奥歯を抜く

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2年前の夏から、奥歯の不調が断続的に続いていた。

去年、突如現れた女神のような女医さんが治療してくれて、一旦は痛みも消え完治したかに思えた。しかし、今年に入って再発し、何度も歯医者に通う羽目に陥っていた。

女医さんは何とか歯を抜かずに治療できないかと努力してくれたのだが、奥歯の深い所まで虫歯に冒され、今日女医さんから「どうしますか?」と最後の選択を迫られた。

どうやら抜かずに完治することは難しそうだ。そのまま放置していると、隣の歯までダメになるリスクもあるという。

一番奥の歯。もし抜いた後入れ歯をしたければインプラントしか方法はないという。ただ、インプラントしなくても、噛むという作業に著しい障害はないという。噛み合わせるべき下の歯がなくなることで、上の歯が伸びてくることがあるようで、気になるなら寝る時にマウスピースをして寝ると上の歯が伸びるのを防ぐこともできるらしい。

私は、歯を抜くことに同意した。インプラントもせず、マウスピースも作らない。

これまでの女医さんの努力に感謝し、歯を抜くことで事態の収拾を図ることにした。

歯はなるべく残った方がいいだろうが、無理に悪あがきをするのは私の主義に合わない。これも老化の一環だ。素直に受け入れよう。

女医さんはいくつかの注意点を説明し、私は同意書にサインをした。

しかし、いざ抜く作業を始めると、大きな穴が開いた瀕死の奥歯は意外にしぶとい。部分麻酔を施し、ペンチのような器具を使って女医さんが引き抜こうとするのだが、根の部分はまだしっかりしていて、なかなか抜けない。

女医さんは仕方なく、歯を削り2つに切断する。そしてようやく長年私を苦しめた奥歯が抜けた。

2つに割れた私の歯を眺める。全体が茶色く変色している。これは虫歯のせいか、それとも老化のせいだろうか?

女医さんは奥歯が抜けた跡を縫い、ガーゼを使って止血してくれた。

3日間抗生剤を飲み、1週間後に抜歯だ。今日は飲酒や激しい運動は禁止だと言われた。

昨夜、大学生の甥っ子が吉祥寺にやって来て楽しく呑んだところなので、今夜は酒を飲まなくても大丈夫。忘年会続きの生活とももうおさらばだ。

これで、2年半に渡った奥歯との格闘はどうやら終わりそうだ。

もっと早く抜けばよかったのかもしれないが、もう若くはない。急ぐ必要はない。ゆっくり自分の体と相談しながら、信頼できる専門家の意見に耳を傾けつつ、一つ一つ判断をしていけばいいと思っている。

衰えていくのは、避けられない。不自由かもしれないが、それと折り合っていくのが老後の生活だろう。特段、落ち込む必要もない。一つ一つ納得しながら、自分で選択していけば後悔はないのだ。

平常心。

それは歳をとった者の得意技であり、私の最も得意とするところである。

 

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