東京オリンピック、陸上男子100mの代表切符3枚をかけた一発勝負。
果たして誰が勝つのか?
オリンピック本番以上の興味を持ってテレビ画面を見つめた。
9秒台の記録を持つ日本人4人全員が顔を揃えた日本選手権決勝、史上最高レベルの代表選考レースを制したのは、多田だった。
多田の武器は低い姿勢を維持するロケットスタート。
予想通り、スタート直後で他選手の一歩先に出る。
多田に続いたのは山県。
事前の予想通り、この2人が先行しサニブラウン、桐生、小池が追う展開だ。
ここで選手たちの並び順が大きく影響したように見えた。
予選でトップのタイムを出した桐生は、多田と山県の間のレーン、スタート直後で両サイドに引き離され力が入った。
中盤以降も伸びず、その差が縮まらない。
山県の隣を走ったサニブラウンもかつてのような爆発的な伸びが見られない。
結局、多田が最初のリードを守ったままトップでゴールを駆け抜けた。
優勝タイムは10秒15。
直前まで雨が降りレーンが濡れていたとはいえ、多くの人が期待したタイムに比べ低調な記録だった。
しかも、2位に入ったのは、伏兵・東海大のデーデー・ブルーノ。
タイムは10秒19。
9秒台の選手たちに関心が集まる大一番で、彼だけが自己ベストをマークした。
多田の隣のレーンを走ったが、予選、準決勝でも多田と同じ組で走っていたので、スタートでの差も気にせず自分の走りができた。
それにしても、「デーデーって誰?」と思った。
彼は、ナイジェリア人と日本人のハーフで、高校時代にサッカーから陸上に転向したという。
筋骨隆々、サニブラウンや準決勝で敗れたケンブリッジと比べても、全く日本人離れした肉体だ。
まだ21歳とサニブラウンよりも若く、このレースによって、一気に次世代エースとして注目される存在になるだろう。
なんと言っても、アフリカ人と日本人の組み合わせは最強である。
まだ派遣標準記録をクリアしていないので、東京オリンピック代表にはならないが、パリ大会までには9秒台をマークして、世界と戦える選手に成長することを期待したい。
また高校生が決勝に進出したことも注目に値する。
東農大二高の柳田大輝。
準決勝でマークした10秒22は、桐生が持つ高校記録に次ぐ歴代2位で、サニブラウンの高校時代と同タイムだそうだ。
新しいスター候補が登場した一方で、期待されたトップ選手たちの成績にはちょっとガッカリであった。
3位に入り多田とともに五輪代表が内定した山県も、タイムは10秒27、先日出した日本記録9秒95には遠く及ばない。
桐生はアキレス腱を痛めていて10秒28の5位。
200mも棄権して、東京オリンピック出場が難しくなった。
私が一番期待していたサニブラウンは、かつての爆発力が消えてしまい、10秒29で6位に終わった。
アメリカに活動拠点を移したためにロックダウンの影響をもろに受けたのかもしれない。
結局3人目の切符3枚を手にするのは4位に入った小池になりそうだが、小池も9秒台を出した後どうも冴えない。
やはりサニブラウンが出場しない100mは物足りない。
日本人が決勝に残るのは難しいだろう。
後の楽しみは、4×100mリレーのメンバーがどうなるか。
やはり桐生とサニブラウンが私は見たいのだが・・・どうだろう。