中国人観光客をこれだけ受け入れているのに、帰国者やバス運転手だけ隔離しても意味はない

封鎖されている武漢に取り残されていた日本人の救出が始まった。

他国よりも早く救援機を飛ばした日本政府の対応はまず評価したい。

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ところが、想定していない事態が起きた。

まったく症状が出ていない2人の人からウィルスが検出されたのだ。

この新型ウィルスは潜伏期間中にも人に感染しているのではないかと疑われていたが、症状がないのにウイルスを持っている人が存在することが証明されたことになる。中国以外で「無発症病原体保有者」が確認されたのは初めてのことだ。

これは、非常に厄介だ。

今回の日本人帰国者たちが無防備に街を歩き回っていたとは思えない。それなのに3人の感染者がいたというのは正直驚くべきことである。

日本人帰国者200人に対して3人も感染者がいたことを考えると、1100万人の武漢では10万人以上の感染者がいることになる。仮に致死率が2%だとすると、2000人の死者が出てもおかしくないだろう。

しかも、武漢市長は、500万人の市民がすでに武漢を脱出していると話していた。彼らはどこに行ったのか?

中国から流れてくる動画の中には、中国各地で武漢から来た人たちを攻撃する様子を撮影したものが複数あった。中国人たちは「武漢がんばれ」と言いながら、自分の身近にいる武漢出身者を排除しようという動きが進んでいるようだ。

それでも、病気が最初に確認されてすでに2ヶ月。中国のすべての省で感染者が確認されていて、検査が追いついていない状況を考えると、中国全土に相当数の感染者がいると考えるべきである。

中国政府は中国人の海外への団体旅行は禁止しているが、個人旅行についてはまだ続いており、今も日本各地に多くの中国人観光客がいる。

テレビでは、武漢からのツアー客を運んだ日本人運転手と中国人のツアーガイドが新型コロナウィルスに感染していたとして大々的に報道しているが、彼らについてどれだけ詳しくチェックしたところでもはや水際対策は不可能である。

この武漢からのツアー客にも症状は見られなかったという。しかしおそらくその中にウィルスを持っていた「無発症者」がいたのであろう。

「無発症者」は発見できない。その人自身も体に異常がないのだから、当然精力的に動き回るだろう。日本各地で買い物し、飲食店で食べたり飲んだりしているのだ。当然、ウィルス感染者と接触する日本人の数はものすごい数になる。

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日本政府は、他国に比べて、武漢からの帰国者への隔離が甘いと批判されている。

でもつい先日まで日本全国で、春節で日本を訪れる中国人観光客をビジネスチャンスと捉え、積極的に待ち構えていたのだ。だから中国政府が海外へのツアーを禁止した際にも、がっかりという反応が強かった。

そして今も欧米諸国などに比べて、やってくる中国人に優しいスタンスを維持しているのは、安倍政権が掲げる訪日客4000万人の目標や習近平さんの訪日、東京オリンピックへの配慮があるのだろう。

韓国などでは中国人に対してかなりヒステリックな反応も多いようだし、ヨーロッパでも中国人に対するあからさまな差別が出始めているようなので、個人的には日本が中国に対して比較的寛容な姿勢を保っていることは評価したいと思うのだが、その一方で、来日した中国人観光客から一般の日本人への感染リスクに対する対策が不十分な気がしてならない。

日本全国どこで日本人の感染者が現れてもおかしくないと思って、検査の体制を整えるべきである。

今一番急ぐべきは、新型ウィルスの検査態勢を全国で整備して、武漢と関係ない人でも速やかに検査できる環境を整えることだと私は思う。

今後、日本国内の患者数は相当増えると覚悟した方がいい。でも軽症の人も多いようなのでパニックにならないことが肝要だ。

これまでのところ、日本の反応は比較的速やかで落ち着いていて、中国人からも感謝されている。韓国などから伝わってくる見苦しい対応に比べて、日本人の理解力・対応力に頼もしさも感じる。

ただ、武漢から救出された人の中にウィルス検査を拒否した人が2人いたというニュースには怒りを感じた。そんな日本人がいるとは信じられない。おそらくはとても疲れていて一刻も早く家に帰りたかったのかもしれないが、こうしたパンデミックの危機においては許されない行動である。法整備を急ぐべきだろう。

今後、日本国内でも感染者が増える中で、世界に誇れるような態度が保てるのか?

自分たちが本当に苦しくなってからその真価が問われることになる。

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