く見積もると5分の1になったと考えられている。50年前の10分の1とも推定されている
出典:ウィキペディア
私の子どもに頃には、見慣れた鳥といえばスズメだったが、あの頃よりも10分の1に減ったと聞くと急にスズメに会いたくなった。

スズメを探して井の頭公園をうろうろしてみた。
この日はなぜか、いつもより鳥の姿が少ない気がする。

井の頭弁財天の境内では、モミジの若葉が姿を見せていた。
「イロハモミジ」かそれとも「ヤマモミジ」なのだろうか?
モミジと呼ばれる植物は、実はすべてカエデ属なのだそうだ。

スズメは見つけることができなかったが、水面を泳ぐカイツブリを見つけた。
ちょっと前まで渡り鳥のカモたちがたくさんいた井の頭池が急に静かになり、1羽でのんびり泳いでいた。
「カイツブリ」は一年中この公園で過ごす『留鳥』なので、地味な鳥だが井の頭のシンボルになっている。

鳥といえば、数日前に公園の遊歩道を歩いていると、道端の茂みの中にやや大きめの鳥が止まっていてハッとして写真を撮った。
鳩のようだが、調べてみたら公園でよくみる「カワラバト」とは違う「キジバト」という種類だった。
「キジバト」は、「ヤマバト」とも呼ばれもともと山岳地帯に生息していた鳥なのだが、最近でも都会にも定住したという。
木に止まった鳩を見たのは初めてかもしれない。

タンポポの花に止まっているのは、アブだろうか?
昆虫の名前もゆくゆくは覚えねばなるまい。
そういえば、数日前初めて蝶々を見た。
七十二候「菜虫化蝶」の時には見つけられなかった虫たちが数日遅れで井の頭公園に現れた。

10日前の七十二候「桃始笑」の時に探した三角公園の『ハナモモ』もようやく少し花が開き始めた。
でも、満開はもう少し先になりそうだ。
こうして歳時記に教えられながら、私の知識も少しずつ蓄積されていく。
ちょっと、嬉しい。

ちょっと嬉しかったことといえば、昨日開幕した高校野球だ。
「春はセンバツから!」という言葉を久しぶりに聞いた気がする。
去年はコロナのせいで、春も夏も甲子園大会は中止となった。
念願の甲子園に行くチャンスも与えられず卒業していった去年の3年生たちの無念さは想像するにあまりある。
出場選手全員がPCR検査を受け、観客も制限して行われた異例づくめの今年のセンバツ。
開会式の入場行進を行なったのは初日に試合がある6チームだけ、残りの出場校はあらかじめ母校で行進のVTRを撮影し、その映像が甲子園の大型モニターに映し出された。
それでも、大会さえ行われなかった1年前よりずっと恵まれている。

選手宣誓を行なったのは仙台育英のキャプテン、島貫丞選手。
たまたまテレビをつけた時、この選手宣誓が始まるタイミングだった。
とても素晴らしい、感動的な選手宣誓だったので、全文を書き写させていただこうと思う。
きょうここに、高校球児の憧れの舞台である甲子園が戻ってきました。
この1年、日本や世界中に多くの困難があり、それぞれが大切な多くのものを失いました。
答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいことでした。
しかし、同時に多くのことを学びました。当たり前だと思う日常は、誰かの努力や協力で成り立っているということです。
感謝。ありがとうございます。これは出場校すべての選手、全国の高校球児の思いです。
感動。喜びを分かち合える仲間とともに、甲子園で野球ができることに感動しています。
希望。失った過去を未来に求めて。希望を語り、実現する世の中に。
そして、この3月で東日本大震災から10年となりました。
日本、世界中に多くの協力や支援をいただき、仲間に支えられながら困難を乗り越え、10年前、あの日見た光景から想像できないほどの希望の未来に復興が進んでいます。
これからの10年。私たちが新しい日本の力になれるように歩み続けます。
春はセンバツから。穏やかで鮮やかな春、そして1年となりますように。
2年分の甲子園。一投一打に多くの思いを込めてプレーすることを誓います
『2年分の甲子園』。
念願の甲子園のグランドに立つ夢が叶った高校球児たちの率直な気持ちだろう。

どんなに簡略化されたセレモニーでも、人の気持ちは十分に伝わる。
この異常で苦しい時代に遭遇し、自分たちの不運を呪い、ぶつけようなない怒りもあっただろう。
この1年、日本や世界中に多くの困難があり、それぞれが大切な多くのものを失いました。
答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいことでした。
しかし、同時に多くのことを学びました。当たり前だと思う日常は、誰かの努力や協力で成り立っているということです。
感謝。ありがとうございます。これは出場校すべての選手、全国の高校球児の思いです。
普通ならば生意気盛り、有り余るエネルギーをグッと堪えたコロナ世代の若者たちが、将来どんな大人に成長するのか?
不満を社会にぶつけるのではなく、素直に感謝の言葉を発する人間が育つのだとすると、コロナも悪いことばかりではない。
思いっきり甲子園を楽しんで、これまでにない日本人になってくれ。
そんな希望を感じた、ちょっと嬉しい選手宣誓だった。

さあ、今日から春分。
井の頭公園のソメイヨシノも、そろそろ花見の季節を迎える。
<吉祥寺残日録>トイレの歳時記🌸七十二候「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」に考える「野生のインコ」と「生物季節観測」のお話 #210208
【トイレの歳時記2021】
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